勇の感情
夏休みも終わり、学校が始まった。
痣もほとんど消えたので、同級生たちに突っ込まれる心配がなくなったのでホッとした。
女の子を助けてケガをした。
聞こえをいいだろう。
だが、結局は春樹という人が来なかったら、もっとひどいことになっていた。
みっともないよな、俺って。
それとは別にずっと気になっていることがある。
それは岡崎と名乗った女の子だ。
勇が知っている岡崎という人物は、岡崎綾斗という転校してしまった同級生だけだ。
綾斗は確かに男らしくはなかった。
でも間違いなく男だった。
どういうことだろう?
わけがわからない…けど、あの目は間違いなく俺の知っている岡崎だ。
そこへ去年まで同じクラスで、今は隣のクラスの梨華がやってきた。
「星野、ちょっといい?」
「あ、ああ…」
梨華が歩いていくので、後ろをついていく。
どこまで行くんだ?
着いた先は体育館の裏だった。
他には誰もいない。
「で、なんだよ?」
「へへ、やるじゃん星野。見直したよ」
「は?何が?」
「そうやって自分から言わないところが男らしくていいよね」
梨華が言っていることが何となくわかった。
きっとあのことだろう。
「なんで知ってるんだよ?」
「ん?本人から聞いたから」
「本人って岡崎か?お前岡崎と会ったのか?」
理由を知りたい勇は無意識に梨華の肩を掴んでゆすっていた。
「ちょっと痛いって」
「あ、すまん…」
慌てて腕を放すと「もうっ」と梨華が少し怒っていた。
「あの岡崎は岡崎綾斗なのか?なんで女になってるんだ?」
「それをね、本人がちゃんと説明したいんだって。会ってくれる?」
会って聞きたい。
でも勇も内心は会うのが怖かった。
あの女の子を岡崎綾斗と認めたくないからだ。
どう考えても勇の中では男だ。
女になった綾斗を認めたくない。
「現実を受け止めるのが怖いの?」
梨華に見透かされて言葉が詰まる。
「男の綾斗くんがよかった?」
「当然だろ、あいつは男なんだ!」
「星野は何にもわかってないんだね」
「どういう…」
「会えばわかるよ。なーんにも変わってないから。星野が知ってる綾斗くんと」
言っている意味がわからないが、会おうとする気持ちだけは持ち始めていた。
「今度の日曜日って部活何時に終わる?」
「多分4時ごろには…」
「じゃあ5時には来られるね。集合場所はまた決まったら伝えるから」
そういって梨華はいなくなった。
俺は…岡崎に会って何を聞かされるんだ…?




