表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
658/701

第654話 猛攻


<ヴァーンベック視点>




 分体3頭中戦っているのは1頭のみ。どういうわけか、2頭は後方で足を止めている。


「……」


 この現状では、サージの考えにも理はあるし、利もあるだろう。

 かといって、先制が悪いわけでもない。


「こっちから先に仕掛けるってのは?」


「積極的には賛成できねえな。今の時点で動かない子分2頭の戦意が高いとは思えねえからよ」


「ギリオンが1頭倒したら残りは逃げる可能性もあるものね」


「……」


「でしょ、ヴァーン?」


 サージ、ブリギッテともに待機を主張する中、俺が1人で突っ走るわけにはいかないか。


「……分かった。もう少し様子を見るとしよう。ただし、戦闘準備だけは怠るなよ」


「当然、俺はいつでも出れるぜ」


「こっちも万全ね」


「わたしも大丈夫」


「シア?」


 分体出現後、ずっと黙って待機していたシア。

 そんなシアから決意のこもった声が。


「……おまえは出なくていい。その方針は変わってないぞ」


「ううん、敵が3頭もいるんだもん。魔法くらいは準備しないと」


 今のシアでも魔法の準備だけなら平気だろう。

 ただ、この感じは戦況次第で前に出て来そうな……。


「もしもの場合は私がシアさんを誘導するから心配要らないわ」


「ありがとう、ブリギッテさん」


「いいのよ、当然のことだから」


「まっ、ブリギッテと一緒なら問題ねえだろ」


「ヴァーン?」


 止めても無駄か。


「……分かった。けど、絶対無理すんじゃねえぞ!」


「うん!」


 方針が決まったところで、ギリオンの方は?



「だあ!」


 ザンッ!


「おりゃあ!」


 ザシュッ!


「ギャアァ!」


 ギリオンの優勢は変わらず、押し続けている。

 ここまで耐えていた分体の鱗も硬皮も酷い状態だ。


 後方2頭も同じ。

 動くことなく様子見に徹したまま。


 ガンッ!

 ザンッ!

 ガシュッ!


「アアァァ!」


 しかし、あの蒼い鱗。

 ギリオンの鱗にそっくりじゃないか?


 ん?

 ギリオンの鱗が光って?

 いや、光ってない?

 錯覚……?



「グギャアァ!」


「そろそろ決まるんじゃねえか?」


「ほんと、もう少しかも」


 っと、今は鱗より戦況だな。


「うりゃあ!」


 ガシュッ!


「だりゃ!」


 ザシュッ!


「いいのが入ったぞ!」


 ああ、見事な一撃だ。


「よろめいてるわよ」


「おーし、そのままやっちまえ!」


「だあ!」


 ザンッ!


「だああ!」


 ザンッ!


「だりゃあ!」


 ガシュッ!


「とどめだぁ、うっりゃああ!!」


 ザッシュン!!!


 これでもかと猛攻を続けた後の一撃。

 所々鱗が剥がれ落ちた首もとへの横薙ぎが決まった。


「ァァァ……」


 横薙ぎを首に受けた分体から鮮血が勢いよく溢れ出す。

 大地を血で染めていく。

 そこに。


 ドッシィィィン!


 分体が崩れ落ちた。

 ギリオンが倒し切ったんだ。


「あいつ、やりやがったぞ」


「……」


 エビルズピークで俺たちが散々手こずった分体を、たった1人で討伐しちまった。 


「ギリオンさん、倒したんですね?」


「……ええ」


「1人で、本当に」


「ほんとよ、信じられないくらい凄まじい剣だったわ」


「ああ、凄えわあいつ。けど、今は呆けてる場合じゃねえぞ」


「後ろね」


 サージの言う通り。

 まだ分体が残ってる。

 いまだ沈黙したままの後方2頭だ。


「「……」」


 逃げるのか?

 それとも、攻めかかって来るのか?


「さってと、次は後ろだなぁ」


「えっ?」


 警戒する俺たちを尻目にギリオンが足を踏み出そうと?


「ちょっと!」


「待ってくれ、ギリオン。あいつら戦う気ねえかもだぜ」


 休みもせず次の標的に向かおうとするギリオンをブリギッテとサージが止めに入る。


「なわけねえだろ」


「だから、ちょっと待てって」


「待てねえなぁ、っと」


「おい!」


「待つのはこいつらを始末してからだぁ!」


 2人の手を振り払って駆けだしちまった。


「……どうしようもねえな」


「ほんとね」


「けどまあ、こうなりゃ仕方ねえ」


「ええ」


 こっちも、やるしかない。



「たりゃあ!」


 そんな俺たちの前では、ギリオンが間合いに入り込み。

 剛剣を一閃。

 惚れ惚れする剣を叩き込んだ。


 ブンッ!


 が、当たらない。

 剣が空を斬っている。


「なっ?」


 飛んだのか?

 ずっと動きを止めていた2頭が同時に、左右に別れて?


「ガアァァ!」

「グガアァ!」


 さらに、腕を振り襲い掛かってくる!


 ガンッ!

 ガギッ!


 上手い!

 一振りで、2本の腕を弾き返したぞ。


 ガンッ!

 ギンッ!


 ガッ!

 ガリッ!


 それでも、今のギリオンは防戦一方。

 完全に押されている。


 ガリッ!

 ギンッ!


「ちっ!」


 ともに倒した分体より動きがいい。

 そんな2頭を1人で相手するのは、今のギリオンでも難しいはず。


 ただし。


「俺は左、サージは右だ」


「りょーかい」


「ブリギッテは牽制、手数重視で頼む」


「分かったわ」

 

 こっちの態勢も既に万全。

 分体の背後をとっている。


「いくぞぉ!」


 ガギンッ!

 ギンッ!


 俺とサージの剣が分体2頭の背を強襲。


「アイスボール!」

「アイスボール!」


 衝撃を受け振り向く分体の頭に低威力の氷球が炸裂した。

 すべてが完璧に狙い通り。


「ギャ!」

「ゴフッ!」


 分体の腕が止まり、意識もギリオンから離れている。

 とはいえ、傷は浅いもの。

 こんな連撃じゃ倒せはしない。


「ギリオン!」


 それでも、時間稼ぎには十分。

 隙もあるだろ。


「おうよ!」


 ザンッ!


 ザシュッ!


 ギリオンの二振りが空を走り。

 分体を斬り裂いた!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ