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にゃんだふるLove・4

 カプレ家には研究所で数日泊まり込みで検診をする事になったとストレンジ騎士団から連絡が入った。

 ルイーズは元に戻る薬が出来るまでの間スタニスラスと行動を共にすることになったのだが、二人はいつの間にか眠ってしまっていた。

 先に目を覚ましたのはルイーズだった。

 スタニスラスとルイーズは同じベッドで眠った。その為、目を開けてすぐスタニスラスの顔があり驚く。

 どうしてスタニスラスが目の前にいるのかと慌てるが、すぐに自分が置かれていた現状を思い出した。

 あまりの至近距離に心臓に悪いと距離を取るため起き上がろうとするが、腰部に重しでも乗っているのか起き上がれない。


「んっ」


 スタニスラスが身動ぎする。ルイーズは彼を起こさないように息を殺した。

 腰に巻き付く何かが僅かに圧を強めた。

 そこで、漸くルイーズは気付いた。腰に巻き付いているのはスタニスラスの腕であり、自分が人間に戻っていることに。


「手が……あるニャ。ちゃんと人間の手だニャ」


 両手を動かしてみる。ルイーズが思った通りの関節が動き自分の手だと実感した。

 だが、語尾がおかしい。混乱に陥っていると、隣で寝ていたスタニスラスが目を覚ました。


「ルゥ……?」


 寝起きの甘い声で名を呼ばれルイーズは脳天を殴られたような感覚に襲われた。

 ドキドキと心臓が早鐘を打つ。


 ──し、心臓に悪いですわ。


 ルイーズは悶絶寸前のダメージを受けた。


「ル……ゥ?君っっ」

「お、おはようございますニャ、スタン様。どうにゃら人間に戻れたようですニャ」


 スタニスラスは人間に戻ったルイーズに驚愕して目を見開いた。

 これ程までに驚いた表情をしたスタニスラスを見るのは初めてかもしれない。

 声を出すか迷ったが、話せる状態で言葉を発しないのは失礼だと困惑した表情を浮かべつつも挨拶する。


「も、申し訳ございませんニャ。まだ、完全に薬の効果が切れてにゃいようですニャ」


 巫山戯ていると思われかねない語尾に恥ずかしさと情けなさで今すぐにでも消えてしまいたいとルイーズは思った。


「……」

「スタン様?」


 スタニスラスは無言で起き上がりルイーズに背を向けてベッドの端に腰掛ける。

 ルイーズが呼びかけるが反応が無い。

 巫山戯た話し方に呆れられたのかとルイーズは悲嘆にくれる。

 スタニスラスはルイーズに背を向けた状態で頭を抱えた。


「ふぅ……」


 溜息を漏らすスタニスラスの様子にとうとう視界が歪む。

 今にも零れ落ちそうになる涙を懸命に泣くまいと堪え下唇を噛み締めた。

 呆れられただろうか、嫌われただろうか、とそんな考えばかりが頭の中を占める。

 縋るように手を伸ばすと避けるように徐に立ち上がった。


「すぐに衣服を手配しよう。女官を呼んでくるからルゥは暫くこの部屋で待っていてくれ」


 ルイーズに背を向けたまま言うスタニスラスを見上げると、髪の隙間から除く耳が赤くなっていた。

 スタニスラスの発言でルイーズは自身の現在の姿を認識する。

 布一枚纏っていない状態。ルイーズは慌てて上掛けを握り胸元を隠す。

 スタニスラスが無言になって背を向けたのも頷ける。


「あ、ありがとうございますニャ。……お見苦しいものをお見せして申し訳にゃ……」

「見苦しくなんてない!」


 食い気味にスタニスラスは否定した。


「あ、いや……すまない。ちゃ、ちゃんとは見ていないが見苦しくなんかない……」


 スタニスラスは語尾に連れて声が小さくなり顔を赤くする。釣られてルイーズの顔も真っ赤に染まった。


「いや、何を言ってるんだ私は。このままだとルゥが風邪を引いてしまうから私は行くよ」


 言って、一度もルイーズを振り返ることなく部屋を後にした。

 部屋を出て誰もいない廊下を進む。少し進んだところで足を止めた。


「はぁぁ~~~」


 スタニスラスは盛大な溜息を零して蹲った。

 こんな姿を城の者に見られでもしたら、なんて考える暇もなかった。

 手のひらと腕に残る柔らかく滑らかな触り心地、全てでは無いし一瞬とも言える僅かな時間だが目に焼き付けて離れないルイーズの姿。


 ──意外と胸あるんだな。……て、何を考えているんだ私は変態か!!


 心の中でセルフツッコミを繰り広げる。


「はぁぁぁ」


 二度目の溜息。

 胸の形が分かる服装は破廉恥とされ、女性はみなコルセットで胸の形を抑えている。

 その為、たわわに実った実物を布一枚纏わない状態で目にするのは思春期のスタニスラスにとっては毒だった。

 何とか理性を抑え込んでいたが、ずっと同じ空間にいれば危なかった。


「一瞬でよく見えなかったが完全に猫化が解けたわけではなかったようだ」


 語尾に着く猫語のことではない。ルイーズ自身は気づいていなかったようだが、頭部には髪色と同じ猫耳が未だ残っていたのだ。

 獣耳に猫語。思い出してはその破壊力にのぼせそうになるのを気合いで堪え、女官を呼びに向かった。


お久しぶりです。拙作をお読み頂き誠にありがとうございます。


この度、「悪役令嬢は王子様を御所望です」の修正版を掲載開始いたしました事を御報告致します。

原案のストーリーを主軸に世界観の開示、加筆修正等行っております。

来月中か再来月あたり(2023/09/30 現在)には原案以降の物語をお届け出来ればと思っております。


『悪役令嬢は王子様をご所望です【改】』というタイトルで執筆してます。

興味のある方は是非とも覗いて見て下さると嬉しいです。

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