表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
606/701

第602話  奇妙な?


<ギリオン視点>




 道と呼ぶにはお粗末すぎる間道を走ること半刻。

 っとに、走りづれえ。


「ヴァルター、この道で合ってんだろうなぁ?」


「ああ」


「だったら、森の先にいるってのも間違いねえよな?」


「それは……分からん」


「はあ? 皆がいねえんなら、ただの無駄足だぞ」


「……」


「森なんか抜けず街道を通ってレザンジュに入れば良かったじゃねえか」


「エリシティア様とウィル様は街道を通ってはいない。ならば、追いかける我らも同じ道を進むべきだ」


「合流できりゃ、何でもいいだろうが」


「早期合流の可能性を高めねばならん」


 可能性ってか。


「ちっ!」


 おめえもオレも白都を出てからここまで急行し、休みもせず森に入ってる。

 で、疲れた体で走りづれえ道を走ってんだぜ。

 頼むから会えねえってのだけは、よしてくれよ。


「森を抜けるまで、もう少しの辛抱だ」


「……」





 重い身体に鞭打ちながら走ることさらに半刻。

 目に入ってくんのは前も横も高木のみ。

 まだ森の中だ。

 抜け出せてねえ。


 って、おい!

 ヴァルター!


 少しの辛抱って言葉はどこいった。

 嘘だったのか?

 まさか、道に迷ったんじゃねえだろうな?


 勘弁してくれ。

 そろそろ身体も限界だっての。


「……」


 限界なのは、おめえも同じじゃねえか。

 顔色が最悪だぞ。


 はぁぁ。


「……」


 そもそもがだ。

 ここまで急ぐ必要あんのかよ?

 エリシティアが置かれてる状況はオレも少し知っちゃあいるが、今日明日でどうにかなることでもねえだろ。


 重要なのは、レザンジュに入って偽王と対峙してから。

 全てはそっからのはず。


 だってぇのに、何を思ってかヴァルターは急いでる。

 わけ分かんねえ……。




「見えてきたぞ!」


 ん?


「その先だ」


 オレの視界の先。

 そこで、木々が途切れている。


「森の端か?」


「ああ」


 そうか。

 やっと着いたか。


 現金なことに、先が見えると足にも力が戻るってもの。

 ヴァルターと共に速度を上げることも……うん?


「エリシティア様……」


 おう、間違いねえ。

 エリシティアの声が聞こえんぞ。

 無駄足じゃなかったってことだな。

 安心したぜ。


 けどよぉ。


「何だ、ありゃ?」


 急激に膨らみ始めたこの気配は?

 枝の切れ間から僅かに見えるあれは?


「……」


「おい!?」


「……魔物だ」


 エリシティアとウォーライル、他の騎士連中の姿が見えんのは想定内。

 それに加えて、想定外までいやがる。


「ドラゴンかよ?」


「……そう見えるな」


「聞いてねえ」


「言ってないからな」


 ヴァルター、てめえ。


「知ってたのか?」


「知るわけがない。僅かに気配を感じていただけだ」


 嘘だろ?

 さっきまで気配なんて感じなかったぞ。

 おめえ、コーキなみに感知が得意なのか?


 って、ん?

 んん?


 何だ、この感じ?

 身体が疼く?


「ギリオン?」


「……」


「いけるか?」


 疼いちゃあいるが。


「……おう」


 疼きなんてのは、武者震いみたいなもの。

 まったく問題ねえ。


「そうか……先ではウォーライルと数名の騎士がエリシティア様を後ろに庇いながら戦っている」


「……」


「オレたちもこのまま森を出て挟撃する。初撃でドラゴンの背に斬りつけるぞ」


 ドラゴンを前にして随分冷静じゃねえか、ヴァルター。

 けどまあ、悪かねえ。





*************************






 心は決まった。

 今は力を得るため獲物を喰らうべき。

 体力を蓄えるべきだ。

 ならば。


「グルゥオオォォ!!」


 目の前に展開された魔法障壁を一振りで破壊し、獲物たちに接近。

 美味なる獲物はすぐそこ。


 このまま喰らってやる!


「オオォォォ!!」


 貪り食ってやる!


 が!?


 何だ、この感覚は?

 魂が引きつけられるような、共鳴するような?

 奇妙で微妙な感覚??


 それだけじゃない。

 さらに。


「……」


 気配を感じる。


 これは、あの2人の傍にいた者の気配?

 流入した記憶の中にあった気配が近づいて来る?


 なら、あの2人も?

 近くにいる?


 まずい!

 今あいつらと戦って勝てるとは思えない。

 同じことが起こってしまう。


「グルゥゥ」


 首に刺さった剣の痛みが、恐怖が……。





*************************


<エリシティア視点>





「グルゥ……」


 森への退路を遮るように立ち塞がる蒼鱗の魔物。

 凶悪な四足で地を踏みしめている。


「……」


 そのバケモノと私の間には防御陣。

 ウォーライル、衛生兵のサイラス、宮廷魔術士のリリニュス、それに負傷者たちが私を護ろうとしている。

 後方では、平原に置き去りにされた騎士たちがここに駆けつけるべく疾走中だ。


 状況は芳しくない。

 ただし、最悪でもない。


 と感じていたのに。


「っ!?」


 とてもではないが、今はそう思えない。


 バケモノの様子が一変したから。

 ぼんやりとしていた雰囲気が消え、凄まじい気を発しているから。


「グルゥオオォォ!!」


 激変したバケモノが草原を蹴った。

 襲い掛かってくる!


 ガリッ!


 魔法兵が展開中の魔法障壁に振るわれるバケモノの腕、剛爪!

 たった一振りで。


 バリーーーン!!


 砕け散ってしまった。


「オオォォォ!!」


 そのまま壁の残骸を越え、ウォーライルたちの前に。


「エリシティア様、平原にお戻りください! 後ろの者どもと合流を!」


「……」


 相手は機動力にも優れたバケモノ。

 森の中ならまだしも、平原で逃げ切れるとは思えぬ。

 ならば、ここで。


「私も戦おう!」


「エリシティア様!?」


「攻撃が来るぞ! 構えよ、ウォーライル!」


「っ!」


「リリニュス、撃てるか?」


「低位でしたら」


「それで良い。私に合わせて発動してくれ。狙いは右眼だ!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ