第553話 強化剣 2
「眠気がきちまった」
ここでか!
「回復薬は?」
「もう、飲んでるけどよぉ」
飲んでるんだな。
なら、それで、あと少しだけ意識を保ってくれ。
「よくねえなぁ」
ギリオンが朦朧としている。
「効かねえ、ようだ、わ」
くっ!
これも、前回と同じか。
回復薬で僅かに進行を遅らせることができた麻痺と違い、眠気は回りが早かった。
睡魔を感じたと思ったら、即眠りにつくほどの早さだったんだ。
けど。
「今すぐ斬るからな、頑張れ!」
頼む。
あと、2、3分でも保ってくれよ。
「お、う」
急いで斬るぞ。
ただし、焦るとだめだ。
またミスをしてしまう。
ここは、素早く集中して……。
「うぅ」
今にも目が閉じようとしている!
「わり、い……」
「おい! ギリオン!」
「……」
「ギリオン!」
「……」
またか。
また、意識を……。
くっ!
こうなると、ギリオンが意識を取り戻すまでに数時間はかかるだろう。
なら、ここでギリオンを解放するより、先に俺が自由になるべきか。
そうだな。
まずは、俺の鎖を断ち切るべきだ。
ただ……。
今の俺は手枷、足枷での拘束、さらに鎖で繋がれた状態。
自身でこの拘束を断ち切るのは、体勢的に容易じゃないぞ。
「……」
躊躇してる時間はないな。
まずはギリオン同様、両足の間の鎖切断からだ。
僅かに足を左右に開いて……。
このまま真下に振り下ろせば何とかなるはず。
っ!
難しい。
なら、この体勢なら……。
よし、斬れる。
ガギン!
鈍い手応え。
失敗なのか?
いや!
切断には成功している!
ただ、剣の魔力が霧散して、剣身にも大きな刃毀れが。
「……」
この強化剣。
完全には魔力強化できていなかったようだ。
当然か。
内部強化法は、未完成だったんだから。
けど、3度の切断には成功している。
今はこれを続ければいい。
この剣で……は無理だな。
魔力を再充填しても、もう保たないだろう。
それなら、新しい剣を使えばいい。
刃毀れした剣を、収納の中の剣と交換して。
新しい剣に魔力を込めていく……。
「あっ!」
駄目だ。
どうしても、気が急いてしまう。
焦ると、上手く強化ができない。
時間はないが、ここはゆっくりと慎重に。
慎重に……。
「!?」
痺れ?
まずい!
俺の身体にも症状が!
回復薬は?
いや、まだ飲めない。
ここで飲むと、強化が消えてしまう。
強化完成間近なんだから、まずは強化を。
なんとか、焦りと不安を抑え。
魔力充填を……。
……。
……。
よし、できた。
なら切断、の前に回復薬だ。
一気に飲み干して……。
「……」
ギリオンの言う通り。
回復薬を飲んでも、やはり痺れが少し残っている。
この状態。
おそらく、意識が長く保つことはないだろう。
急ぐぞ!
次は、右足後ろの鎖だ。
簡単な体勢じゃない。
無理な体勢からではあるが、集中して……。
キン!
一撃で成功!
剣に問題もない。
残すは左足の鎖のみ。
この鎖を切断できれば、あとはギリオンの左足を解放し、鉄扉を破壊すればいい。
それで脱出できるし、麻痺と眠気から逃れることもできる。
さあ!
キン!
成功だ。
鎖は全て切断したぞ。
もう自由に動ける。
あとは、ギリオンの鎖を。
「っ!?」
ここで眠気が!
あと一歩なのに!
いや!
もう、やるしかない!
急げ!
ギリオンの鎖を!
キン!
よし!
焦りはあったものの、何とか切断に成功。
残すは鉄扉だけ。
眠気を抑えながら鉄扉の前へ。
まずい!
眠い!
が……一閃!
ガギッ!
くっ!
失敗だ。
けど、魔力は内部に残っている。
それなら、連続で。
ガギッ!
もう一度。
ギンッ!
もう一撃だ!
ガギーーン!!
成功?
成功したのか?
ああ、扉が開いている。
これで脱出できる。
ギリオン。
ギリオンを担いで。





