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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第10章  位相編
510/701

第506話  集団戦 2


<古野白楓季視点>




 空中の歪みの中から現れた吾妻が、こちらに気付いた!


「吾妻さん!」


「ああ」


 今頃気付いても、もう遅いわ。

 強化した脚で猛然と駆ける武上君が目前にいるのよ。

 避けられないでしょ。


「うおぉぉ!」


 私の放った炎弾にも劣らぬ速度で吾妻に接近した武上君の右拳、そして炎の塊が炸裂!


 バアァァン!


 やった!!


 ……と思ったのに!?


 炎弾は空間異能者が持つ大きな盾で防がれ。

 武上君の拳は吾妻が左腕でいなしている。


「危なかったですねぇ、吾妻さん」


「……」


 初撃は失敗。

 けど、これも想定していたこと。


「幸奈さん、お願い!」


「はい!」


「武上君、次の手よ」


「おう!」


 異空間に24時間も閉じ込められていた私たちの今の身体は万全じゃない。

 だから、ここは短期決戦を。

 武志君でも幸奈さんでも、利用できるものは何でも使わせてもらうわ。

 最初から全力でね!


 大きく息を吸った幸奈さん。

 その息を吐き出すように。


「止まれぇ!」


「……!?」


 僅かな時間、対象者の動きを止めるという幸奈さんの力。

 まだ能力に目覚めたばかりで、発動も安定しない幸奈さんの異能。


 その特殊な異能が!


「……」

「……」

「……」


 静まりかえる異空間。


「やったか、姉さん?」


「……分からない」


 微妙な手応えみたいだけれど、吾妻は止まっている。

 成功、したのよね?


「動けねえ敵なんてなぁ、倒しても嬉しかねえが」


「……」


「そうも言ってられねえんでな。眠ってもらうぜ!」


 吾妻に武上君が襲い掛かる。

 いくら凄腕の異能者でも、身動きが取れないなら敵じゃない。

 これで決着よ。


「なにぃ!?」


 えっ!?


 動いた!

 武上君の一撃を吾妻が躱した!

 動けないはずの吾妻が後ろに跳んで武上君の拳を!


「てめえ、動けんのかよ?」


「……」


「ってことは、失敗したのか」


 発動したように見えたのに?


「幸奈さん?」


「……ごめんなさい」


 異能は不発。

 吾妻は自分で動きを止めていただけ?


「……」


「姉さん、もう一度だ!」


「ええ!」


 そうよ。

 何度でも試せばいい。


 大きく頷いた幸奈さんが深呼吸。

 そして!


「止まれぇぇ!!」


 一度目以上の音量。

 発動は?


「……吾妻さん?」


「……大丈夫だ。問題ない」


 だめ。

 今回も効いていない!





*******************************





 ドン!

 ドカン!!


 敵異能者の放ったウォーターボールとアイスアローが防御壁に激突。


「……」


 2撃目も何とか持ち堪えたようだ。

 ただ、これじゃあ、次の攻撃は防げそうにない。

 正面を守る水壁は消滅寸前、土壁にも無数のひびが入っているのだから。


 とはいえ、左右の防御壁は万全。

 銃弾を完璧に防いでくれている。


 その射撃者たちに向けられた鷹郷さんの操風の異能も……。


「うわぁ!」

「ああぁ!」


 敵ふたりの無力化に成功。


「ウインド!」


「ぎゃあ!」


 さらなる追撃で3人目も撃破!

 素晴らしい精度だな。


 それでも、射撃手2人を逃してしまったか。


「先にそいつらを始末するんだ!」


 和見家秘書の命令で2人が向かうのは俺たちの後方。

 狙いは幸奈たち!


「鷹郷さん?」


「こっちは気にしなくていい。お前たちは幸奈さんを守れ!」


「了解!」


 幸奈の守りに入った土系異能者と水系異能者。


「サンドウォール!」

「ウォーターウォール!」


 ダン!

 ダン!


 即座に防御壁を展開して、銃弾から身を守っている。


 ダン!

 ダン!


 防壁はびくともしない。

 問題なさそうだな。



 さて、現状は……。


 鷹郷さんと俺は防御壁内に留まったまま。

 後方では、車と新たに構築した防御壁の間に身を隠す幸奈たち3人。

 全員が無傷で継戦可能。


 対する敵方は、射撃手3人が戦闘不能状態。

 残る2人が幸奈たちと対峙している。

 俺たちの目の前には、和見家秘書と2人の異能者。


 こうなると。


「有馬君、出るぞ!」


 当然、鷹郷さんも分かっている。


「了解です」


「君は残ってもいいんだぞ」


「だから、今さらですよ」


「ふっ、そうだな」


「アイスアロー!」

「ウォーターボール!」


「今だ!」


 敵の異能攻撃が正面の防御壁にぶつかる直前。

 鷹郷さんと俺は左右の壁を飛び越えて、防御壁から出撃。

 氷矢と水弾によって崩壊する防御壁を尻目に前へ駆ける。


「鷹郷さんは異能者をお願いします」


 拳銃を持つ和見家秘書の相手は俺だ。


「くそっ!」


 ダン!

 ダン!


 秘書が放った銃弾を右に跳躍して回避。


 ダン!


 3撃目の銃弾も上半身を捻って避ける。


「く、くるな!」


 ダン!

 ダン!


 至近距離から放たれた連弾。

 以前なら避けられなかったかもしれないが、今の俺なら回避可能だ。

 まっ、ギリギリだけどな。


「このバケモノめ!」


 ダン!


 最後の銃撃を躱し、手刀を秘書にプレゼント。


「うっ!」


 簡単に意識を手放してくれた。






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― 新着の感想 ―
[良い点]  流石有馬! 前世での訓練には対拳銃戦も入っていたのでしょうか。それとも単純にステータスの様ですかね?
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