表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
575/701

第571話  余裕?


「バシモスさん、騙されちゃいけない!」


 オルセーが目覚めている。

 縄も猿ぐつわも外して。


「その男はコルヌの犬だ!」


 どうやって外したんだ?

 バシモスが手助けしたのか?


「やはり、コルヌの手の者!」


「違います。コルヌ家もレンヌ家も、私には関係ありません。そこにいるオルセーに勾留されていただけです」


「勾留?」


「そいつが罪を犯したからですよ。おかしいことじゃない」


「……」


「不当な監禁で罪を犯したのはおまえだろ、オルセー!」


「不当だと! おまえはレイリュークに暴行したんだぞ!」


「俺は手を出していない。それに、仮に暴行があったとしても、長期の勾留と石牢内での扱いは不当そのものだ」


「虚言ばかり、よく口にできるものだな」


 それこそ、こっちのセリフだ。


「厚顔無恥も甚だしい」


 こいつ!


「そもそも、おまえは私の意識を奪っただろ」


「……」


「その上、拘束までしたあの行為。犯罪以外の何ものでもない」


 それは……。


「……私もやられたな」


「……」


「バシモスさん、捕らえましょう」


「ああ」


 バシモスとオルセーが揃って俺に向かって来る。

 背後には、剣姫。

 公爵令嬢の姿で長椅子の横に立ったまま。


「……」


 この令嬢姿で手を出すことはないだろう。

 が……。


「オルセー殿、バシモス殿?」


「イリサヴィア様、少々お待ちください」


「すぐに賊を片付けます」


「……はい」


 ふたりに対する返答に反して、俺に投げかける視線は……。


 やっていいんだな?

 倒していいんだな?

 王太子の依頼とやらは、問題ないんだな?


「……」


 了解。

 なら、戦ってやろう。

 バシモスには申し訳ない気もするが、もう既に気を遣う場面じゃない。



「バシモスさん、用心してくださいよ。あいつは手練れですので」


「分かってる」


「そうですか。ではこちらから……アイスアロー!」


 オルセーの魔法攻撃。

 これまで何度も受けてきたアイスアローだ。

 威力も速度も理解している。

 避けるのも難しいことじゃない。


「アイスアロー!」


 連続で飛来するアイスアローを避けたところにバシモスの剣撃。

 上段から振り下ろされる迫力の一撃を、これまた体捌きだけで躱しきる。


「アイスアロー!」


 3発目には剣で対応。


 バリーン!


 一撃で粉砕。


「おおぉ!」


 さらに、バシモスの剣。次いでオルセーの刺突。

 右手と正面からの剣の同時攻撃。


 なかなかの連携だが。


 ガキン!


 バシモスの剣をはね上げ、右に跳躍。

 刺突回避にも成功だ。


 連続攻撃の手を止め、距離を取るバシモスとオルセー。



「相変わらず、腕だけは確かですねぇ」


 興奮のあまり普段とは異なっていたオルセーの口調が元に戻っている。


 剣を交えた後で冷静になるとは?

 それだけ余裕があるってことか?


「……」


 いや、そんな攻撃じゃなかっただろ。

 あの剣と魔法で余裕なんて、普通じゃ考えられない。

 魔道具も宝具も今のオルセーは持っていないはずなのに?


「ですが、今回は上手くいきますかねぇ」


 どこからくるんだ、その余裕?


「……」


 まあ、いい。

 こっちはおまえたちを倒すだけ。


 まずは身体の自由を奪ってやる。


「雷撃、雷撃!」


 いつも通り詠唱を破棄して発動……しない?

 さっきまでは発動していた雷撃が?


「雷撃、雷撃!」


 連続で試みるも、紫電の顕現はなし。


「ふふ、発動できないでしょ」


 また魔道具?

 魔法発動阻害の魔道具なのか?


「ご存じの通り、魔道具ですよ」


 やはり。

 しかし、どこに魔道具があるんだ?


 バシモスが持っているのか?

 それとも、室内設置型?

 今それを発動したと?


「……」


 いいだろ。

 魔法無しで戦ってやる。

 問題などない。



「ふふ、ふふふ」


「オルセー、笑ってないで続けろ」


「……分かってますよ。アイスアロー!」


 オルセーは使える?


「アイスアロー!」


 発動阻害空間内で魔法を使えるのは、夕連亭の時と同じ。

 厄介なやつだ。


「アイスアロー!」


 アイスアロー3発。

 そこに、オルセーとバシモスの剣。

 5連撃!


 ならば、こちらも。

 剣内部に強化を施し、切れ味を増した剣で。


 シュッ、シュッ、シュッ!!


 軽い音と共に、アイスアローを切断。

 返した剣でバシモスの一撃に合わせる。


 キン!


「なっ!?」


 剣が通過した?

 バシモスの剣も切断だ!


「!?」


 オルセーには剣じゃない。

 右足の蹴りだ。

 剣撃を紙一重で躱し、カウンターで蹴りを叩き込んでやる。


 ドン!


 声もなく吹っ飛ぶオルセー。

 そのまま床を転がり静止。


「うぅぅ……」



 残るは、剣身を切断されたバシモス。


「……」


 呆然とした顔で動きを止めている。

 そんな相手を狩るのは容易いこと。


 懐に入り掌底一発。


「ぐっ!」


 再び眠りに落ちてくれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
[良い点]  またもや魔導具? 何気にオルセーも謎が多いですね。謎が明かされるのが楽しみです(๑•̀ㅂ•́)و✧
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ