螺旋
【主要登場人物】
リン・フォワード
(主人公、男、白髪、825歳)
フィロ・ネリウス
(猫獣人、女、褐色肌、黒髪、16歳)
ジェット・エーギル
(傭兵、酒と女好き、男、金髪、28歳)
オウル・P・マギー
(妖人と人間の混合種、ハッカー、男、青髪、17歳)
カレン・クジョウ
(元工作員、針使い、女、赤紫髪、23歳)
ロック・ロック
(元Riバース、元二重人格、改造、男、緑髪、21歳)
ドム・カーティ
(元Riバース、赤牛亭の店主、合成獣、男、銀髪、32歳)
【サブ登場人物】
ボイル(Riバース、1位)
イズミ(Riバース、3位)
ユキ(Riバース、研究員)
レイブン(Riバース、8位)
マーク(Riバース、20位)
────地下、螺旋回廊
リンは、イズミに言われた道を通っていた。
道は螺旋状で下に延びている。
時間をかけさせられている、そんな感覚に満ちていた。
何かしらの仕掛けがあるのはわかっていた。
それでもこの道を進むと決めたのは、この先に彼が待っていると告げられたから。
回避の得意なリンが、それをせずに前へと歩むのは、覚悟を決めているからである。
仲間の心配はあるが、あとは信じるのみ。
外が得体のしれない雰囲気になっていることは、リンが一番よくわかっていた。
だが期限という名の時間はまだある。
この拳を、ぶつけないといけない相手がいる。
この思いを、告げないといけない相手がいる。
救うべき人がいる。
まずはそこから。
それがリンの原点。
────地下、刑罰・実験地区
ユキ・アマミヤは未だ囚われていた。
罰の時間はとっくに過ぎているが、ボイルは解放してくれない。
悪あがきをさせないため。
成功率を上げるため。
研究者としては筋の通ったやり方。
「哀れね」
「ボイル様の機嫌を損ねるからだ」
ユキを監視している者の一人、25位ダイマは辛辣な言葉をかける。
彼はユキを崇めていない。
模造人間は機械と何ら変わらないと考えているからだ。
「それにしても、やはり似ている。性格も顔も、違うのは強さだけか、他の人間も同じようにできるのか?」
模造人間について尋ねてきたのは、29位の覆面女。
彼女が似ていると言ったのは、ユキの後ろにいる人物。
ユキはその問いには答えなかった。
なぜなら、ボイルが入室してきたからだ。
「同じように作れるぞ、何かしらの因子があればな」
ボイルはユキに代わって答えた。
「………だが、次を作るのは随分と先になるだろう」
「!?なぜだ!そんなこと聞いてないぞ!」
覆面女は声を張り上げる。
彼女は組織と契約をしていた。
死んだ弟を蘇らせてくれると。
その日が来るまでは組織に仕えると。
「リンが、誘発するものについて教えているのは10位以上、もしくは信頼に足る者、そこにいるダイマのような、な。君にも教えてやろう、29位。誘発するものは隕石だ」
「…は?」
「あと2時間程度でこの大地に、星に、遥か彼方から隕石が飛来してくるのだ。800年前の物とは比べる必要もないほどの巨大隕石が5発落ちてくる」
「そんなバカなことあるのか?世界は終わるのか?」
「初期の段階で宇宙都市と入念な調査に基づいて予測している。多少の誤差はあれど、世界は再び崩壊するのはほぼ間違いない。模造人間を作るのをストップするのは、それ以外にも重要な案件がいくつもあるからだ。君の弟が生きる世界は地上にはないし、今回の地下への避難はそういうことだ…さて」
ボイルは、色の違う石を数個懐に入れる。
「そろそろ、リンを迎えに行く。その場は任せるぞ、ダイマ」
「御意に」
ボイルは、リンのいる螺旋回廊へと進む。
「全てが終わるまで大人しくしていてもらうぞ…ん?」
ダイマの反対側では、29位が蹲りブツブツと何かを言っている。
聞き取れない。
「哀れね」
「奴を哀れんでも状況が変わることはない」
「いいえ、違うわ。私がさっきから言っているのは貴方のことよ、ダイマ。信じる相手を貴方は間違えた」
突如、ダイマの右耳は半分ほど千切れる。
左耳から聴こえるのは、ビュンビュンと風を斬る音。
「29位…貴様…」
「弟に外を、陽の光を浴びせることが私の夢だったんだ。死んだ弟を蘇らせたとしても、そこに世界がないのなら意味はない。私は出口のない道をグルグル回っていただけなんだ」
「反逆罪だぞ!」
「私は今虫の居所が悪いんだ。悪いが死ぬのはお前だ。その後は奴だ。私の刃が届かなかったとしても奴の邪魔ができればそれでいい。私の最後は、それでいい」
無数の鉄糸と巨腕の振動薙刀。
格子戸の向こう側には、哀れな2人。
ユキは、その1つの行く末を眺めていた。




