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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第10章  位相編
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第516話  異能の力?



 逃走を続ける吾妻の口から洩れる詠唱。

 ネイティブのような滑らかな発音に、なぜか奇妙な不快感が押し寄せてくる。

 肌が粟立ってしまう。


「The sense dominates Life……」


 一時的とはいえ、五感を全て喪失させる吾妻の異能。

 その驚異の性能は鑑定の解説を見ただけでも、容易に想像がつく。

 実際、異能を受けた古野白さんたちの体験談はとんでもないものだった。


「The sennse presides over Death……」


 ただ……。

 もし俺が五感を失ったら、どうなってしまうのか?

 対応できるのか?


 こればかりは分からない。

 身をもって経験しないと理解できるものじゃない。


「The sennse creates beyond infinite time……」


 だからといって、こんなもの。

 受けるつもりはさらさらない。


「有馬ぁ、気をつけろ!」


「ああ」


 分かってるさ。


 五感喪失なんて関係ない。

 今回も前回同様、発動前に倒してやる。


「No exception!」


 しかし、この吾妻という男。

 端麗な容姿からは想像できないほどの凄腕だな。


 異能に加え、体術も足も普通じゃない。

 逃げっぷりも、相当なものがある。


 それでも、魔力で強化した俺の足からは逃げられないぞ。

 ほら、すぐそこに。


「Known to every……っ!」


 もう腕が届く。

 右拳が!


「吾妻さん、こっちに!」


「!?」


 右拳が顔面に届く寸前。

 突然、吾妻の背後に現れた空間異能者がやつの腕を取り、そのまま……。


 消えてしまった!


「……」


 言うまでもなく、俺の右拳は空を斬りさくだけ。



「消えたの?」


「ああ、消えちまったな」


「また、元の世界に戻ったんでしょうか?」


「それは……」


 逃げ帰った?

 そうなのか?


「「「「……」」」」


 違う!


 気配だ。

 再び気配が、そこに!


「っ! 後ろ! 後ろよ!!」


「了解」


 空間異能者が何をしたのかは不明。

 鑑定でも、詳しいことは分からない。


 ただ、こいつは瞬間移動みたいなもんだろう。

 吾妻と空間異能者が20メートル先に現れたのだから。



「Known to no……」


「ちっ、間に合わねえ! 戻って来い、有馬ぁ!」


 いや、まだ何とかなる。

 最高速で駆ければ間に合う!


 魔力を纏った脚に力を入れ、全力で地面を蹴りつけ、急加速。

 一気に距離を詰め。

 そして。


「I am the flesh of senses……」


 あと数歩。


「功己ぃ!」


 大丈夫だ。

 間に合う。

 発動前に届く!


 よし、いける!


 これで、どうだぁ!


「っ!?」


 消えた?

 また、消えた。


 連続でこんなこと、可能なのか?


「……」


「兄さん、一度戻ってくれ。もう結界を張るから、今すぐに!」


 次に現れるまで数秒はかかるはず。

 そこで詠唱再開されると……厄介だな。


「有馬君!」


 武上も古野白さんも、既に武志の隣にいる。

 もちろん、幸奈もだ。


「……」


 吾妻の異能発動直前には武志のもとに集まること。

 武志の結界に守ってもらうこと。


 これは対異能の最良防御策であり、事前に決めた作戦でもある。


 なら、俺も……。


 戻った方がいいだろう。

 結界の中にいれば、五感喪失の異能にも対抗できるのだから。


「功己、戻って!」


「ああ」


 了解だ。


 気配感知を切らすことなく後退。

 武志たちのもとまで警戒を緩めず、足を進める。


「……」


 っと、来たな。

 三度目の登場だぞ。


 吾妻までは10メートル程度。

 今の俺は後退中だが、この距離なら……やれるか?


 そう思った俺の足が止まってしまう。


「……loss of……」


「だめよ! 詠唱が終わるわ!」


 もう一度吾妻に向かって駆けようとしている俺に古野白さんの声。


「急いで!!」


 詠唱が終わり?

 まずい!


 止まっていた状態から最高速で後退。


 が!


「ちっ、仕方ねえ! 武志、発動だ!」


「……結界!」


「…… five senses!!」


 武志のもとまであと数歩。

 なのに、詠唱完了。


「……」


 間に合わなかった。


「功己ぃ!」


「有馬君!」


 詠唱が終わった瞬間。

 今まで味わったことのないような感覚が……。


「くっ!」


 俺の神経をおぞましい冷気が撫でてくる。

 悪寒が走り、背筋が凍りつき。

 目の前が真っ暗に!


 そして……。






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