表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
550/701

第546話  石牢 6



「うぅ!」


「ギリオン!!」


 何が起こってる?


 空気か?

 空気が問題なのか?


「コーキ……駄目だ、動けねえ」


「動けないって、どういうことだ?」


「し、痺れだ」


 身体が痺れている!

 なら、治癒魔法……は使えない!


 だったら、回復薬しか。

 収納から素早く取り出した、回復薬をギリオンの口へ。


「くっ、うぐっ……」


 よし、何とか嚥下しているな。


「うぅ……」


「どうだ? 少し楽になったか?」


「お、おう」


 効いたのか!

 良かった。


「薬のおかげで、かなり痺れも消えたぜ」


「まだ残ってるんだな?」


「ちっとな」


 痺れが完全に消えてはいない。

 なら、再発することも。


「コーキ、おめえは大丈夫なのか?」


「……ああ」


 こっちは、痺れなんて感じない。


「ちっ! オレだけかよ」


 ギリオンだけというなら、空気の問題じゃないのか?

 けど、他に思い当たることもないぞ。


「何が原因だ?」


 食べ物も俺が収納から出した保存食しか口にしていない。

 他にも何も……。


「普通に考えりゃあ、毒ガスか魔道具だと思うけどよ。コーキが平気ってんだから……。わけ分かんねえぜ」


 魔道具の可能性もあるんだな。

 いや、それにしたって、俺だけ痺れが出ない理由が分からない。


「……」


 ガスでも魔道具でも食べ物でもない。

 だったら何なんだ?


 待てよ。

 耐性の差じゃないのか?

 以前、能力開発研究所で睡眠ガスを受けた時も俺だけ平気だったぞ。


「コーキ……」


「どうした?」


 まさか、再発?

 痺れてきたのか?


「また、痺れてきたぜ」


 やっぱり!


「回復薬だ。もう一度飲んでくれ」


「わりいな」


「気にしなくていいから、早く飲め」


「おう」


 まだ軽い痺れのためか、今回は自力で飲むことができた。


「どうだ?」


「ましになったぜ」


「まだ痺れが残ってるんだな」


「……ああ」


 ということは、何度でも再発するんじゃないか。

 まずいぞ。


 けど、だからといって、今すぐ打つ手なんて思いつかない。

 まだ鉄格子を破壊する段階には至ってないんだ。


 時間遡行も……。

 吾妻たちとの戦いで使ってしまった。



「回復薬を飲めばましになんだから問題ねえ。おめえには迷惑かけっけどよ」


「薬のことは気にしなくていい」


「助かるぜ」


 薬で済むなら安いもの。

 問題はいつまでこの状況が続くか……。


「けどよぉ、おめえは平気なんだろ?」


「ああ」


 俺は依然として痺れなど感じていない。


 そうか!


 なら……。

 この痺れが命にかかわるものでないなら。

 仮にギリオンが痺れで動けなくなっても、俺さえ無事なら対処できる。


 むしろ、敵をここに誘い出せるんじゃないのか?

 こんなこと仕掛けてくるのが、ただの衛兵だとは思えない。

 裏に誰かがいるはず。

 そいつへの足掛かりになるんじゃ。


「コーキ?」


「声を落としてくれ」


「……」


「この状況、好機かもしれない」


「どういうこった?」


「敵を(おび)き寄せるんだ」


「ん? 痺れて動けねえふりをするってか?」


「ああ」


 ふりでも本当に動けなくても、どちらでも対応できる。


「次に痺れたら動けないふりをして倒れるぞ。もちろん、薬を飲んだ上でな」


「コーキもかよ?」


「当然、俺も動けないふりをする」


 敵がこっちを監視している可能性もある。

 それなら、姿を現すはず。


「悪くねえなぁ」


「災いを転じてやろうじゃないか」


「おう!」


「声落とせって」


「わりい、っと、さっそく痺れがきたぜ」


「これを飲んで横になってくれ」


「了解だ!」


 さあ、俺も痺れているふりをしないとな。


「コーキ……」


 ん?


「痺れはましになったけどよ、今度は……」


 何が?


「目を、開けて、らんねえ」


 なっ!

 睡眠効果まで!


「ギリオン、もう一度飲むんだ!」


 今にも意識を失いそうなギリオンの口元に回復薬を。


「っ……」


 口に入ったか?

 入ったよな?


「ぅぅ……」


「ギリオン?」


「……」


「おい、ふりはしないでいいから返事しろ」


「……」


「ギリオン!」


「……」


 駄目だ。

 完全に意識を失っている。


「!?」


 息はあるんだろうな?

 まさか、そんなこと!


「……」


 呼吸も脈もある。

 命に別条はない。


 ああぁ、よかった。


 ……となると。


 若干想定とは違ってしまったが、することは同じか。

 俺がふりをして、敵を誘き寄せればいい。


 問題はない!

 好機は継続中だ。


 とりあえず。


「うぅ!!」


 声を出して。

 痺れたふりをして横になる。


 このまま、しばらくは待機。

 敵を待つ。


「……」


「……」


「……」



 ん?


 ちょっと待て。

 指先がおかしいぞ。


 これは……痺れてる!?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
[良い点]  やはり耐性の差でしかない!?  しかし、自由を奪って誰がなにをしようとしているのか……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ