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シンなる旅路【第一部、外伝】(カクヨムさんの方で修正版を投稿しています)  作者: 飯屋クウ
外伝① 機械と人と私

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訪れた旅人

【登場人物】

シャルル・ミン

リン・フォワード

「却下だ、君の草案は些か無謀すぎる。もう少し現実を見た方がいい」


投げ出された書類。

私の提案書は今日もまた突き返された。


『共存社会における条項』には、市民と手を取り合って未来を築く、私の思い描いた生活が書かれている。


「それと君がいまここに居られるのは、その才能あってこそだ。肝に銘じておくように、無闇矢鱈に敵を作る必要もない」


「……はい」


言い返すことはできない。

上司の言う事は市政という観点から見れば正しい。

これ以上の反論は、異分子と見做され排除される。

路頭に迷うのは論外だ。

野望は叶わずして終えるだろう。


「でも、このままだといずれ…」


何れは機械だけの都市になる。

そうなれば、道具となるのは私達自身に他ならない。

今から何か行動しなければならないのに、上司は相手にしてくれないし、自分の立場を鑑みれば思い切った、強引な手段はとれない。

結局、何も変えれない、いつも通りの毎日。


「はぁ、散歩でもしてこよう」


気晴らしにカフェにでも行こうかと考えたが、店員も機械だったことを思い出した私は、外を歩くことに変更。

景観なんてものはない。

見慣れた景色。 

どんよりした空気。

気分を変えることは到底出来ないと思っていたが、今日の街並みは違った。

この都市では見慣れない服装をした人物が、地図を片手にキョロキョロとしていたのだ。

間違いなく都市外の人間、旅人だろう。

旅人の来訪は珍しくない。

でも今日は何故か、声を掛けずにはいられなかった。


「どうかしましたか?」


「あ、どうも、この都市の人?」


「そうですね」


大方、道に迷ったのだろう。

よく聞く話だ。


「何処にいこうとしてるんですか?」


「いや別にこれといって…観光中かな」


「ここは観光には不向きだと思いますよ」


「これはこれで趣きがあっていいと、僕は思うけどな」


変な人だ。

大きな荷物を持っているわけでもないし、本当に観光かどうか怪しい。


「紹介所ってある?」


「職業紹介所ですか。あるにはありますが、機能していないですよ。ほら、ここは機械が機械人間(マシンドロイド)が働くのが主流ですから」


「なるほどね~」


「働き口を探しているのなら、他の都市や街に行った方が良いと思いますよ」


「丁寧にありがとね、若いのに色々と知ってて凄いね」


確かに私は若い。

10代で開発部に抜擢されたのは偉業と言われてる。

でもこの人の見た目も、私とさほど変わらないと思うけどな。

白髪は苦労している証拠と言われることもあるけど、私はそうは思わないしね。


「そういえば、名前聞かなかったな…まぁいいか」


もう会うことはないだろう。

観光や仕事に不向きと分かれば、他の所に行くはず。

これが、人が増えない理由。

この都市で人間が生きていくには旨味が少なすぎる。


「少しは気分転換にはなったかな」





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「ちょっと貴方、なんでそこにいるのよ?」


「えっ?あっ、さっきの親切な人」


それはどうもありがとう。

普通の事をしただけなのに、感謝されるとは思っていなかった。

というか何故、仕事終わりの帰り道に出くわすの?

そこは私の家の前なんですけど!?


「あ〜ごめんね、話込んじゃってて」


「長…」


旅人が話をしている相手は、ヤヨイ・ユルグ。

私の家の隣に住んでいて、機械都市(The・メイシン)の前都市長。

通称、ヤヨイ婆。

一人隠居生活を送っている。


「長はもうやめい、昔の話じゃ」


私がこの都市に拾われた際は、現役で仕事をしていた。

長年勤めた役職を降りたのは高齢が理由ではあるが、市政が悪化したのは都市長が変わってから。

私個人としては、復帰してもらいたいと思っているほど、出来た人だ。


「ヤヨイ婆と旅人さんがなんで話をしているの?」


「別に良いじゃろ。それにこのお方、今日の宿はないみたいじゃから泊めてあげなさい」


「なんで私が!?」


「なんでもじゃ、シャルル」


「シャルルっていうんだね、僕はリン、よろしく」


「よろしくって、まだ了承したわけじゃないんだけど?」


一つ屋根の下、若い男女がってやつ?

ヤヨイ婆、変なこと考えてないでしょうね。

私は今忙しいんだから。

恋に現を抜かすなんてこと、絶対にないんだからね。






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