勝ち負け
【主要登場人物】
リン・フォワード
(主人公、男、白髪、825歳)
フィロ・ネリウス
(猫獣人、女、褐色肌、黒髪、16歳)
ジェット・エーギル
(傭兵、酒と女好き、男、金髪、28歳)
オウル・P・マギー
(妖人と人間の混合種、ハッカー、男、青髪、17歳)
カレン・クジョウ
(元工作員、針使い、女、赤紫髪、23歳)
ロック・ロック
(元Riバース、元二重人格、改造、男、緑髪、21歳)
ドム・カーティ
(元Riバース、赤牛亭の店主、合成獣、男、銀髪、32歳)
【サブ登場人物】
ボイル(Riバース、1位)
イズミ(Riバース、3位)
ユキ(Riバース、研究員)
覆面女(Riバース、29位)
────地上、A区画
「はぁ、はぁ、はぁ」
イズミは息を切らしている。
ここまでの苦戦はいままでになかった。
「だが、それも終わった」
イズミの前方、ジェットは足元を氷漬けにされている。
回避手段はない。
次の一手で決まる。
しかし、突如巨大な影が前方へと降り立つ。
合成獣ドムである。
イズミにとっては、ドムと戦う必要はない。
そろそろ切り上げ地下へと退避し、主のもとへといくのが最善。
だが待ったが掛けられる。
「ちっ、見逃してやっているんだぞ」
「そうだぞジェット、まずはその凍傷をなんとかすべきだ」
「いやいいんだドムさん、まだ俺はやれる。惚れた女に負けるなんて、ジェット・エーギルじゃねーよ」
「ならば……死ね!」
ドムがわざと避けた氷の斬撃はジェットへと向かう。
その斬撃はジェットを捉えることなく空中破壊。
ジェットの放った刃は、イズミの肩を貫いた。
「なん…だ?」
衝撃でイズミはその場に倒れた。
何が、起きたか理解できずにいた。
目の前の男は気絶しかけの身動きもできないはず。
男の銃やナイフでは斬撃を破壊することは不可能。
では、自分の腕と肩を貫いたのは何なのか。
「やるなぁ、ジェット」
ジェットの固有強化武器は、その銃やナイフなのだが、オウルとロックの入れ知恵により半分ほど自動駆動になっている。
自分の銃が喋りだすのはどうにも性に合わないのでで、会話機能はオフにしていた。
2つの半自動駆動は変形して合体、弧を描いた弓となり、光の刃として射出。
氷の斬撃を砕いたのは、一本ではなく三本の矢。
三槍は、狙い通りの一点を貫いた。
「くっ、この程度で…」
肩を押さえながらフラフラとイズミは立ち上がる。
表情は悲痛。
「ボイル様…すみません」
精神的な疲労も蓄積していたことで、イズミは倒れる。
ドムはジェットとイズミの両方を脇に抱えた。
見上げた空はさらに赤さを増している。
「隕石が落ちてくるのはマジみたいだな」
ジェット達、この戦場にいる者達にはすでに、その情報が出回っている。
それでも戦闘が終わらないのは、それぞれが役目を果たそうと、リンを信じようと、リンに賭けようとしているからである。
誰もまだ絶望はしていない。
────地下、螺旋回廊付近
激しい音とともに、いくつもの風穴があく。
地下都市は頑丈に造られているため、崩落することはないが、衝撃は建物を破壊する。
「ここを造るのにどれだけの時間と費用を注ぎ込んだか、お前には分かるまい」
「700年くらい?」
「そんなにはないさ」
ボイルは唇の血を拭う。
1位の力をもってしても、リンは倒せない。
弱らせる仕掛けはほとんど意味をなしていなかった。
「お前の勝ちだぞ、リン」
「みたいだね」
リンは勝負に勝った。
しかし、それほど嬉しくはない。
気持ちは埋まらない。
「一発殴れば気が済むかと思ったけど、そう単純じゃないみたいだ」
「強欲な強者だな」
戦いでは何も解決はしない。
それはリンも理解していた。
ただ苛立ちを払拭しなければ、一度殴らなければ、腹を割って話はできなかったからだ。
「じゃあ、提案とやらを聞こうか」
「では俺の執務室に案内しよう。研究員らしく、データに基づいた提案が必要だろう?」
「いいね、研究論文を採点してあげるよ」
「ふん、言ってろ」
ボイルの提案が何なのか、まだリンは分からない。
だが今の、この一瞬の時間だけは、昔の2人に戻れたと、リンは感じたのだった。




