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第652話 危険



<ヴァーンベック視点>




 今のギリオンは平常じゃない、まだおかしいのでは?

 そう思わずにはいられないぞ。


「シア?」


「大丈夫」


「……信じていいんだな?」


「うん」


「……そうか」


 気配を感知しなおしても問題なし。

 シアの勘も大丈夫。

 とはいえ……。



「分かったか? おう、ブリギッテ?」


「はあ~、あんたってほんと」


「まっ、これがギリオンだわな」


「……そうね。で、気づいたら山にいたってどういうこと? 転移でもしたって言うの?」


「ん? ありゃ、転移なのか?」


「それを聞いてるんでしょ!」


「転移、そう言われりゃ転移のような……いや、うーん?」


「もう! テポレン山に来る前はどこにいたのよ?」


「赤い空間だな」


「何それ?」


「だから、赤い異空間だっつうの」


 ちょっと待て!

 異空間だと!

 それに、竜の子分と戦ったとも言ってたよな?


「はあ?」


「で、その前はレザンジュとの国境だ」


「ほんと、嫌だ、もう。ヴァーン、代わってちょうだい」


「ギリオン、おまえ、赤い異空間に閉じ込められてたのか? そこで竜のような魔物と戦っていたのか?」


 まさか、俺たちがエビルズピークで遭遇した竜と戦っていた?

 コーキと剣姫が閉じ込められた異空間にいたと?


「さっすがヴァーンだ。よく分かってんなぁ」


「答えてくれ、その閉じ込められていた場所は、赤茶けた砂岩の大地と濁った空気におおわれた閉鎖空間だったのか?」


「その通りだぜ」


「戦った敵は防御力が高く素早い竜種で、他の魔物は現れなかった?」


「おう、子分と親分竜以外見てねえわ」


 なっ、親分!?


「おまえ親分と、本体とも戦ったんだな?」


「飽きるほど戦ったぞ」


「……」


 多数存在した分体なら数体程度生き残っていてもおかしくはない。が、コーキが倒した本体は違う。生きているはずがない。


「あいつぁ、子分の何倍も強かったぜ」


 つまり、ギリオンが戦ったのは俺の知る竜とは別個体。

 同じ能力を持つ別個体がいると?


「その上、空を飛ぶし消えたりもしやがる。なもんで、結局倒せず逃げられちまった」


「……本体が、まだ無事?」


「他の誰かが倒してねえならな」


 だから、今も分体がテポレン山に現れるのか。


「まっ、普通に考えりゃ、生きてんだろうぜ。あの親分竜を殺れるやつなんて、そうそういねえしよ」


「……ああ」


 俺もそう思う。

 あの竜種と同等なら、簡単に討伐できる相手じゃないのだから。

 しかし、そうすると……。


「本体がここに現れる可能性も?」


 あのとんでもない本体が生きている。

 ここに現れる可能性も。


「当然、あんだろ」


「……」


 まずい。

 ギリオンの話が事実なら、今のテポレン山は超のつく危険地帯ってことになる。

 まだ採取も終えてないのに!


 ん?

 なら、どうして?


「おまえ、本体を倒さずどうやって異空間から出たんだ?」


「分っかんねえ。気づいたらここにいたからよ」


「……」


 コーキの話によると、あの異空間脱出には創造主である本体討伐が必要なはず。


 ということは……まさか?

 異空間外で本体が仕留められた?


「ちょっと、あんたら盛り上がり過ぎでしょ。いつまで2人で話してるつもり?」


「そうだぜ、いい加減こっちにも説明してくれ。さっきから意味わかんねえ」


「ヴァーン、わたしも聞きたいわ」


「ああ……わりい」


 3人を放置し過ぎたようだ。


「それで、異空間って何? 本当に存在するの?」


「だから、竜の出る赤い空間だつったろ」


「ギリオン、あんたはいいから」


「んでだよ?」


「ほんと、あんたはいいから。ヴァーン、ちゃんと話して」


「……分かった」


「っと、その前に、ヴァーンが何でその異空間を知ってんだ? まさか、おめえもそこに閉じ込められた経験あんのか?」


「俺は未経験だな」


「だったら、なぜ知ってるの?」


「コーキだよ。コーキが竜種の支配する赤の異空間に囚われてたんだ」


「あの人も!?」


「……どうやら、ギリオンの戯言じゃなかったみたいね」


「ああ、嘘じゃない。その異空間の創造主を倒してコーキは帰還したんだからな」


 帰還現場にいたのは俺だけだが、前後の経緯についてはシアもよく知っている。


「倒して帰還……待って、倒したんならギリオンが戦った竜種とは別じゃない?」


「おそらくは、同等の別個体だろう」


「同じような能力を持つ竜種が2体いるってこと?」


「俺はそう思ってる」


「「……」」


 沈黙するブリギッテとサージ。

 その隣ではシアが頷いている。

 ギリオンは……。


「ちっ、あんのやろう、どうやったら消える相手を倒せんだよ? あり得ねえぞ!」


 頭を抱え、つぶやいてる。


「それで、現状なんだが……ギリオンの戦った本体の生死によって危険性が大きく違ってくる」


「生存している場合、こっちにやって来るかもしれないのね?」


「確かに、そいつはやべえな」


「ヴァーン……」


「問題ねえ、オレ様がいるからよ」


「おめえ、倒せなかったんだろ」


「コーキにやれたこと、オレができねえわけねえ。今度こそ倒してやらぁ」


「……だといいわね」


「……だな」


 呆れたように頭を振るサージとブリギッテ。

 と同時に?

 2人の背後の空間が!?


「えっ?」


「おい!」


「はん、さっそく来やがったぜ」




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