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第550話  元凶 2




 オルセーが生きていた?


「ええ、ありがたいことにね」


 レザンジュに入る直前の検問所で、ヴァルターさんと共闘した時。

 あの時、確かにこの手でこいつを。


 なのに、どうして?


「宝具を使ったのか?」


 バシモスと共に消えた後、宝具で蘇生を?


「ふふ、そんなこと、今さらどうでもいいでしょ」


「……」


「コーキ、こいつのこと知ってんのか?」


「……ああ」


 今回の勾留。

 ギリオンの問題だと、ずっと思っていた。

 けど、違ったようだ。


 オルセーがギリオンを狙うわけがない。

 となると、当然。


「おめえの因縁かよ」


「……悪い。お前を巻き込んでしまったな」


「けっ、んなの関係ねえぜ」


「……」


「元はと言えば、オレのせいだしな」


 そうだった。

 広場で斬りつけられたのも、レイリューク道場でのことも、すべてはギリオン絡み。

 俺は傍にいただけ。


 なら、最初の狙いはギリオンだったのか?

 その後、途中から俺に標的が変わったと?


「……」


 分からない。

 いったい、どうなってる?


 今回の騒動……。


 偶然じゃなく、巧妙に仕組まれたものなのかもしれない。


「コーキは悪かねえ。それに、元凶が目の前にいんだぜ」


 オルセーが元凶?

 それもどうなのか、怪しいものだ。


「今はこいつをやるだけ!」


「……」


「そうだろうがよ!」


「……ああ」


 その通り。

 今はそれしかない。

 ただし、この状況は簡単じゃないぞ。



「話は終わりましたか?」


 嫌らしい嗤いを顔に貼りつけたまま、オルセーがこちらを覗き込んでくる。


「愚か者の無駄話を聞いてあげるのも、なかなか辛いものですねぇ」


「うるせえ! すぐに、その耳使えねえようにしてやらぁ!」


 ガシャン!


 鎖に邪魔されながらも、オルセーに向かっていくギリオン。


 ガシャン、ガシャン!


 何度も、何度も。


「ほんと、乱暴者はこれだから困りますよ」


「ちっ! てめえ、こっち来やがれ」


 ガシャン、ガシャン!


「行くわけないでしょ。ですが、そうですねぇ……こういうのはどうです?」


 オルセー、何を?


「縮め!」


「なっ? ぐっ!」


「っ!」


 オルセーの言葉とともに足枷と壁を結ぶ鎖が縮み、そして。


 ドン!


 ギリオンと俺の足が石壁に縫い付けられてしまった!


「てめえ、どういうつもりだ!」


「うるさいあなたは色々と邪魔なのでね。そこで大人しくしていなさい」


 両足首に付けられた枷は壁に密着している。

 これじゃあ、移動なんてできない。


「くそっ!」


 上半身はまだ動けるものの、両手首にも強固な枷がかけられている。

 こうなってしまうともう、自由には動けない。


「さあ、楽しい時間の始まりですよ」


 嗤いを浮かべるオルセーの目の中に、残忍な光が。


「……何を考えている? 俺を捕えて何がしたい?」


「ふふ、時間はたっぷりありますけど。そんな話をする暇はないですねぇ」


「時間があるなら、説明しろ」


「うーん、あなた相手に油断すると痛い目に合いますので……やっぱり暇はないです」


「……」


「さて、まずは挨拶代わりに痛めつけてあげましょう。ああ、安心してください。殺しはしませんから。今はまだね」


「コーキ!」


「……」


「では、手加減して。……ファイヤーボール」


「っ!」


 至近距離から放たれた炎の玉を、上半身を振って回避。

 ファイやボールは壁に当たって霧散した。


「ふふ、無駄なことを」


「おまえ、魔法が使えるのか?」


「うん? ああ、なるほど。あなたは使えませんもんね」


 この石牢内でも魔法を使える?


「魔道具だな?」


「どうでしょ」


 夕連亭での対戦時と同様、阻害無効化の魔道具をオルセーは持っているはず。

 それを奪えれば!


「さあ、さあ、次は当てますよ。……ファイヤーボール、ファイヤーボール!」


 今度は、まともに動けない下半身に2連発!

 避けられない!


「ぐっ!」


 両太腿に直撃した!


「……」


 受けた衝撃に身を屈めてしまう。

 そこにまた。


「ファイヤーボール、ファイヤーボール!」


 2連撃。

 それが、太腿に!


「うっ……」


「コーキ!!」





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