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炎の溜り 12

 マグマゴーレムの消滅を確認して一つ息を吐くと、アビリティと精霊武装を解除する。

 膝をつき熱さを我慢して右の籠手を外し、火傷の様子を確認してみるがそう酷くはなかった。

 ポーチからライフポーションを取り出し、半分は火傷に万遍なくかけ残りは飲み干す。

 追加で治癒法術を使おうとすると、問答無用でティアに右腕を取られた。

 少し涙目のティアが黙って治癒法術をかけ始めてくれると、ファナもすぐ近くまで来て不安げな表情で俺を見上げてきた。

「主様、大丈夫?」

「ああ。火傷も思ってた程じゃないよ。この程度で済むんだったら、初手から今の一撃を使ってみるべきだったな。」

 自嘲気味にそう言うとファナはフルフルと首を横に振ってくれる。

「リスクのある攻撃を後回しにするのは当然。主様は間違ってない。」

「ファナに言う通りです。セイジ様。」

 治療を終えてくれたティアも柔らかな表情に戻ってそう言ってくれた。

 二人に有難うと返し、大分冷めてきた籠手を着け直していると、結晶に変化が起きる。

 中に封じられていた人型の魔物の影がゆっくりと消え去り、結晶の中から大きめの魔核石とカードより一回りほど大きい結晶質のプレートが出て来た。

 魔核石はマグマゴーレムのものだろうがプレートは何かと鑑定してみると、制御結晶の操作端末と見えた。

 このプレートは何か分からない物として、さっさとロンソンさんに引き渡してしまった方が良さそうだ。


 暫く待ったが結晶にこれ以上の変化は無さそうなのでロンソンさんへ魔眼を向けてみると、バハシルと顔を突き合わせて睨み合っていた。

 理由は不明だが明らかに揉めているようで、向こうへ行けば間違いなく巻き込まれる事になりそうだ。

 無視して帰還する訳にはいかないし、巻き込まれて身動きが取れなくなり12時間過ぎてしまうのは不味いので、先に魔核石の幻獣化を済ませて仕舞おう。

 プラーナとマナの残量が心許なかったので、プラーナポーションとマナポーションを2本ともぐいっと一気に飲み干す。

 ポーションの効果が終わるのを待って魔核石を手に持ち幻獣化を始めると、回復した分のプラーナとマナを全て注いでやっと変化が起こった。

 魔核石に変質が起こり俺の手から浮かび上がると、先程倒したマグマゴーレムより頭一つ分程大きな赤色のゴーレムが現れた。

 加えて先程倒した個体より明らかに力感が増しているようなので鑑定してみると、レベルは同じ31だがマグマロードゴーレムと種族が変わっている。

 他にも4つ目のアビリティ硬軟自在というものが加わり基礎成長値も増加していた。

 理由はよく分からないが強化が起こった事自体には何の不満も無いので、マグマロードゴーレムにグロムと名前を付けて幻核石に戻した。


 魔眼で様子を観察しながらロンソンさんの元へ歩いて行く。

 ロンソンさんとバハシル共に和解する様子は無く、ため息が出そうになるのを堪えて両者がにらみ合う場所まで来ると、立ち位置の関係でバハシル側が俺達を最初に気付いた。

 俺達を見つけた騎士が耳打ちをしてバハシルの視線が俺達に向き、その様子を見ていたロンソンさん達も俺達に気がついた。

 その場にいた全員が俺達を認識すると、双方の表情がはっきりと明暗に別れる。

 バハシル側は護衛だろう討伐者達も含めて全員渋い表情となり、ロンソンさん側は全員が喜色を浮かべた。

 俺達が近づくとロンソンさんの護衛は場所を開けてくれ、隣まで行くとロンソンさんから話かけてきた。

「確認したい。討伐は上手く行ったのか?」

「はい、成功しました。それで魔物を倒した後、結晶から魔核石の他にこれが出て来たので、契約通りお渡しします。」

 ポーチからプレートを出してロンソンさんに手渡そうとすると危機感知スキルが反応し、そちらへ向くとバハシルの取り巻きの騎士が一人突っ込んでくる。

 そのままプレートを奪おうとその騎士が伸ばして来る腕を取り関節を固めて動きを封じると、こちらが詰問する前にバハシルが吼えた。

「我が配下の騎士への暴行許しがたい。その者を捕らえろ!賠償として所有物を全て没収し奴隷へ落とす。邪魔する者は誰であれ力ずくで排除しろ!」

 その命令に応ずるようにバハシルの配下の騎士が剣を抜くと、ロンソンさんの護衛達も一斉に剣を抜き、今度はロンソンさんが声を張った。

「バハシル兄上、このような無法が通用するとお思いか!」

「既に罪状は告げたぞ、ロンソン。庇い立てするならお前も重犯罪者の共犯として切って捨てるぞ!」

 ロンソンさんの主張を無視してバハシル側はこちらに剣を向けてくる。

 強気で押せばロンソンさんが引くと思っているのか、お互い剣を抜いた状態での睨み合いになってしまった。

 最悪孤立無援になる事も考えバハシル側を鑑定していると、バハシルと取り巻きの騎士はレベル10未満で簡単に無力化出来そうだ。

 だが護衛として雇われているのだろう5人組の討伐者達は、全員レベル20代後半なので要注意かと思ったが違うようだ。

 その討伐者達は武器を構えておらずゆっくりバハシル達と距離を取っていき、それに気付いたバハシルが苛立たしげに指示を飛ばす。

「何をしている!お前達も武器を抜いてさっさとそいつを捕らえるのに手を貸せ!」

「騎士様、悪いがその指示には従えないな。俺達が受けた依頼は魔物の討伐で、騎士同士の権力争いに巻き込まれるなんて真っ平御免だ。討伐対象の魔物も倒されたようだし、契約の通り俺達はここで抜けさせて貰う。」

 リーダー格の戦士がゆっくりそう受け答えしている間に仲間の法術師が転移法術の準備を終え、討伐者達は五人共転移で去った。

 一瞬呆然としたバハシルはさらに顔をしかめ、ロンソンさんに怒りの視線を向けるが、

「そこまでだ。双方剣を引け!」

そう腹まで響く声がした。


お読み頂き有難う御座います。

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