プロトタイプ
【登場人物】
シャルル・ミン
リン・フォワード
ヤヨイ・ユルグ
「ここがシャルルの仕事場?」
「そうね」
私は何をしているのかというと、職場の紹介。
リンはどうしても仕事をしてお金を稼ぎたいらしく、手伝いの一環として私の職場を見学させている。
「研究系ならいいけど開発系はどうだろう」
「リンにやってもらいたいのは雑務、データ分析よ」
「データ分析を雑務と言えるのは、なんというか凄いね」
「できそう?」
「大丈夫、昔同じようなことしてたから」
昔?
そんなに年齢は変わらないはずなのに、前の職場も似たような感じの言い方。
何か問題でも起こして解雇されたのか、現状を憂いて自ら去ったのか、はたまた別の理由かは分からない。
そういえば年齢をきちんと聞いていなかった気がする。
「リンって、何歳なの?」
「秘密」
女性が年齢を隠すのはよくあること。
でも男性がってことはあまりない。
秘密にする理由があるんだろうけど、そこまで粘着質でもない私は聞かないことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今案内しているのは、私のオフィス。
彼にはここでデータ分析をしてもらう。
実際に開発する工場は別の所にある。
中央から離れた場所もあれば、地下もある。
私が普段仕事をする場所は、ここと真下。
真下に造られた地下工場では、今日も多くの機械人間が製作されている。
「これが私の設計したプロトタイプ」
「うひゃー」
機械都市は、その名の通り以前から機械人間を造っていた。
私のプロトタイプが都市を埋め尽くしているということではない。
負い目を感じているのは、私が開発側にいるからであり、これは単に私が最初に設計しただけのモノに過ぎない。
機械と人間との亀裂が生じたのは昔からだし、ヤヨイ婆が都市長の頃は緩和材があったから良かった──いや耐えていたとういのが本当の所は正解かもしれない。
「でもこれ…本物じゃないよね?」
「そうね」
本物は地下にある。
今はソレを元にして開発している。
いつかは量産型も造る予定。
「なんでこれ、首飾りしてるの?しかも偽物だよね」
「………私がここに拾われたとき、私の手には首飾りが握りしめられていたの」
「じゃあそれはいま…」
「本物の首に提げているわ」
幼少期に握りしめていたのは、青色の鉱石がはめ込まれた首飾り。
私が何故それを持っていたかは分からない。
記憶はない。
おそらく、私の両親が関係しているのだろうけど、出生の分からない私にとっては、調べることもできない。
「本物は見せてはもらえない?」
「だね」
機械人間は一般的に出回っている物もあるが、本来は秘匿性の高い代物。
短期勤務のリンに全ては教えられない。
教えなくても分析ならば誰だってできる。
もちろん疑問に思うことはあるかもしれない。
専門知識について聞かれることもあれば、意見を述べられることもあるかもしれない。
ただそれに全て答える必要はない。
そこまで彼に背負わせる気はない。
「仕事で分からないことがあればこの番号に、この端末から連絡して、私は現場の地下にいることが多いから」
「うん、そうする」
「それと、残業はしないで定時になったら帰宅して、私を待たなくていいから」
「…うん、分かった」
私が、定時に帰れることはあまりない。
待つ必要はない。
リンの雇用期間は1ヶ月。
仲を深める必要はないし、仕事以外の時間は自分のために使ってほしい。
この都市で何かができるってことはないだろうけどね。




