冠②
街の中央部は、いつにもまして慌ただしくなっている。
都市連合の長達が数日後には来訪するためだ。
歓迎の準備に余念はない。
それもそのはず、この街は頻度の高い砂嵐にみまわれることもあって閉鎖的だ。
外の情報は得る手段は少ない。
街の商人が仕入れのため外に出ることはあるが、毎日は難しい。
そのため、商人や旅人などは基本重宝されることが多い。
街の中心部から少し離れた、高い場所から下を見ている者達がいる。
この街の支配者たる人物だ。
「準備は順調か?」
「はい、滞り無く」
従者の身なりをした物が答える。
「定例査定かなんだか知らんが、やつらも暇だな」
「グンジ様、そのような言い方は良くないかと、都市連合の皆様もグンジ様と同じように統治者でございます」
「わかっているわ!そんなこと!」
ドンとテーブルが叩かれる。
並々注がれていた紅茶が溢れる。
「なんで俺がこんな面倒なことをしなきゃならんのだ。報告なんぞ、紙切れ一枚で十分だろうが」
「歴史ある行事ですから、我々では無くすことができません」
「ふんっ!どうせ、やつらも俺の利益を狙っているに違いない」
グンジは椅子に座ると紅茶の横に置いてあった甘い菓子を頬張る。
「も、れ、それでどぉだ、れぃのせいさくは…」
「政策に反発する輩はおりませんので、定例査定終了後に実施できそうです」
グンジは差別主義者で自己中心的な考えの男だ。
「これでまた俺の金が増えるということだ」
「獣人税に、身寄りの無い子や働いていない者達を受け入れ、という名の売春ですか」
「あぁ、俺に金を落とさないんだ。この街で働けないなら売るまでさ」
「その事、都市連合の長達には気づかれないようにしないといけませんね」
「問題はない。やつらの網に引っかかりはしない。取引先は安心できる」
「そこまで信用しているのでしたら、これ以上は触れません。それよりも、あれはどうなさるおつもりですか?」
従者が指差す先には、王冠がある。
輝きはないが、荘厳さのある冠が、透明な箱に入っている。
「あのように無造作でよいのでしょうか」
「お前の心配はわかる。だが問題はない。奴の時のようにはならない、俺にはあれがある」
「最近買ったというあれですか?」
「そうだ、高額だから1つしか買えなかったが十分だろう。何やら普通の目には見えないレーザーなるものが、この箱の周りをぐるぐると回るらしい。それに触れると警報が鳴るという仕組みだ」
「警報装置も合わせて購入されたんですよね」
「あぁ、高かったぞ!聞くか?」
長くなりそうな話を従者は断った。
当日までこの箱はグンジのいる会議室から別の場所へと移される。
箱と台座以外には何もない部屋にだ。
装置を手に持ち、拳を上げたグンジは高らかに笑っていた。
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