表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
559/701

第555話  脱出 2

多忙と疲労のあまり、誤って前話を更新してしまいました。

申し訳ありません。


とりあえず少しだけ修正して、このまま続けたいと思ます。



 異世界間移動を使っていいのか?

 俺だけ日本に戻っていいのか?

 ギリオンをひとり放置して、俺だけ安全圏に……。


 異世界間移動を使える状況になり、窮地に陥った場合どうすべき?


 ずっと俺の頭の中にあった葛藤。

 けれど、実際にその状況になったら……。


 使ってしまった。

 ほとんど無意識のうちに。

 躊躇することもなく。


「……」


 あの時、あの瞬間。

 頭は朦朧としていたし、何を考えていたかも、はっきりとは覚えていない。


 ただ、窮地を脱しようと。

 その思いだけで異世界間移動を……。



 策としては悪いものじゃないんだ。

 あのまま、石牢の前でギリオンと共に倒れた状態でまた拘束されたら、今度はどうなるか分からないのだから。


 俺ひとりで脱しても、その後にギリオンを助け出せばいい。

 冷静に考えると、最善とすら思える。


 それでも……。


 もしギリオンに何かあったら?

 もう、やり直しはできないこの状況で?



「はぁぁ」


 今こんな思いを抱けるのも、俺に時間と余裕があるから。

 だから既にやってしまったことを考えてしまう。

 考えても意味などないというのに……。


「……」


 今さら。

 今さら後悔しても仕方ないだろ。


 なら、先のことを考えるべき。


 あの石牢の外で異世界間移動を発動した俺。

 日本に戻り、そのまま自室で意識を失い、目覚めたのは約5時間後だった。


 つまり、あと7時間。

 日本時間で7時間経過すれば、また異世界間移動を使うことができる。

 石牢に戻ることができる。

 戻ってギリオンを助け、今度こそオルセーに引導を……。


「……」


 俺のレベルアップに伴い変化した2世界間の時間経過。

 現在の時間差は1/3だ。

 ということは、こちらの世界で12時間、あっちで4時間待てばいい。

 たったの4時間。


 4時間後のギリオンは……。


 おそらく、目覚めていないだろう。

 それなら大丈夫。

 問題などない。

 オルセーも手を出していないはずだ。


「……」


 頼む。

 ギリオン、無事でいてくれよ。

 時間が来たら、すぐに戻るからな。





**************************


<ヴァーンベック視点>




 俺の目の前には、くすんだ白壁の建造物。

 貴族の邸宅や大商家と比べるとかなり見劣りするものの、それなりの規模ではある。


 建物の正面には若干古びた扉と小さな看板。

 そこには骨董品店と記されている。


 骨董品店……。


 ここで間違いないのか?

 衛兵詰所から移送されたギリオンとコーキが、この建物の中に?


「……」


 白都キュベルリアの中央大通りから西に入った通り沿いに、ひっそりと佇む地味な骨董品店。

 周囲に溶け込むような色合いの壁に特徴のない造り。

 意識しなれば、前を通っても骨董品店が存在するとは気づかないほどだ。

 商店としては没個性にすぎる。


 ただし、注意して眺めてみると……。


 建物から滲み出る冷え冷えとした奇妙な何かを感じちまう。


 あやしいぜ。


「……」


 とりあえず、店に入ってみるか。


 扉をくぐり中に入ると……。


 店の中は外観からすると少し狭い空間だが、思ったよりは普通の店内だ。

 壁際や中央の空間に余裕を持って設置された棚には、骨董品らしき物が陳列されている。

 骨董品店なんだから、当たり前か。


 そんな店内には、俺以外の客が1人。

 店員は2人。


「……」


 さて、どうしたものか?


 ここは衛兵詰所でもなければ、監獄でもねえ。

 実際はどうあれ、骨董品を売る店内だ。

 冒険者が監禁されてるだろ、なんていきなり言える雰囲気じゃないな。


 もう少しあやしけりゃ、やりやすかったんだが。

 まいった……。




「お客様」


 ん?

 あっちから話しかけてきたぞ。


「何かお探しものでも?」


「いや……」


 40台に見える中肉中背の男性。

 いかにも骨董品を扱っているという風体の店員だ。


「それでは、こちらなんていかがでしょう? この壺は……」


 壺なんか、どうでもいい。


「この茶器も200年前のキュベリッツ王国で……」


 茶器にも興味はねえ。


「お客様?」


 おっと。

 店員がこっちを見つめてる。

 怪しまれているのか?


 まあ、そうだよな。

 こっちは、骨董品に全く興味を示してないんだ。

 疑われてもおかしくねえって。


 とはいえ、こんなものに興味あるようなフリも……。



「いらっしゃいませ!」


 新しい客が入って来た?

 言っちゃ悪いが、こんな地味な店に客が続けて入ってくるとは!

 ちょっと信じがたいな。


 ひょっとして、ここは骨董品店として名のある店なのか?

 そう考えれば……。


 って、待てよ。

 そもそも、この建物であってんのか?

 ホントにギリオンとコーキがいるんだろうな?


 まさか、間違った情報を掴んだんじゃ……。


 ちっと不安になってきたぜ。


「……」


 今入って来た客がこっちに近寄って来る。

 俺は目立たねえように、視線を壁に向けて大人しく立ってんのによ。


「うん?」


 何だ?


「おまえ……」


 その声につられ、客の方に目を向けると。


「……」


 こいつ、見覚えがある。

 どこで会った?


 確か……。


 そうか!

 検問所とカーンゴルムで会った大男だ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
[良い点]  コーキが戻るまでのタイムラグを上手く埋めてくれるか、ヴァーンベック! [一言]  リアル多忙でチェックが遅れてますが、応援しています!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ