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第568話  何者?


「……ぅ……」


 さっきの状態から考えて、あと数分は意識が戻らないだろうと考えていたオルセーが、もう覚醒を?


「オルセーが冒険者を雇って……。確かに、あり得ますな」


「そうでしょ」


 このふたり、奥の様子に意識は向いていない。


「ただ、手下を使わず冒険者を使うとなると」


「任務を越えた案件である可能性も?」


「……」


「もちろん、冒険者を使うことに支障などございません。任務さえこなしていただけるのなら、あとはオルセー殿の裁量次第ですから。今回の任務は無事に終えられたのですよね?」


「それは、間違いなく」


「でしたら、何の問題もありません」


 依然、ふたりは会話中。


「ぅ……」


 この声にもまだ気づいていない。

 とはいえ、猶予は僅か。

 なら、今のうちに。


「少し失礼します」


「どうしました?」


「奥のソファーに財布を落としたようですので」


 奥に行かせてくれ。


「きさま、勝手に動くな」


「バシモス殿、よいではありませんか」


「ですが」


「財布を取りに行くくらい何でもありませんよ。どうぞ、冒険者さん」


「ありがとうございます」


 よし。

 もう一度意識を奪うことができるぞ。


 ただ、ここは慎重に。

 焦りを見せないように奥に向かうと。


「ぅ……」


 床に転がったままのオルセーが今にも意識を取り戻そうとしている。

 ギリギリだったな。


 けど、これでまた時間が稼げる。

 悪いな、オルセー。


 胸に手を当て、無詠唱で微弱な雷撃を発動。

 オルセーはビクンと体を震わせ、そのまま沈黙。


 終了だ。


 さあ、時間は作った。

 ここからは、あの2人にどう対処するか?


 とりあえず、長椅子に戻って……っ!?


「きさま!!」


 バシモスがこちらを見下ろしている!


「オルセーに何を?」


 雷撃を放つ瞬間は目撃されていないはず。

 とはいえ、この状況を見られてしまったら。


「すべて、きさまの仕業か?」


「……」


 仕方ない。


「オルセー殿が倒れていたんです」


「はあ? 何を言ってる?」


「ですから、オルセー殿がここで倒れて」


「きさま、オルセーを待っていると話していたではないか! それに、この拘束は何だ?」


「目覚めるのを待ってました」


 無茶苦茶な話だよな。

 口にするのも恥ずかしいくらいだよ。

 ただ、ここは少しでも……。


「何、だと?」


「私はここでオルセー殿が目覚めるのを待っていただけです」


「……」


「待っていただけなんです」


 ロープで拘束された相手の覚醒を待つ。

 そんなでたらめが通用するとは思えないが……。

 まさか、通じてる?


「見苦しい言い訳をしおって」


 さすがに無理だよな。

 だが、もう一押し


「本当です。オルセー殿をしっかり見てください」


「……」


「こちらです」


 不信感でいっぱいという表情ながら、バシモスがオルセーの傍らに。

 俺の真横で片膝をついている。


「……」


 疑っているくせに、この行動。

 俺が力を隠しているとはいえ、油断し過ぎだろ。


「……呼吸と脈を確認ください」


 また素直に従って!

 警戒心が薄すぎる。

 余程くみし易いと考えているのか?


 まあ、いい。

 おかげで、やりやすくなった。


 悪いが、おまえにも眠ってもらうぞ。


 真横から、至近距離から、雷撃だ!


「ぐっ! きさ、ま……」


 この距離で避けることなどできるわけもない。

 バシモスは2、3度痙攣を繰り返し、意識を手放してしまった。


「……」


 床の上にはオルセーとバシモスが並ぶように横たわっている。


 公爵令嬢は長椅子に座ったまま。

 今のやり取りを見ても、まったく動じていない。


 ソファーでオルセーの姿が隠れているとはいえ、俺とバシモスのやり取りは聞いていたのに……。


 どうして平然としていられる?


「……」


 確かに、隠し持った気配は並じゃない。

 それでも、貴族家の若い令嬢だぞ。

 ほんと、何者なんだ?



「終わりましたか?」


 途方に暮れつつも長椅子に向かう俺にかける言葉も穏やかなもの。


「……ええ」


「お疲れ様です」


「……」


「どうぞ、お座りください」


 彼女も眠らせるつもりだったが……。


「驚いていますね」


「……当然ですよ」


「ふふ、そうですよね」


「……」


 彼女のこの素振り。

 まったく危険を感じていない。


 それだけ腕に自信がるのか?

 危険など存在しないと思っているのか?


「さてと、どうしましょう?」


「……」


「困りました」


 こっちのセリフだ。


「ある程度のことは想定していましたが、ここまでは考えていませんでしたから」


 想定だって?


「この事態を読んでいたのですか?」


「さあ、どうでしょうねぇ」


 わけが分からない。

 狐につままれたような気分だ。


「……」


 そうは言っても放置できる場面じゃない。

 やはり、意識を刈り取るべき?


 その前に。


「サヴィアリーナ様、あなたはいったい?」


「……」


 答える気はないんだな。

 なら、もう。


「仕方ありませんね」


 ん?

 話を?


「あなたには教えましょうか。ねっ、アリマさん」


 俺の名前を知っている!

 しかも、アリマの方を。


 この令嬢?




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― 新着の感想 ―
[良い点]  これって本人達にとったらかなり劇的な再会ですよね……こちらはニヤニヤするだけですけど(笑)
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