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【R15】スタニスラスとルイーズ IF編

もしも、スタニスラスが問題無く在国していてルイーズと正式に婚約者になっていたらという話です。

ルイーズは転生者では無く、ゲーム本来のルイーズです。

かなりの糖度で甘々です。スタニスラスがルイーズを溺愛してます。

R15です。R15です。大事なので二回言いました。


※この作品は『悪役令嬢は王子様を御所望です』の第三章正編を読まれた上でご高覧頂きます事を推奨致します。



ルイーズ・カプレは沢山の資料を抱えたまま気持ちは足早に、表は優雅に生徒会室へと続く廊下を歩いていた。

そんな彼女を呼び止める声が背後から聞こえる。


「やあ、ルイーズ嬢」

「デジレ殿下、ロラン殿下。如何なさいましたか?」

「いや、すまない。特に用はないんだがデジレが君の姿を見つけて思わず声を掛けたようなんだ」

「まあ、そうでしたの」


彼等はルイーズと同じ学年で留学生としてこの学園に来た他国の王子達である。

ルイーズは早く生徒会室に行きたい気持ちを抑えてにこやかに彼等と対話する。


「重そうだね。手伝おうか?」

「い、いえ。このくらいなら大丈夫ですわ。ありがとうございます」


ロラン殿下の申し出に他国の王子に手伝わせるなど以ての外だとお断りする。


「あれ?スタンは居ないの?いつも君の傍に磁石のように引っ付いているのに」

「そっ、そんな引っ付いているだなんて。そう見えるのであれば、それはわたくしの方ですわ」


慌ててデジレ殿下の発言に弁明するもルイーズは口を滑らせてしまった最後の言葉に思わず羞恥に頬を赤らめる。

公爵家の令嬢が自国の王子に付き纏うなどはしたない令嬢だと思われてしまったかと羞恥で熱か集まる。


「ははっ、冗談だよ。ルイーズ嬢は本当に可愛いなぁ。スタンなんかやめて俺の婚約者にならない?」


デジレ殿下はルイーズの髪の毛先を掬うと滑らかな動作で毛先に口付ける。廊下での出来事ということもあり、他にも生徒達が見ていたようで黄色い声が周りから上がる。デジレ殿下のその行動にルイーズは肩を跳ね上がらせて速攻で逃げ出したい気持ちになるが他国の王子に不敬な態度は出来ない。


「おい、デジレ」


ロラン殿下がデジレ殿下の言動に非難の声を上げようとした時だった。

急にルイーズの視界が暗転したかと思えば頭部を後ろに引かれる。その力に傾く体は直ぐに硬い何かに当たって動きが止まる。


「人の婚約者に何をしているのかな?デジレ?」

「やあ、スタン。何って、ルイーズ嬢を口説いていたんだよ」


頭上から聞こえたのは愛しい人の声。視界を遮られているのは愛しい彼の仕業であるとルイーズは理解すると同時に腰を強い力に引き寄せられ背中に愛しい人の体温を感じる。


「スタン様!」


ルイーズは喜色を含んだ声で愛しい人の名を呼んで顔を上げる。すると、塞がれていた視界が明るくなり愛しい人の顔貌が顕になる。


「戻りが遅いから心配になって来てみれば…迎えに来て正解だったよ」


ルイーズの愛しい人。ダルシアク国の第一王子でありルイーズの婚約者。スタニスラスは先程デジレ殿下に発した不機嫌な声音は嘘のように柔らかい笑顔を浮かべてルイーズを見下ろす。

その際、目元を塞いでいた手でさり気なくルイーズが持っていた書類を半分以上持ってくれた。


「これはどう見てもスタンの方が執着してるだろ」

「何か言ったかい?デジレ」

「イエ、ナニモ」


ボソリと呟いた発言を耳聡く聞き取ったスタンの顔には黒い笑みが浮かんでいる。

デジレ殿下はカタコトで答え目を逸らす。

本能的にこれ以上スタンを怒らせるような事をしたら彼の頭脳と手腕で即刻国に戻されるだろうと判断したデジレ殿下はそれ以上余計な事を口にしないように口を噤んだ。

その行動に、ロラン殿下は呆れた眼差しをデジレ殿下へと向ける。


「私達はこれで失礼するよ。デジレが悪かったね」

「ええ。私達もまだ生徒会の仕事が残っているので戻ります。何かあれば今日は弟達を頼って下さい」


爽やかな笑顔を浮かべるスタン様にロラン殿下は胡乱気な目を一瞬向けて一つ溜息を零せば了解だと手を振ってデジレ殿下の首根っこを掴んで踵を返して行った。


「あ、あの…スタン様…」


今までの流れを黙って見ていたルイーズがスタンの名を弱々しい声で呼ぶ。

それに対してスタンはルイーズを片腕に抱き込んだまま見下ろして「ん?」と首を傾げる。


「戻るのが遅くなってしまい申し訳ございません」

「あれはデジレ達が君を足止めしたのが悪いのであってルゥには非がないから気にしなくていいよ」

「し、しかし。あの…もう少し上手く応対が出来ていればここまで時間を要する事もなかったですし……」


一重に彼等が悪いとは言えないとルイーズは眉尻を下げて考える。すると、スタンは一寸思案する素振りをしてルイーズの身体を離す。


「そうだなぁ。それも、一理ある」


その言葉にルイーズは思わず泣きそうな顔になる。

ルイーズは幼少の頃から婚約者であるスタンを一途に愛し、もしも彼に見放されたり嫌われてしまったらと考えるとこの世の終わりのような青白い顔へと変貌する。

その様子を眺めていたスタンはルイーズが自分の発言にぶっ飛んだ思考まで及んでいる事に気付いていながら、彼女に気付かれないようにクスリと笑う。


「その事については生徒会室で確りと話し合おうか」

「は…はい…」


ルイーズは泣かないようにと唇を真一文字に結びスタンの後に続く。

二人は生徒会室に着くとそのまま生徒会長に与えられた別室へと入る。この部屋の主であるスタンは先にルイーズを入室させて後ろ手に部屋の鍵を閉める。書類を設置されていた机の上に置くとスタンは生徒会長だけが座れる席に着き柔らかそうな椅子に深々と腰掛ける。


「おいで、ルゥ」


彼の呼びかけに立ち尽くしていたルイーズの肩が上がる。スタンが身体を横に向けていることから机を挟んだ場所では無く彼の隣に来いと指示されているのだと読み取って机を回ってスタンの隣に立つ。

ルイーズは不安気な表情で二人向き合っているといきなり手を取られ腰を引かれる。


「きゃっ」


ルイーズは体勢を崩してスタンの上に倒れ込む。


「ご、ごめんなさいっ」


慌てて離れようとするもスタンはルイーズの身体を抱き締め離そうとしない。


「スタン様…?」


彼の顔色を伺うようにおずおずと顔を上げる。

すると、彼は先程デジレ殿下にされたようにルイーズの髪を救い上げ、デジレ殿下に口付けされた場所と同じ位置だと思われる場所に口付けを落とす。

伏せた長いまつ毛に整った顔立ち。ゆっくりと目を開けて覗く澄んだ青い瞳にルイーズはドギマギと胸が高鳴るのを感じた。


「本当に君は…少し危機感が足りないんじゃないか?」


見つめ合う甘い雰囲気を打ち壊すスタンの発言にルイーズは気落ちして肩を落とす。彼に呆れられたのかと思い涙が浮かぶ。


「申し訳…ございません」


紡ぐ言の葉が震える。


「だから、片時もルゥのそばを離れられない。ルゥをこの腕の中に閉じ込めて誰の目にも触れさせたくない」


スタンは倒れ込んだままの状態のルイーズを自身の膝上に臀部を乗せる形で座らせる。

ルイーズはその素早い一連の動作に瞠目するもスタンのひやりと少しばかり冷たい手が彼女の頬に触れルイーズばスタンを見つめる。

スタンの青く冷たさがある瞳の奥には燻る熱情が見え隠れしており、ルイーズの視線を絡め取る。ルイーズも吸い込まれるように澄んだ青い瞳から目を逸らす事が出来ずに見つめ合う。

次第に二人の距離は徐々に縮まり何方からともなく瞼を伏せれば唇を重ね合う。

初めは啄むような口付けから徐々に食むような口付けに変わり、スタンが舌先でルイーズの唇をなぞると息継ぎに薄く開いた唇にすかさずスタンの舌先がルイーズの口内に割り入る。


「んっ、」


部屋には二人の息遣いとルイーズの甘い声が漏れる。思わず漏れた声にルイーズは羞恥に頬を染める。それでも、スタンの口付けは止まらない。

漸く解放されたのは約二分後だった。

ルイーズは四半刻は時間が経ったのではないかという感覚と完全に脳は溶けきって上手く思考が働かない。身体は脱力して完全にスタンに寄りかかっており、肩で呼吸をするルイーズとは反するようにスタンはいつも通りでまだ余裕がありそうだ。

その事にルイーズは僅かな悔しさを感じつつも視線を上げると口端に垂れた唾液を親指で拭いつつも舌先で舐めとっている場面でその姿が何とも官能的でルイーズは慌てて顔を逸らす。


「ルゥ、デジレにはもう近付いては駄目だよ。何か用がある時は私を通して話をするんだ。いいね?」


顎に手が伸ばされ逸らした顔を持ち上げられる。

何時も余裕があり何処か冷たいながらも社交的な笑みを浮かべているスタンの顔は一人の男としての熱情を孕んだ瞳をしており、耳元で囁く愛しい人の僅かな嫉妬を含んだ声音にルイーズはブンブンと首を縦に振ることしか出来なかった。


「いい子だ」


ルイーズのその様子に何処か意地の悪そうな笑みを含んだ表情でそう言うと、前髪を片手で押し上げ額にキスをする。茹でたこのように真っ赤に染まるルイーズを満足気にスタンは見下ろし、愛おしむ眼差しで再度彼女の旋毛に口付けを落とした。


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