奪還①
【主要登場人物】
リン(主人公、男)
【サブ登場人物】
フィロ(獣人、女)
ジモン(探鉱頭目)、グンジ(街長、ジモンの弟)
その日の夕食時は、森で見つけた珍しい食材が話題に挙がっていたが、内容は覚えていない。
イアンやユウには悪いことをした気分だ。
昼間の話をずっと考えてしまうためだ。
寝室で横になっているが、なかなか眠れない。
ノック音が聞こえ、寝た振りをきめ込む。
了解の意思も聞かずに、フィロとネムの2人が突入してきた。
「だいじょうぶ?」
「考え事をしてただけだから大丈夫。もう寝るよ」
電気を消す準備をしようとした時、フィロはあのワードを口にする。
「おうかんだっけ?」
「え?聞いてたのフィロ?」
「きこえた、私は、ほら」
両耳を器用に動かす。
「あーそうか、獣人は感覚が鋭いもんね」
「はやくもうごけるよ、ほらステップステップ」
フィロとネムは手を繋ぎ、狭い部屋で華麗にステップしていた。
獣人は軽快に動くことができる。
暗闇も見通せる。
頭の中で、少しずつピースが繋がる。
「あのさフィロ、ちょっといい?」
「うんいいよ、手伝ってあげる」
意外にも返事は早い。
「まだ僕何も…」
「わかるよ、私はずっとリン見てた」
それは恥ずかしい。
「女の子は、男の子のかんがえていることわかるんだよ」
一番下の言葉にしては達者だ。
見透かされていたとは、僕もまだまだだ。
「じゃあ、お願いするけど、まず侵入ってできると思う?」
「しんにゅう?」
「えっと、王冠のある建物に入ることができるかってこと」
「ああ!私、あそこ入ったことあるからだいじょうぶだよ」
「……ん?えっ?なんで?侵入したの?」
「おいしいものあるかと思って…おっきいところは、なんでもあるはず、でしょ?」
「あーなるほど。そうだね、間違いない」
さすがに同じ経路が使えるとは思えないが、途中までは問題なさそうだ。
もしバレたとしても撹乱はできるだろうし、フィロだけなら逃走は容易。
問題は自分。
何が一番安全な方法か考え込んでいると、ネムが袖を掴んでくる。
「そこで働いたらいいんじゃない?」
捻り出した答えを無下にすることはできない。
ここはベストな回答と褒めるべきだろう。
そうしたいのは山々ではあるが、普通に考えても無理がある。
時期が時期なのだ。
警戒を怠るはずがない。
他に良い案が出ないため、今日は寝ることにするが、明日は一応、念の為、万が一ということもありえるから、可能性を信じ、街に行ってみようと思う。
次の日、面接に合格して働ける事実に、僕だけが驚愕していた。
感想、評価、レビューお待ちしています。辛口でも構いません。




