第552話 強化剣 1
オルセーが消えて、時間ができた。
運が回ってきた。
よし!
この隙に何とかしてやる!
オルセーの次の手が何なのか?
そこは気になるところだが、俺が急いで完成させれば問題ないはずだ!
「卑怯な野郎だぜ。ん? コーキ?」
「剣内部の魔力強化を完成させる。今は集中させてくれ」
「お、おう、そうだったな」
一刻も早く術式の完成を!
オルセー、頼むからすぐには戻ってくるなよ。
「……」
「……」
「……」
試行に次ぐ試行。
が!
これでも、駄目か。
もう少しで何とかなるはずなんだが……。
とにかく、今はこれを続けるのみ!
「……」
「……」
「……」
これは?
どうだ、上手くいってるか?
大丈夫!
いい感じだぞ。
これで安定すれば、成功するはず!
保ってくれよ。
このまま。
このまま……。
うん?
何だ??
空気が変わっている?
この変質は……?
「っ!」
まずい!
あの麻痺、催眠ガス?
催眠魔道具なのか?
「ギリオン!」
「ん?」
やっぱり、ギリオンは気づいていない。
「また、麻痺と眠気がくるぞ!」
「あっ?」
「おそらく、前回と同じ……」
「嘘だろ?」
「いや」
「ちっ! 今度はどうすんだ?」
「……」
前回と全く同じものなら。
防ぎようがない。
ただ、今なら剣の内部強化で!
「今から強化剣を試す!」
「コーキ、完成したのか?」
「あと一歩だ。けど、やるしかない!」
「……だな!」
「足枷から行くぞ」
「おうよ」
体内で魔力を練り。
少しずつ剣に流し込む。
これまでと違うのは、剣表面に魔力を送らないこと。
剣表に魔力が現れた途端、魔力が阻害されて雲散霧消してしまうからだ。
だから、ここは慎重に。
ゆっくり、ゆっくりと内部に送り続ける。
「……」
いいぞ。
今のところ、安定している。
7割、8割。
もうすぐ充填……。
よし!
上手くいった!
現時点で最高の強化完了だ!
この強化剣なら。
剣内部の魔力が保ってくれれば。
枷も鎖も断ち斬れるはず!
「ギリオン、足をできるだけ開いてくれ」
「おう、頼むぜ」
両足の枷は鎖で繋がっている。
まずは、その鎖の切断から始めよう。
剣身を慎重に持ち上げ。
一気に、振り下ろす。
キン!
手ごたえは悪くない。
魔力も内部に籠ったまま。
「斬れたか?」
「……ああ、成功だ!」
鎖が真っ二つに切断されている。
「おーし、ちっと楽になったぜ! 次は壁と繋がってる鎖をたのまぁ」」
「了解」
剣の強化に変わりはない、な。
まったく問題ない。
このままいけるぞ。
「コーキ!」
「どうした?」
「マズい。痺れてきたぜ!」
もう症状が!
「回復薬を飲んでくれ! その間に切断する!」
「お、おう」
収納内の回復薬には、まだ余裕がある。
問題は、痺れと眠気をどこまで抑えられるかだ。
症状が先か切断が先か。
時間の勝負になってくる。
急ぐぞ!
「……」
ギリオンの右足と壁の間の鎖に向け。
剣を一閃。
ガッ!
失敗?
しまった!
焦って集中が?
「コーキ?」
剣は、魔力は……大丈夫。
剣の強化は消えていない。
「もう一度だ。そっちの痺れはどうなってる?」
「ちっと治まったが、前と同じで少し残ってんな」
そうか。
症状が残っているなら、やはり時間がない。
「いくぞ」
急ぎながらも集中を切らさず。
慎重に一閃。
キン!
今度は成功したぞ。
「おっし! あとは、左だけだぜ」
「ああ」
また剣を持ち上げ、っと!
振り下ろせない。
ギリオンがふらついている。
「ギリオン!」
「ちっ!」
尻をついてしまった!
「……眠気だ!」
いつも拙作を読んでいただき、ありがとうございます。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ただ、今は本業多忙がどうにもならない状況になっておりまして……。
これから1週間程は本業に専念したいと思います。
13日~19日に、1、2度更新。
20日以降は通常更新。
こちら、ご理解いただければ幸いでございます。





