1/2
プロローグ
人の心は簡単には読めない。なぜならそれは目に見えないから。
では、目に見えないからかわからないのか。いや、それは違う。
仮に目に見えない、心を読めたとしよう。しかし、どんなに読めたって限界がある。人が人である故、自分と他人である故、完全に理解することはできないだろう。
自身と他者がいるからアイデンテティーが保てるのであろう。仮に自分だけの世界があったとしたら、それ程虚しい世界なのであろう。
いや、そんな卑屈なことを考えるのは止めよう。
あくまで他人の理解しようとするのは、所詮自己満足なんだろうと思う。
ただ、心が読めなくても変わらないものはあるはずだ。
目に見えるものであっても信じられるものはあるはずなんだ。
といった取り留めもないことを考えてしまうのはこの春の暖かさのせいだろうか。それともこの環境のせいなのだろうか。




