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第626話  敵?



 鑑定が上手く機能しない。

 今にもここに到着しようとしている追走者を調べることができない。

 驚異の速度で迫る相手の情報が人間の女性であることだけなんて。


「……」


 俺の対生物鑑定が不能だったのはこれまでで兇神エビルズマリスだけ。

 人間に関しては、全ての鑑定がほぼ完璧だった。

 それなのに……。 


 いや、これは何かの間違いかもしれない。

 だったら、よし、再鑑定を。


「……」


 駄目か。

 なら、もう一度……。


 結果は同じ。上手く機能しない。


「……」


 名前が不明。

 レベルも不明。

 ステータスもスキルも、全てが??だらけ。

 何度試しても、性別と人間であること以外分からない。


 こいつ、いったい……?




「なぜ我らを追う?」


 俺が鑑定をしている間に、正体不明の追跡者はこちらから数歩の距離に到着。

 今は足を止め、シャリエルンと俺に目を向けている。


「何が目的なのか、答えてもらおう」


「……」


 余裕のあるローブを羽織りフードまで被っているため、容姿ははっきりとは分からない。が、それでも小柄であることは明らかだ。


 まさか、幼い女性なのか?

 このような実力を持つ者が?


「我らに害をなすつもりか?」


「……」


 口を開こうともせず、ただこちらを凝視するばかり。


「害意がないのなら答えずとも良い。ここで別れるだけだ」


 そう言って歩き出そうとするシャリエルン。

 俺も彼女に続く。


 すると……っ!?


 目にも留まらぬ動きで俺たちの前に立ち塞がった。


「邪魔するのだな?」


「……」


 ここまできても沈黙のまま。


「いつまで黙っているつもりだ?」


「……」


「行く手を阻み、返答もせぬ。なら、仕方あるまい」


「……」


「覚悟してもらうぞ」


 その言葉と同時に剣を抜き払うシャリエルン。

 対する追跡者は悠々たるもの。

 抜き身の剣を前にしても、身動ぎもしない。


「ふっ」


 が、ここで口が開かれた。


「相変わらず堪え性のない奴だ」


 相変わらず?

 それは?


「私を知っている?」


「小娘の頃からな」


「……」


「シャリエルンのことはよく知っておる」


「きさま……フードを取れ」


 今まで隠していた素顔をさらすわけがない。

 そんな予想を覆し、あっさりとフードを脱いでしまった。


「……」


「……?」


 フードから出てきたのは10代と思われる少女。

 もちろん、俺の記憶にはない顔だ


「シャリエルンさん、知り合いですか?」


「……知らぬ」


 あっちは認識できているのに、シャリエルンは知らない?


「何者……名を名乗れ?」


「名乗る必要はない。お主が気付けばよいだけだ」


「……」


「それに、わしはお主よりそちらの者に興味があるのでな」


 シャリエルンではなく俺が狙いだと?


「私もあなたのことを知りませんが?」


「当たり前だ。初対面の相手を知るわけがないだろ」


「なら、どうして?」


 こちらを認識できた?

 いや、そもそも俺が誰だか分かっているのか?


「わしは知っておるからだ」


「初対面なのに、おかしいでしょ?」


 矛盾している。


「ふふ……」


 年齢に似つかわしくない不敵な顔つき。老成した口調。不遜な態度。

 とても若い少女のものとは思えない。

 まさか、彼女も壬生伊織のように?


 いや、仮にそうであっても、俺を認識できる理由にはならない。


「これ以上の言葉は不要だな」


「……」


「では、お手並み拝見といこう」


 その瞬間に空気が一変。

 恐ろしい程の魔力が彼女から漏れ始めた。


「この魔力は?」


 シャリエルンも少女の魔力に驚きを隠せていない。


「一応礼儀として発声しておこう……ファイア」


「っ!?」


 力みのない軽い発声にもかかわらず、目の前にはとんでもない大きさの炎が現出。

 その猛火が塊となってこちらへ!

 回避できる規模じゃない!


 ゴオオォォォ!!


 とはいえ、こちらも準備は万端。

 シャリエルンも俺も既に戦闘の準備を終えていたんだ。

 もちろん魔法壁もすぐに展開が可能。


「氷壁!」


「ストーンウォール!」


 ともに発声、瞬時に魔法壁を構築する。


 ドオォォン!

 ドゴォォン!


 ほぼ同時に炎塊が壁に衝突。

 何とか、間に合った。


 ただし、この炎は普通じゃない。

 中低位の火魔法程度で簡単に破られる石壁ではないのに、既にきしみ始めている。

 シャリエルンの氷壁も溶け始めている。


 ゴオォォォ!!


 火勢は増すばかり。

 これまでに経験したことのない獄炎だ。


「シャリエルンさん!」


「分かっている……氷壁!」


 こちらの問いに応えるようにシャリエルンが2枚目を発動。

 遅れて俺も。


「ストーンウォール!」


 これで2重防壁の完成だ。

 と思ったその直後。


 バリィィィン!


 ガシャーーン!


 1枚目の氷壁と石壁が崩れ去ってしまった。





*************************


<エリシティア視点>




「ギリオン、鱗の状態はどうだ? 大丈夫か?」


「おう! へい、ぅぅ……平気だ」


 この様子。

 どう見ても平気なわけがないのに、ギリオンは泣き言ひとつ漏らさない。

 それどころか、今も皆を先導するように歩いている。


「気にせず進んでくれ」


 我らを救ってくれたギリオンが苦しんでいる姿を見ても何もできない。

 私も衛生兵たちも己の力量不足を痛感するばかりだ。

 ただ、この状況でも空気が重くならないのは。


「今回はちっと長引いてるけどな、そのうち治まるからよ。さっさと麓まで下りようぜ」


 どこまでも前向きなギリオンのおかげ。

 ここでも助けられている。


「つっても、もう日が暮れちまう。どうする、姫さん?」


「……」


「オレは夜通しでも歩けるぞ」


 鱗化が治まっていない身体で、さすがにそれは無理だろ。

 が、少しの夜歩きなら問題ないのか?





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