第51話 フラッシュバック 1
今の映像は何なんだ?
フォルディさんともうひとりの女性は?
ユーリアと呼ばれていた。
……。
分からない。
でも、どこかで……。
うっ!
首筋から頭に悪寒が這い上がってきそうになる。
すると。
一瞬の閃光。
「ぐっ!」
目の中に光が溢れ。
そして、再び……。
――――――
テポレン山の地中。
広場にはエンノアの人々が集まっている。
ゼミアさん、スペリスさん……。
『この度は、我が孫フォルディを救ってくださり感謝いたします』
『感謝いたします』
『感謝いたします』
『いえ…………私の力が足りなかったばかりに』
心が痛い。
たまらなく痛い。
『それは違います。あれはやむを得ぬこと、そう、やむを得ぬことです』
『しかし……』
『コーキ殿が気になさることは何もありません』
――――――
『雷撃!』
これは避けられないだろ。
よし!
真正面からブラッドウルフに直撃した。
会心の一撃だ。
それでも、まだ倒れないか。
『グルゥゥゥ』
とはいえ、声に覇気がない。
かなり弱っているな。
まっ、そうじゃなきゃ困る。
さあ、これで終わりだ。
『雷撃!』
よし!
今度こそ。
ドォッスン。
ブラッドウルフが崩れるように倒れ伏した。
ふぅ~、やっと倒れたか。
タフな魔物だったな。
強めの雷撃が3発も必要なのだから。
『うそ? ブラッドウルフをひとりで倒すなんて!』
『す、すごい』
『あの魔法は何?』
『すごい……』
さてと。
俺の右前方10メートル先にいる女性は腰を抜かしているようだが、目立った傷は見当たらない。
後方にいる男性は明らかに傷を負っている。
早く手当てをしないとな。
ひとまず、男性のもとに近づき。
『傷を見せてもらえますか?』
『えっ、は、はい』
――――――
……。
いったい、何なんだ?
この生々しい映像は?
……。
リセット前に経験したものとは全く違う光景……。
どういうことなんだ。
くっ!
考えようとすると、頭痛が襲ってくる。
「痛っ」
立っていることができない。
なす術もなく地面に膝をつき、そしてまた光が溢れる。
――――――
『フォルディさん、やはり休んだ方がいいですよ』
『いえ、大丈夫です』
テポレン山の地中に張り巡らされているかのように見える地下通路。
そのチューブのような空間の中にいるフォルディさんの顔には生気が見れらない。
『では、私も一緒に戻りましょうか』
『そういう訳には……』
『フォルディ様、ここは私に任せて少し休んでください』
『……』
『ゲオさんもこう言ってますし』
『……ゲオ、頼んでいいかな』
『はい』
『分かった。コーキさん、自ら案内を申し出ておきながら、すみません』
そんな辛そうな顔で謝らないでほしい。
『いえいえ、気になさらないでください』
そんな顔をさせる原因は、こちらにあるのだから。
『ありがとうございます。では、また後ほど』
戻って行く足取りは重い。
『ここからは私ひとりでご案内いたします』
ゲオさんの顔には笑顔ひとつない。
俺の顔にも……。
――――――
光が消える。
……。
原因は俺に、とはどういうことだ?
原因……?
……。
何が?
フォルディさんはどうして……。
「くっ」
何が起こっているのか考えたいのに。
映像が消えると、頭痛が襲ってくる。
……考えられない。
何なんだ。
くそっ!
何が起こっているんだ?
……分からない。
ただ、膝に感じる砂の感覚だけが、俺に現実を伝えてくる。
そして、光が……。
フラッシュバック中の会話は『 』で表現しています。





