冬の夜
日が暮れるのが早くなった。雪もどんどん降ってくる。マリはロッキングチェアに座りながら編み物をしていた
「編み物も慣れたものだね…」
「何を編んでいるんだ?」
「ふふ、ひ・み・つ」
なにやら楽しそうだ
けだまスライム達はマリの膝で寝ている。大量に作ったジンジャークッキーをつまみながら、マリが何千年も前に書いた魔導書を読むマチ。ジェイドは髪をブラシでとかしている
「明日は何をしようね、…そういえば畑放ったらかしにしてたなぁ…」
「そうだな、毛玉スライム達が雑草を食べてくれたおかげで綺麗なままだぞ」
「そっか、感謝しなきゃ。…植えるならシックキャロットとシルバーラディッシュ…あとはゴールドオニオンかな」
「明日は畑作業ですか。暖かくしないと…」
「大丈夫だよ、対寒気結界を張れば全然寒くないよ」
「そんな魔法まであるんですね、すごい…」
「ご主人は「魔法の神祖」だからな」
「神祖…?」
元々この世界には魔法というものが存在しなかった。この世界に降り立った数多の神である者の1人だけが魔法を使うことが出来た。魔法を使い、世に広めたのは神祖であるマリだ。ありとあらゆる魔法を使えるのだ。え、こんな魔法まで使えるの?とツッコミを入れたくなるものもあるが
「マリ様は本当にこの世界の神様なのですか…」
「神様って言われるとなんか堅苦しいな。…抑止力なのかな」
「抑止力?」
「魔王と敵対して、この世界を守る抑止力」
「なるほど、そういう事ですか!………改めてすごいですね!」
「ご主人はすごいぞ、俺を使い魔として従えてるからな」
「それはどういう意味で…?」
「ひ・み・つ・だ」
「うう、すごく気になります~!」
ジェイドは気になりすぎてこの日は眠れ……た。それはもうぐっすりと
~
翌朝
朝食を食べ終わるとさっそく畑仕事に取り掛かった。マリが結界を貼ったおかげで寒さはほとんどない。畑を耕し、種を撒く。たまに生えてくる雑草は、けだまスライム達が食べてくれる
「はぁ…大変だけど楽しいね」
土まみれになっているマリ
「ふぅ…そうだな。だんだんスイッチが入ってくるというか」
「…はへ…腰が痛いです…」
ずっと屈んでいると足も痛いし腰も痛くなる。これは歳のせい?
「うん、少し休もうか」
~
マチがペパーミントハーブティーをいれ、マリはジャムクッキーを出した
「はい、ジェイドの大好きなジャムクッキーだよ」
「わぁ!いただきます、モグッ」
生地はサクサクでバターの風味が広がり、ジャムの部分は甘さが控えめでちょうど良く、甘酸っぱさもある
「はぁ…なんて美味しいんでしょう!爽やかなペパーミントハーブティーとも相性抜群ですね」
「うむ、甘さが染みる。美味いぞご主人」
「ん、美味しいね!結構上手くできたなぁ」
畑の肉体労働に染みる程よい甘さと美味しさ。小さな幸せを感じるひとときだった




