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にゃんだふるLove・2


スタニスラスは仔猫となったルイーズを王宮へと連れ帰った。


「この後ロランやデジレと共に謁見の間に父上から呼ばれているんだ」

「みゃ?」

「流石に謁見の間まで連れて行くことは出来ないから悪いけど近くの部屋で待っていてくれるかな?」

「みゃみゃっ(承知致しましたわ)」

「ありがとう」


聞き分けよく返事をするルイーズの頭を、優しく撫でる。

控え室に着くと、既にロラン、デジレ、そして従者のセレスタンとピエールの四人がいた。


「待たせたな」

「遅いぞスタン」

「何だ?その腕に抱えてるのは」


生真面目なロランがスタニスラスの登場に、そちらへと目を向けて固まる。

スタニスラスの腕には、水色の毛並みをした子猫が抱かれており、興味深そうにデジレが見つめる。


「私たちはこれから陛下に謁見するから、二人にこの子を預かって貰いたい」

「私は構いませんよ」

「俺もです。それにしても、本当に可愛い仔猫ですね」

「あまり人に慣れてないからね。あまり触れずにこの子の好きにさせてやってくれ」


ピエールとセレスタンにそう告げて、ルイーズを机の上に下ろした。

振り返って、不安そうに見上げるルイーズにスタニスラスは優しく頭部を撫ぜた。


「それじゃあ、行ってくるよ。直ぐに戻って来るからね」


そう言うと、スタニスラスはロランとデジレと共に部屋を出て行ってしまった。

仔猫の姿になってしまったせいだろうか。

心まで、幼くなってしまったようで、スタニスラスの姿が見えないことに不安になり、耳と尻尾を垂らした。


「仔猫さん、大丈夫ですよ。スタニスラス殿下なら直ぐに戻って来ます」

「そうですね。僭越ながら、それまではスタニスラス殿下の代わりに私たちが遊び相手になってあげましょう」


セレスタンは持ち前の明るさで、ルイーズの不安を吹き飛ばすほどの満面の笑みを浮かべた。

頭上から大きな手に撫でられ驚くも、その手はとても優しく、顎下を撫でる指先はルイーズの気持ち良い所を擽る。

気が付けば、ピエールの指捌きにゴロゴロと喉を鳴らしていた。


「ははっ、本当に可愛い仔猫ッスね」

「スタニスラス殿下は人に慣れていないと言っていましたが、慣れれば懐っこいのかもしれないですね」

「ピエールさん、俺も触っても大丈夫ですか?」

「大人しい子だし、驚かせないようにしなければ大丈夫でしょう」

「にゃーん」


ソワソワと猫を触りたそうにしているセレスタンの姿に、ルイーズは自ら歩み寄って頭を差し出した。

頭を撫でられるくらいなら、と思っていたのだが、セレスタンはルイーズをひょいと抱き上げた。


「にゃっ、にゃにゃ」

「うわぁ、本当に小さいなぁ。生後何ヶ月くらいだろう」


ルイーズは驚きの声を上げるが、セレスタンは気にせず前足に両手を差し込んで掲げる。


「おや、この子……」

「ん?どうしたんですか、ピエールさん」

「みゃっ、にゃああああ(み、みないでくださいーっ)」


ピエールが見ていたのは、宙ぶらりんに抱えられているルイーズの腹部あたりだった。軽く尻尾を掴まれ下腹部あたりに視線が向けられる。

仔猫の姿ということは、裸も当然だ。腹部あたりに目を向けられると、大事な部分を隠すものはない。

いくら、猫の姿とはいえ、恥ずかしすぎる羞恥にルイーズは手足をばたつかせた。


「メスなんだなと思いまして」

「うわわっ、急に暴れたら危ないッスよ」

「にゃーにゃーにゃー(離してくださいーっ)」


恥ずかし過ぎて目に涙が浮かぶ。一刻も早く、降ろしてもらいたくて暴れるが、しっかりと体を掴まれ動きを抑え込まれる程の体の小ささを呪った。


「何を……している……」


その時、冷え冷えとした声が室内に響いた。


「あ、殿下方おかえりな──おわあっ」


部屋の入口には、謁見を終えて帰って来たスタニスラス、ロラン、デジレの姿があった。

三人を出迎えるセレスタンの真横をあるものが過ぎった。間一髪のところで避けたものの、避けなかったら確実に脳天を貫いていたであろう氷の塊が背後の壁に突き刺さっていた。


「スタンッ、いきなり何してんだよ」

「お前たち……見たな……」

「おい、どうしたんだよスタン。取り敢えず、セレスタンとピエールは逃げろ」


スタニスラスから殺気が発せられる。

咄嗟に、ロランとデジレが止めに入るが、スタニスラスの視線はルイーズとセレスタンに釘付けとなっていた。


「仕方ない。デジレ」

「ああ、わかってる。スタン、悪く思うなよっ」


デジレはそう断りを入れて、スタニスラスの顔を強引に自分の方へと向けて、唇を奪った。



「にゃア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


仔猫から発せられたとは思えない絶叫が轟く。

デジレとの強制接吻により、スタニスラスは脱力して倒れるのをデジレが支える。

デジレのストレンジはフェロモンであり、接吻で直接彼のフェロモンを流し込まれたスタニスラスは、のぼせ上がったようになって一時的に気を失ったのである。


「にゃあっにゃあぁぁぁにゃあぁぁ」

「デジレ、失神はやり過ぎだ」

「いや、だって冷静を失ったスタンとか初めてだし中途半端に意識あったら俺が殺られるだろ」


呆れて咎めるロランだったが、デジレの意見を聞いて確かにと納得せざるを得なかった。


「てか、スタンの意識が戻った後もフォロー手伝えよ。ロランも賛同したんだからな!」

「分かっている。それにしても、スタンが冷静を失うのはルイーズ嬢に関することだけだと思っていたが.......」

「あー、それは言えてる。こいつルイーズ嬢以外に興味あるものなんて無いと思ってた」


ロランとデジレの酷い言い様に、普段のルイーズならばそんな事はないと否定していただろうが、それどころではない。

愛しい人が倒れる姿に、何とかセレスタンの手から抜け出してスタニスラスの元へと駆け出した。

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