34話
アイアン・ゴーレムとの距離は20mほどあったがそれを2秒ほどで進み背後へと回る。アイアン・ゴーレムという名前は長いのでガラクタと呼ぶとしよう。何かゴーレム系の渾名が悪口になっている気がするが、自分の脳内で考える時の名前だし大丈夫だろう。・・・念の為さんをつけよう。
とりあえず硬さを確かめるためにもレイピアの突きを放つ。するとカンッ!良い音を出した。やはりと言うべきか、5cm程しか刺さらなかった。いや、5cmも刺さったと考えるべきか。
するとガラクタさんは攻撃を放とうと腕を上げる。どれほどの威力か、受けてみたいという好奇心があるが初見の攻撃で油断するのはやめなよう。10mほど距離を取り、様子を見る。
しかしガラクタさんは俺が離れたことに気づいているのにまだ攻撃を溜めて振り下ろそうとしている。何か狙いがあるのだろうか。
そしてガラクタさんが腕を振り下ろす、瞬間にあるものが見え嫌な予感がしたのですぐに弧を描くように動く。
この行動は正解だったようだ。さっきまで俺がいた場所からおよそ半径2mほどの空間に小さな鉄の塊・・・銃弾と言った方がいいだろう、が散弾した。さっき俺が見たもの、それは手や腕の部分に徐々に増えていったブツブツだ。
石っころの体を形成していたのは魔法粘土だ。これは魔力を加えることで形を変えることが出来る(まぁ、俺には無理だが)。そしてガラクタさんに関節は一応あるがあまり意味を成していないように見える。少なくとも俺が見た事のあるゴーレム系のやつは形を魔力で維持しているので逆に言うとどんな形にもなれる、というわけか。なら散弾銃(仮)になったのはそういう技だったのか。次からは石っころでも油断しないようにしよう。
とりあえずどう攻めるか決めよう。まず遠距離、魔法は論外。前者は効かないだろうし後者は威力が強いのがない。即興で作ればいいと思うかもしれないがそもそもイメージ出来ない。何度か見れば出来るかもしれないが俺の持っているのは水魔法と光魔法と闇魔法、かろうじて水なら何とかイメージ出来るが魔法としてはできないだろう。そもそもとして知識が少なすぎる。
とはいえ石っころのように水が弱点ではないとも限らないので1度『ウォーターブロック』を当ててみる。が、見える範囲ではなんの効果もないので石っころが特別だったのだろう。
やはり近距離しかないだろう。さっきの検証で水は効かないことがわかったし普通の状態の武器もあまり効かないだろう。レイピアの闇はそのままにして短剣には初めてやるが光の魔力を注ぐとしよう。
《アーツを取得しました》
という声が頭の中に響くが今確認する暇はない。
体の構造が石っころと同じ事を祈って魔石のあった場所に突きをするとしよう。ヒットアンドアウェイだ。
というわけで早速接近、一瞬で懐に潜り込む。そして接近した時の勢いを殺さずそのまま突きにのせる。するとさっきよりも突き刺さる。やはりルートの効果は凄まじい。すぐに引き抜き距離をとる。感覚と見た目でだいたい7cm程だろうか?
このあとも同じように続ける。
突いて、距離をとって、避けて、距離を詰めて
それを何度も繰り返し最初に突いた胸の部分を中心に半径5cm位の凹みが深さ10cm程にできた。やはり正確に突きを放つのは今の俺にはできなかった。
ここまで突いたら急に鉄が硬くなった。というより硬い部分になったの方が正しいだろう。つまり何か重要なものを守る最後の砦的なものだろう。
つまり勝つにしても、負けるにしてももうすぐで決まる。




