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第584話  正体


<ヴァーンベック視点>




「ちっ! しぶてえな!」


「……ああ」


 こっちもギリギリの状態ながら、何発かあいつの首に当ててやったのに。

 まだ終わらない。

 終わりが近いようにも見えない。


「オオォォォ……」


 首に攻撃を受けると、その都度動きは鈍っている。

 それでも、倒れてはくれないんだ。


「おまえら、大丈夫か?」


「まったく問題ねえ」


「ヴァルターさんこそ、どうなんです?」


「……騙し騙しやるしかない」


 やはり、右肩の状態はかなり悪いと。


「想像していた以上に長い戦いになりそうだからな」


「……」


「今は無理に動かず勝機を窺う」


 幸い、怪物の動きは開戦当初ほどじゃない。

 なら、こっちは体力を温存し、少しずつ敵にダメージを与え勝機を窺うだけ。

 手間はかかるが、その戦いしかない、か。


「他に術は……!?」


 なっ!

 怪物の突進、体当たりだ!

 しかも、恐ろしいほどの勢い!


 動きは鈍っていたはずじゃ?


 まずい!!





************************





 レンヌ家宗主との戦闘を終え1階に下りた俺と剣姫、それにレンヌ家の面々。

 事務室で今後の対応について話をしていると。


「サヴィアリーナ様?」


「……おかしな空気ですね」


 耳元で囁きかけてきた。


「上ですか?」


「ええ」


 確かに。

 階上に奇妙な気配が生まれている。


「レンヌ家としましては……」


 とはいえ、ここで会談を止めるわけにはいかない。


「それで……」


「ですので……」


「いかがでしょう、サヴィアリーナ様?」


「……そうですね。まずは、そちらの提案を基本にして考えましょうか」


「よろしくお願いいたします」


 レンヌ家の返答の直後。

 階上の気配に変化が?

 それに、この音は?

 戦闘音?


「……」


 間違いない。

 戦闘が行われている。

 場所は、さっきまでいた上の階だ。


 面倒事はもう起こらないと思っていたのに……。


 仕方ない。

 気配感知だけじゃなく、聴力を強化して調べてみると。


「オ△◎#オォォ!!」


 人とは思えない声が響いてくる。


 まさか?

 変質したオルセー?

 倒したはずじゃ?


 それに、この複数の気配は……。


 明らかに覚えがある。


「……」


 これは、おそらく!


「アリマさん!」


 レンヌ家との折衝は後回しだ。

 今は!


「階上に向かいましょう!」


「はい!」


「話の途中に申し訳ありませんが、続きは後でお願いします」


 俺の言葉に顔を見合わせるレンヌ家の人々。

 とはいえ、彼らも階上の異常さに気付いていたのか、間を置くことなく頷きを返してくれた。


 了解の意思を確認し、階段に向け駆け出す俺と剣姫。

 強化した脚で駆ける俺の横を離れずについて来る剣姫は公爵令嬢の服装のまま。

 どうにも違和感が拭い切れない。


「……」


 まあ、彼女は普通じゃないからな。




「アリマ!」


 階段に到着すると、階上からの気配がさらに濃密に。


「オルセーの気配なのか?」


「可能性は……高いでしょうね」


 宗主が倒したはずのオルセーが動いている?

 しかも、気配を変えて?


 腑に落ちないことだらけだが、変質した気配の中にオルセーのそれを感知できる現状では、オルセーが動いていると考えた方がいい。


「……」


 階段を上るにつれて、気配感知の精度が増していく。


 もう確実だろう。

 オルセーが何らかの変化を遂げて蘇ったんだ。


 そして……。


 オルセー以上に重要な気配が存在する。

 その気配はギリオン!

 ずっと探していたギリオンが無事に動いて!


「……」


 階下でも感じていたが、ここまで来れば間違いようがない。

 確信できるぞ、あいつの存在を!


 よかった。

 本当に良かった!



「どうしたアリマ? 大丈夫か?」


「……何でもありません」


 ギリオンの気配を感知できて、つい安堵してしまうが。

 まだ安心できる状況じゃない。


 ギリオンの気配はオルセーらしき気配の近くにあるんだ。

 危険のすぐ近くに!


 そして、なぜか……。


 ギリオンの傍にはヴァーンとヴァルターの気配も感じられる。

 3人で共闘しているのか?



 っと、階上に着いたぞ。


「この階だな」


「ええ」


 目的地は濃密な気配が漂う通路の奥。


「かなり近そうだ」


「そこを曲がれば、すぐですよ」


 と返している間にも通路を曲がり、前を見ると。


「ルオ△◎#オォォ!!」


 飛び込んで来たのは、魔物のような咆哮と想像を越えた光景。


「あれが……オルセー?」


 もはや原型を留めていないオルセー。

 さらには、気配感知通りのギリオン、ヴァーン、ヴァルターの存在。


 ただ、全員が満身創痍の状態だ。


「……」


 こちらに正面を向けたオルセーらしき怪物。

 全身が血で染まっている。

 赤じゃない、真っ青な血で。


 ギリオンとヴァーンは俺に背を向けたまま。

 肩で息をしている後ろ姿は、明らかに消耗が激しい。


 ヴァルターの動きも普通じゃない。

 右肩を負傷しているようだ。


 ただし、今は距離を取って対峙している状況。

 小康状態を保っている。



「禁具を使ったとはいえ、人でなくなってしまったのか?」


「そう、かもしれません」


 鑑定で確認したところ、青い血でまみれたアレは紛れもなくオルセー本人だった。


 が、問題が1つ。

 鑑定の中に見えた兇神の雫という表示!


「……」


 兇神といえば、エビルズピークの悪意。

 エビルズピークに現れた龍のバケモノだ。

 兇神の雫という表示は、あいつの分身とほぼ同じ。


 悪意の雫という名のバケモノの分身。

 今のオルセーがそれと同じだと……。


 いったい、どうなってる?



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― 新着の感想 ―
[良い点]  化け物の正体はやはりオルセー!  コーキ達が合流したとはいえ、まだまだ油断できそうにありませんね!
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