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第559話  迷路?



 迷路のような回廊の中、事態の深刻さを覚え始めたところに。

 前後から気配が!


 どうする?


 前も後ろも、ともに大した気配じゃない。

 凄腕の冒険者でもなければ強力な魔物でもない。


 意識を奪うことも難しくはないだろう。

 ただ、事後のことを考えると……。


 ここは、やはり避けるべきか。

 なら、今すぐ戻ってT字路を曲がれば、遭遇も回避できるはず。


 よし。

 魔力を込めた足で一気に駆けT字路へ。


 気配はまだだ。

 間に合った。


 通路を曲がり、さらに後退。

 2つの気配は?


「……」


 T字地点で合流した2つの気配が、その場に留まっている。

 こっちにやって来るのか?

 来るのなら……。


 いや、来ない。

 2つの気配がすれ違い、そのまま遠ざかっていく。


「……」


 ひとまずは、回避に成功したようだ。


 その事実に安堵を覚えてしまうが……。

 特別、状況が好転したわけでもない。


 そう。

 俺はギリオンを探すため、オルセーのもとへ向かう必要がある。

 こんな所で手間取っている時間なんてないんだ。


 オルセーの気配は依然として階上。

 3階の一角に存在している。


 そこにいる間に何とか、接触を!


「……」


 2つの気配は遠く離れたまま。

 戻って来る様子も見えない。

 これなら、さっきのT字路に戻れる。

 先に進める。


 行くぞ。





「どうなってるんだ?」


 迷路のような回廊を歩き続けること半刻。

 それでも、目の前の景色は変わらぬまま。

 狭い通路だけが、ただ延々と続いている。


 もちろん、1本道だけじゃない。

 T字路に十字路も通って来た。

 半刻も歩き、かなりの距離を進んできた。

 なのに、まったく抜け出すことができない。


「いったい……」


 感知で想像していた広さなんて、とっくに踏破している。

 その何倍も歩いているはず。


 なら、同じ通路を歩かされているのかというと。

 通路に付けた目印を再び目にすることは稀なんだ。


 つまり、新たな通路を歩き進めていることになる……。


「あり得ない」



 感知、探知で探れるのは生き物の気配のみ。

 建造物の構造は探れない。


 それでも人の点在地点から、建造物のおおよその見当はつく。

 この建物も貴族の邸宅並みの大きさだと想像していた。

 かなりの広さがあるとは考えていた。


 とはいえ、数分もあれば歩き尽くせる程度のもの。


 だというのに、半刻も新たな道を!


「……」


 感知による見込みが、まったくの見当違いだったのか?

 迷宮のように広大な空間なのか?


 それとも……。


 魔落のような空間?

 トトメリウス様の創り出した神秘の空間と同じだと?


 迷宮の創造など、人の力で可能だとは思えない。

 これこそ、あり得ないことだろ。


 ただ、ここはオルセーのいる屋敷。

 オルセーなら。

 宝具を幾つも所持するオルセーなら。


 迷宮創造の宝具を持ってることも……。


「……」


 いや、まだ決まったわけじゃない。

 だから今は確証を得るため、避けていた人たちと対面し話を聞くべき。

 事実を探るべき。


 そう思って気配を探り始めた途端。


 周りから一切の気配が消えてしまった。

 2階、3階の気配は変わらないというのに、1階だけ!


 こうなると、もう……。


 どうやって、状況を打破すればいいのか?

 手立てが思い浮かばない。

 今すぐには、何も。






*********************


<ヴァーンベック視点>




「ヴァルターさん、正面突破ですか?」


「ああ。骨董品屋で弄する策をオレは持ってない。考える時間もない。なら、真正面からいくだけだ」


 言いたいことは分かるが、それで上手くいくのか?

 どう考えても、難しいだろ。


 一緒に探ると言ったものの……。

 別行動した方がいいんじゃ?


「入るぞ!」


 ちょっと待て!

 躊躇する俺を尻目にヴァルターが店の中へ。


 ちっ!

 考えてる時間もねえ。


 幻影と呼ばれる実力者。

 剛腕の元冒険者に従ってやるよ。

 とりあえずはな。




「君、ちょっといいか?」


「お客様、何でしょう?」


「店の奥に入らせてもらうぞ」


「えっ!」


 戸惑い固まる店員を放置して、奥に足を進めるヴァルター。

 一歩遅れて俺も。


「お客様、お待ちください」


 すると、もう1人の店員が駆け寄ってきた。

 が、それも無視。

 全く足を止めないヴァルター。


「お客様!」


 おいおい。


「そちらは立ち入り禁止です!」


 大丈夫なんだろうな?


「お客様!」


「……悪いな」


 足を踏み入れたのは、小さな控室。

 ただし、さらに奥へと繋がる扉があるぞ。


「やめてください!」


 店員を歯牙にもかけず、扉に手を。


「お客様っ!!」


 ヴァルターが開け放った扉の先には狭い通路。

 何ともあやしい通路が目に入ってきた。


 迷いも見せず、足を進めるヴァルター。


「……あなたたちは、もうお客様ではありません」


 背後では、店員の声。

 前には、進み続けるヴァルター。


「……」


 こうなりゃ、付き合うしかねえ。


 と、扉が閉じていく。

 その瞬間、違和感が?






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