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第685話 近況 1



<和見幸奈視点>




 白都で投獄されて、国境であの竜とまた戦って、宝具で転移して、大魔導師と戦った? 


「この短期間で経験しすぎだよ!」


 普通じゃない。

 考えられない。


「異世界間移動を使うと時間の流れが変わるから、そう短くはないぞ」


「そうだけど、でも長くはないから。十分短期間だから」


「そうか?」


「そうだよ」


「……」


 嘘?

 納得できないの?


「功己、ちょっと冷静に考えてみて。人ってそんな連続で大事件に巻き込まれないでしょ」


「……」


「異世界に渡る前の功己の生活と比較すればよく分かるはずよ」


「それは、まあな……けど、あっちではそんなもんだろ?」


 そんなわけない。


「幸奈も経験してるじゃないか。黒都からエビルズピーク、ローンドルヌの大橋、トゥレイズ城塞、テポレン山の決戦ってな」


「あれは一連の流れだし、それなりに長期間だったし、今回の功己とは全然違うよ」


「そうでもないと思うがなぁ」


 感覚がおかしい。

 一般人とはかけ離れすぎてる。

 でも……。


「はあ~、これも平行線になるだけね」


「……だな」


 ここはわたしが受け入れて、次の話に進んだ方がいい。


「それで、功己、あっちにはいつ行くの?」


「うん?」


「だから、みんなのいるテポレン山、エンノアにはいつ戻るのかなって?」


「戻るも何も、様子は見に行ってるぞ」


 へっ?


「ずっと部屋に籠ってたんじゃ?」


「あんなことの後なんだ、さすがに放置はできないだろ」


「それは……」


 その通りだとわたしも思うけど。

 部屋での功己は酷い落ち込みようだったのに、そんな状態で行けるもの?


「といっても、あっちに渡ったのは短時間の2回だけ、軽く様子を見てきただけだが」


「えっ?」


 2回も?


「幸奈も知ってるように、俺には責任がある。それなりに色々とあるんだ」


「責任……」


 功己の強い責任感は、もちろんよく知っている。

 誰よりも身に染みて知っているから今の体調で様子を見に行くという行動に驚きはするものの、一応納得だけはできる。

 ただ、その重い体で2回、さらにこの先も休みなく世界を渡り続けるというのは……。


「とはいえ、今回の2度の渡界であっちの状況は概ね把握できた。だから、そうだな。しばらくはこっちでゆっくりできると思う」


「あっ……そうなんだ。ゆっくりできるんだね」


 よかった。

 それなら、安心できる。

 この体調もゆっくり休めばきっとよく……って、待って。


「でも、ちょっとおかしくない?」


「何が?」


「こっちでゆっくり休めるってことは、功己の力がしばらく必要ないってことだよね?」


「……ああ」


「みんなこれからが大変な時なのに? どうして功己の助けが要らないの?」


「……」


「功己?」


 なぜなの?

 教えて。


「……今の俺は不要ってことだ」


「不要?」


「ああ、必要ないんだよ」


 嘘!

 考えられない!


「そんな顔するなって」


「するよ!」


 だって、功己が不要だなんてあり得ないもん!


「大丈夫だから」


「……」


「幸奈の心配してるようなことじゃないからさ」


「……だったら、どうして?」


「状況が大きく変わったんだ」


 状況が大きく変わった?

 それだけじゃよく分からない。


「ちゃんと説明して、お願い」


「……セレス様がエリシティア王女と組むことになった」


 えっ!?


「アイスタージウス打倒、新王即位、ワディン独立を目的に共闘することになったんだ。それで、今は遠征の準備に忙しい。俺の出る幕はないってことだな」


「共闘? ワディンとレザンジュが? セレスさんがレザンジュを許したの?」


「王軍によるワディン侵攻にエリシティア王女は関与していない。むしろ反対の立場だったらしい」


「それでも、領地や肉親、家臣たちを奪った国なのよ」


「感情より実を取ったってことだ。入れ替わった経験のある幸奈ならセレス様の気持ちも理解できるだろ」


 確かに、セレスさんならその選択をするかもしれない。

 理解もできる。

 ただ、父の仇であるレザンジュと手を組むなんて。


「……」


 わたしの中に今も息づくセレスさんの感情的には納得しきれない。

 モヤモヤばかりが残ってしまう。

 だけど、彼女自身が許したというのなら……。


「とにかく、そういうことなんで、今の俺はゆっくり休めるってわけさ」


「今……今だけ? 遠征の準備期間だけ?」


「……」


「遠征には同行するの? 功己?」


「その予定は、ない」


 同行しない。

 遠征しない。

 功己が!


「戦わない……」


 安堵、安心。

 疎外感と寂しさ。

 複雑で微妙な感情が湧き出てくる。


「功己が、遠征軍と離れて残るんだ」


「ああ、多分な」


「……分かった、うん、よく分かった」


 セレスさんとワディン、エリシティア王女の状況については理解した。

 色々と思うところはあるし、感情の整理もまだだけど、それでも何とか飲み込めた。


 ただ、もうひとつ。


「シアさんとヴァーンさんは?」


「そっちも……視力回復の算段がついたらしい」


「だから?」


「俺は不要だな」


「それだけ?」


「……」


「ヴァーンさんとの間に何かあったの?」


「何もない、少なくとも表面上はそうだ」


「つまり、ヴァーンさんの本心は違う?」


「……」


「功己を恨んでる?」




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