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第629話  対峙


<エリシティア視点>




「「「「「何者!?」」」」」


「「「「「何者だ?」」」」」


 坂の上下で足を止め、対峙する両陣営。


「「「「「「「……」」」」」」」


「「「「「「「……」」」」」」」


 激しく睨み合うものの、お互いに相手を値踏みしたまま言葉が出てこない。

 その僅かな間にも、形容しがたい微妙な空気が漂ってくる。



「……何を? ここで何をしている?」


「我らは山を探索しているだけだ」


 そう答えるのは装備を整えた騎士風の男。

 眼下の半数がこの男同様に騎士然としているが、残りの半数は軽装の庶民にしか見えない。


「そっちこそ何を……っ! その意匠、きさまら王軍か?」


 近衛騎士の鎧に刻まれた紋章に気づいた騎士風男から警戒するような声が?


「「「何!?」」」


「「「レザンジュ王軍だと!」」」


 色めき立つ相手陣。

 その面々には敵意が溢れ出ている。憎悪が浮かんでいる。


「これは……?」


 どうしてここまで激しい感情を?


「「……」」


 ウォーライル、リリニュスともに困惑の面持ち。

 おそらくは、私も同じ表情を浮かべているのだろう。


 そんな私たちの前に、騎士風一団の中から指揮官らしき男が歩み出て来た。


「レザンジュ王軍の斥候だな?」


 抑えた声音ながら、威圧的な断定口調で尋ねてくる。


「斥候ではない」


 こちらから答えるのはウォーライル。


「王軍であることは否定しない、か」


「……」


「その王軍が、どういった理由でここにいる? 偵察以外の目的で山に上る必要などないはずだが?」


「……道に迷っただけ、迷い込んだだけだ」


「戯言を言うな!」

「馬鹿馬鹿しい」

「信じられるわけないだろ」


 相手陣営から呆れた声が上がるのも当然。今の我らの状況は、当事者でなければ信じられないようなものだから。とはいえ、これは事実。嘘など全く存在していない。


「やつらの言い訳はどうでもいい。やることは1つですよ、隊長」

「その通り!」

「やりましょう!」


「っ!?」


 この僅かな間に敵意が害意に変化した。


 まさか、ここで手を出す?

 その数で我らに敵うとでも?


「……」


 体調不完全な近衛たちとはいえ、30人程度の有象無象に後れを取るものではない。そんな騎士たちではない。彼我の兵数、力量が分からぬ輩なのか?


「アレを使えば問題ありません」

「そうです、アレです」

「決断を!」


「……」


 アレとは何だ?

 強力な攻撃用魔道具でも持っていると?

 それが強気でいられる根拠?


「「「隊長!」」」

「「「ルボルグ隊長!」」」


「……」


 まさに、一触即発の空気。


「エリシティア様、お下がりください。ここは我らだけで十分ですので」


「ウォーライル……」


 通常なら問題ない兵数、心配する必要のない相手だが。

 アレが気になってしまう。

 そう僅かに躊躇していると。


「斥候であろうとなかろうとレザンジュ王軍に違いはありません。隊長!」


「……そうだな」


 戦闘を決めた?


「エリシティア様! 皆も!」


 ならば当然、こちらも戦闘態勢に入る。

 その我らの前で。


「よし、下がれ!」


「「「「「「「はっ!」」」」」」」


 騎士風の男たちが後退して行く。

 その後ろの軽装者たちも同様に……。


「「「「「なっ?」」」」」


「「「「「何?」」」」」


 なぜだ?

 どうして退く?

 戦うのではないのか?


 想像もしていなかった相手陣の動きにこちらが戸惑う中、騎士風男たちが数十歩後退。そこで足を止め。


「構え!」


 5人の軽装者が弓のようなものをこちらに向け。


「撃てぇ!!」


 矢を放ってきた。


 シュン、シュン!

 シュン、シュン、シュン!


 飛来するのは5本。

 僅か5本の矢だ。


 この程度、前衛が盾で防げば苦もなく防ぐことができる。

 なのに、不吉な予感が?


「前衛、3歩前に! エリシティア様をお護りしろ!」


「「「「「「「はっ!」」」」」」」


 近衛騎士が前に出て盾を構える。

 そこに矢が……!?


 ドン、ドガン!


 ドカン!


「えっ!?」


 ドガン!


 ドッカーン!


 な、何だ?

 何が起こった?



「「「ぐっ……」」」


 近衛は?

 前に出た騎士たちは?


「「「「うぅ……」」」」


 立っている?

 盾は半壊し身に傷を負っているが、立っている?


 そうか。

 耐えたのだな。


 では、他の者は?


「「「「「「「……」」」」」」」

「「「「「「「……」」」」」」」


 怪我はない。

 ただし、皆が呆然と立ち尽くした状態。

 最後方のギリオンも……。



「エリシティア様!?」


 誰よりも早く動き出したのはウォーライル。


「問題ない。私は平気だ」


 私の無事を確認し一瞬だけ頬を緩めた後。


「っ! 前衛交代、中衛と交代しろ!」


 ウォーライルの号令を受け、自失していた騎士たちも動き出す。


「エリシティア様、爆散する魔道具です!」


 あの矢が魔道具。

 矢がアレだったのだな。


「後陣までお下がりください!」


「……うむ」


 私がここにいては皆の邪魔になるだけ。

 今は下がるしかない。


「リリニュス殿、防御壁構築を!」


「承知しました」


 後退する私に黙礼したリリニュスが魔法隊とともに魔法防壁を展開、構築する。

 そこに、再び。


 ドン、ドガン!


 ドカン、ドッカーン!


 魔法矢が爆散。

 が、今回は魔法壁と騎士たちの盾の防御で無事に防ぎきることができた。


 ただし、魔法壁には複数のひびが入っている。

 これでは長くはもたないだろう。


 とはいえ、魔力が残っている間は何度でも壁を作ることができる。防御に支障はない。

 問題は魔力量だ。

 いまだ回復しきっていない魔法隊の魔力がいつまでもつのか?


 爆散する矢より先に魔力が尽きたら……。





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