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第619話  分断



 球体を覆う氷にできたひびから白い光が溢れ。

 そして……。


「なっ! 消えた!?」


「球までも……」


 シャリエルンと金髪魔法使いの言葉通り。

 エビルズマリスの成れの果てが平原から完全に姿を消してしまった。


「「……」」


「「……」」


 違う意味で口を閉ざす2組。

 そんな沈黙が数秒続いた後。


「ドラゴンが消え球体が現れ、その球体まで消えてしまう」


 聞き取れない程の小声で呟くのはシャリエルン。


「いったい何が起きて……?」


「団長……」


 2人ともに球体が消えた地面を呆然と見つめている。


 一方、剣姫は。


「消えたものは、どうしようもない」


 いつもの表情、いつもの声音。


「また倒すしかないだろ」


 その通り。

 次の機会を待つしかない。


「ん? アリマの足下に何かあるぞ」


 俺の足下?

 そこに目をやると、確かに何かが落ちている。

 1枚の小さな紙だ。


「やつと関係があるのか?」


 球体が消えたあとに落ちていた紙。

 消失直前までは存在していなかったのだから無関係とは思えない。

 が、これは……。


「半獣半人?」


 鳥頭人身の絵が描かれている。


「なぜ半獣半人が?」


 剣姫の目には、奇妙ながらも単なる半獣半人と映っているだろう。

 だが、俺には異なる意味を持つ。

 そう、これはトトメリウス様を描いた絵だ。


「下に書かれたこの文字も……まったく意味が分からない」


 トトメリウス様の絵の真下に書かれた複数の文字。

 いや、記号や図柄にも見える、か?


「どう思う?」


「……」


 俺のギフトを使っても読み取れない。

 鑑定でも詳細は不明。


「アリマ?」


 分からない、詳しいことは何も。

 ただ、それでも。


「エビルズマリスと関わりがないとは思えませんね」


 何がどう関係しているのか?

 エビルズマリスの出現、消失とトトメリウス様に繋がりがあるのか?


「……」


 さすがにそれはないと思うが……。


「不穏だな」


「ええ」


 簡単に無視して良いことだとは到底思えない。


「とりあえず、保管しておきましょう」


「うむ。アリマが持っていてくれ」


「分かりました」


 意味不明ながらも何らかの意味を持ちそうな紙だから、しっかり保存した方がいいだろう。



「君、アリマと言ったか?」


 収納に紙を仕舞ったところに問いかけてきたのは白金髪のシャリエルン。

 喪心状態からは立ち直ったようだ。


「ええ」


「色々と解せぬことだらけだが、今はまあよい。それより、エリシティア様はどうなっている?」


 確かに、重要なのはそっちだな。


「異界が崩壊して戻って来るのではないのか?」


「討伐後少し時間がかかりますので、もうしばらく待てば帰還されるかと」


「真であろうな?」


「私の記憶に違いがなければ」


 あの赤の世界でもエビルズマリスを倒した後、異界が崩壊するまで数分かかった記憶がある。今回も同じだと考えていいはず。


「……無事に戻られるなら良い」


 異界創造主を倒したのだから、異界から帰還はすると思うが。

 無事かどうかは分からない。


「帰還されるまで時間があるということなら、幾つか答えてもらおうか」


「……」


「まず、なぜ異界について……!?」


 疑問がシャリエルンの口の端にかかった瞬間。


「団長、あそこに!」


 前方の空間が突然歪み始め。

 そのまま縦に裂け。

 大きく開いた裂け目から……騎士姿の者たちが姿を現した。


「エリシティア様の……」


「護衛騎士隊が? 戻って来た?」


 確かに、見覚えがある者が複数いる。


「っ! エリシティア様はどこだ? 無事なのか?」


 エリシティア様、それにギリオンとヴァルターは?


「「「「「うぅ……」」」」」


「「「「「ここは??」」」」」

「「「「「平原?」」」」」


「「「「「戻って来たのか?」」」」」


 現状をよく理解できず戸惑う騎士の面々。

 が……。


「いない。エリシティア様がいないぞ!」


 ギリオンもヴァルターもいない。

 どういうことなんだ?



「コーキ殿……」


 騎士隊の中から声を掛けてきたのはサイラスさん。

 エリシティア様のもとで衛生兵を務める騎士だ。


「コーキ殿がどうして?」


「冒険者としての仕事です。それより、サイラスさん、何があったんです? エリシティア様やギリオンは?」


「分からないんです。さっきまで異界にいたはずがなぜ……?」


「エビルズマリスが創り出した異界ですね?」


「エビルズ、マリス?」


「ドラゴンのような魔物の名です」


「あっ、そうです、ドラゴンに囚われていました」


 やはり、剣姫や俺と同じような状況だったんだな。


「そのドラゴンとは何度も戦ったのですが、決着がつかないまま時間だけが過ぎて……なのに、異界が突然歪み始め……」


「気付けば、ここに戻っていたと?」


「……はい」


 崩壊の状況も同じだ。


「どうして戻れたのでしょう?」


「こちらで我々がエビルズマリスを倒したからだと思います」


「えっ? 倒した? この平原でドラゴンを?」


「ええ。それで、主を失った異界が崩れ去ったのかと」


 囚われ、解放された経緯は同じ。

 ここまではよく理解できる。

 けど、それなら、なぜ?


「異界が崩壊し騎士の皆さんが帰還されている中、なぜエリシティア様、ギリオン、ヴァルターがいないんです?」


「……」


 まさか?


「3人の身に何かあったのでは?」


 考えたくなかった最悪の想像が頭に浮かんでくる。


「ずっと戦闘続きでしたので、エリシティア様も2人もそれなりに傷を負っていますが、命に別条はないはずです」


 そうか。

 問題ないんだな。

 よかった。


「ただ、どうしてエリシティア様が戻られないのか? 近くで控えていた私は戻って来れたのに……」


「……」


「エリシティア様はどこにいるのでしょう? まだ異界に残られているのでしょうか?」


 分からない。

 サイラスさんや他の騎士たちと、エリシティア様、ギリオン、ヴァルターの違いは?

 何が……。


「サイラスさん、3人以外の全員がここに帰還していますか?」


「えっ?」


 慌てて周囲を見渡している。

 確認してなかったんだな。


「……いません! 約半数が戻ってません!」


 やはり、他にも。


「半数もいないなんて……」


「……」


 何がどうなっているのか真実は分からない。

 が、可能性なら考えることができる。


 異界の一部が崩壊を免れ、そこに取り残されているのか?

 あるいは、他の地で解放されたか?

 だとしたら、どこに?





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