悪のりする魔王と付き合いのいい勇者のお話
ご都合主義の塊です。
笑ってもらえれば本望!
とある魔界に大魔王様がいました。
大魔王がいるという事は魔王もいます。
大魔王様は、暇になってきたので、ある日自分の部下である魔王にこう言いました。
「ちょっと人間の世界で暴れてこいや」
「無茶言わんでください!」
「あぁ? お前何様?」
「行ってきます!」
力の上下関係をしっかり教え込んでいる大魔王の命令で、魔王は人間世界で暴れました。
ところが人間世界には、対大魔王用の最終兵器、永久勇者MK-Ⅶがいたのです。
今では失われた超古代のなんとか技術によって作られた永久勇者は、ものすごく強く、人間世界を守護し続けてきました。魔王が人間世界で暴れるのを嫌がったのは、この永久勇者がいたからなのです。
魔王が現れると、人間達は、この永久勇者に言いました。
「早く倒しにいけ」
「昨日、北のシルベンドに現れたから、まだその辺りにいるだろ」
「被害はだすんじゃねぇぞ」
「そういうことで、頼むわ」
こんな感じで永久勇者は魔王討伐を命令されたのですが……
「ニンゲンマモルノ、モウヤダ」
唐突にそんな事を言われ、人間達は慌てました。
最初は驚き、恐怖し、そして怒りました。
ふざけんな!
てめぇの仕事だろうが!
さっさとやれよ!
ぶっこわされてぇのか!
こんな感じで無理やりやらされる事になり、永久勇者は魔王の元へと飛んでいきました。
これで一安心。
人間達は面倒事が一つ終わったと考えたのですが、その日以降も魔王が現れ、人間世界で大暴れします。
しかも、その身を、なんだか勇者っぽくカッコいいパワードスーツで身を包んで。
「グハハハ、まさか勇者が手を貸してくれるとはな!」
「モウニンゲンマモルノヤメタ」
「そうかそうか! グハハハ」
魔王の体を包んでいるのは、永久勇者の第2形態。パワードスーツバージョンだったのです。元々は、人間に力を貸す為に使われる機能だったはずですが、それが魔王に使われる事になったという事なのでしょう。
勇者の力を得た魔王は、さらに大暴れ。
あっというまに人間世界を手中に収めました。
さて、これで大魔王様にいい報告ができる……と思ったのですが……
「あれ? 俺ってもう大魔王より強くね? どうよ、勇者?」
「ラクショウ」
「やっぱ? んじゃ、上下関係おしえてやんねぇとな」
そんな理屈で大魔王へ挑みました。
勝ちました。
楽勝です。
なんだか最後に、まじぱねぇ……とか言っていたので、力の上下関係を思い知ったのでしょう。
調子こいた魔王は、そのまま魔界を征服。
グハハハと笑いながら、人間と魔界を征服しきった魔王は、玉座でハーレム状態を作っていました。
……ところが飽きました。
ハーレムとか趣味じゃなかったようです
つまらなくなった魔王は、暇つぶしに強い敵を求めました。
魔界には邪神というのがいます。一応神様です。
魔王は勇者にやれるか? と聞いてみたところ。
「ダイタイイケル」
そう言われたので挑みました。
ちょっと苦戦しましたけど勝てました。
なぜ魔界の生き物が自分に勝てる! と言っていましたが、魔王と勇者が力を合わせているのを知り「悪魔か!」とかいって死にました。魔王と勇者ですから悪魔ではありません。誤解されたようです。
邪神も倒したので、もう最強です。
敵なんていません。
ハーレムも飽きたので、今度は世界創造でもしてみるか? と考えました。
しかし、それをやるとなると創造の力が必要となります。
そんなものは有りません。邪神だってありませんでした。
そこで魔王は、創造神に挑んで創造の力を奪おうと考えました。
勇者に勝てるか? と聞いたところ、
「ナントカイケル」
と言われたので挑みました。
なんとか勝ちました。
創造神が最後に「どうせすぐに面倒になって途中でやめる」そういって消滅しました。
意味が良く分かりませんでしたが、魔王は創造の力を手に入れて、新たな世界を作りました。
最初は意気揚々とやっていました。
あれこれ世界にすむ住人達に色々与えて、崇められて楽しかったです。
しかし、ある程度自立心がでてくると、創造神であるはずの魔王を崇めなくなりました。
そればかりか、やっている事が同じになってきます。秩序ある平和な生活万歳。
――見ているのが、つまらなくなりました。
魔王は面倒になったので消滅させようと考えましたが、それもなんだか可哀想と思い、その世界をポイっとどこかに捨てました。きっと彼等は彼等で幸せにやっていくでしょう。
作った世界の事はともかく、魔王はやることが無くなりました。
さて、どうしよう……
なんか、もう、戦うのも作るのも女とイチャコラするのも飽きたな。
そう考えた魔王は、ダラーと毎日を過ごしていたのですが、あるとき、最大の敵が残っている事に気付きます。
それは永久勇者です。
自分が身につけているパワードスーツこそが最大の敵でした。
思い出した魔王は、勇者に問いました。
「俺と戦わね?」
「イイヨ」
快諾してくれたので戦いました。
本来勇者のほうが強いのですが、強敵を倒してきた魔王には、膨大な経験がはいっており大幅に強くなっていたのです。
魔王は戦っている最中に、これだ! と思いました。
気付いた魔王は勇者との戦いを止めました。
永久勇者は訳が分かりませんが、魔王のいう事を聞こうと思いました。
魔王は、拮抗する戦いこそが面白いと言いました。ずっと戦っていたいらしいです。
ですが、それを長くやりすぎると、また飽きます。
そこで魔王は考えました。
自分の魂を輪廻の輪に閉じ込め記憶を消すから、自分が生まれ変わったら、それにちょうどいい感じの強さで勇者も生まれてきてくれないか? と。
ですが、勇者は作られし者です。
生まれ変わるとかできません。
しかし、永久勇者は超古代のなんとか技術で作られています。
自分の力を調整してから、記憶を一時的に消すことぐらい訳がありません。
魔王が生まれ変わったら、彼もまた自身を調整して魔王と戦う事にしました。
……
その戦いが繰り返されていったある時代の事、魔王よりも強い大魔王が生まれました。
魔王の魂は大魔王によって、力の上下関係を教えこまれ……
ふりだしに戻りました。
おしまい




