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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第10章  位相編
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第505話  集団戦



「和見の家が揺らぐことはない」


 和見家秘書の顔には自信が溢れている。


「誓約の破棄は異能全家門を敵に回すことを意味しますが、それでも問題はないと?」


「ふっ、文書を始末すればいいだけのこと」


「……」


「どうした?」


「和見家は、なぜサインをしたのです? ここまでするくらいなら、署名などしなければ?」


「……」


「坊城さんが承諾したから、ですね?」


「っ!」


 図星か。

 味方として呼んだ坊城老人の存在が仇になったとは皮肉なもんだ。


 しかし、あの老人の影響力はとんでもないな。

 ほんと、公権力より坊城老人ひとりの存在を重視するなんて……。

 普通に考えて、あり得ないだろ!


「とにかく、文書を渡したまえ!」


「……」


「そうすれば命だけは考えてやろう」


「断ったら?」


「もちろん、消えてもらう」


 仮に鷹郷さんたちの命を奪えたとしても、研究所が黙っていない。

 分かっているのか?


「自分の立場が理解できたかな? なら、文書を渡すんだ!」


「……」


 和見家が並外れた経済力を誇るのは周知の事実。

 とはいえ、こんな凶行をもみ消す力まで持っているというのか?

 大見得を切っているだけではなく?


「早くしろ!」


「……渡す気はありませんね」


「本気か?」


「ええ」


「後悔するぞ!」


「後悔するのは、あなたたちの方ですね」


「……その人を見下したような目。自分たちは選ばれた超越者だと考えている目だな」


「……」


「力とは異能だけではない! それをお前たち異能者に教えてやる!」


「あなたも異能者を従えているようですが?」


「黙れ! 和見家が持つ力を侮った己を悔やむがいい。撃てぇ!!」


 やはり、銃を!


 が、会話で稼いだ時間は充分なもの。

 会話中、鷹郷さんの目配せを受け取った車の後ろの異能者も準備はできているはず。


「サンドウォール!」


「ウォーターウォール!」


 ほら。

 背後から異能発動の声。


 と、ほぼ同時に。


 ダンッ!

 ダンッ!

 ダンッ!

 ダンッ!

 ダンッ!


 銃声が5つ。

 間一髪だったな。


「……」


 放たれた銃弾は、俺と鷹郷さんの前に展開された土の壁と水の壁に埋もれている。

 こちらには届いていない。


 ダンッ!

 ダンッ!

 ダンッ!

 ダンッ!

 ダンッ!


 新たに5発の銃弾が放たれるも結果は同じ。

 壁に飲み込まれていくだけ。


「……」


 俺の防御準備は必要なかったか。


「よし! 次も用意しておけよ」


「はい」

「了解」


 異能者の集団戦闘については、昨日の対異形戦を通して理解しているつもりだが……。

 それでも、この連携が取れた滑らかな動きには感嘆の念を禁じ得ない。


 拳銃を持った橘と俺が対峙した時とは大違いだな。


 まあ、俺のレベルも身体強化の熟練度も当時とはかなり違っている。

 今なら、もう少し余裕を持って戦うことができるだろう。



「くそっ!」


 おっ、敵は焦っているぞ。


「回り込め、横から撃つんだ!」


「「「「「はっ」」」」」


 和見家秘書の一声で左右に散開する射撃者たち。


「あんたらも、異能を頼む!」


「ああ」


「……」


 後ろに控えていた敵異能者たちは。


「ウォーターボール!」

「アイスアロー!」


 真正面から異能を放ってきた。


 ドン!

 ドカン!


 放たれた水弾と氷矢が轟音を立てて壁に激突。


「「鷹郷さん?」」


「……問題ない」


 防御には成功したものの、土壁には大きな亀裂が走っている。

 あと1、2撃で崩壊しそうだぞ。


「お前たちは次に備えてくれ」


「準備は完了してますよ……サンドウォール!」


「ウォーターウォール!」


 追加の防御壁が構築。

 正面ではなく、鷹郷さんと俺の左右にだ。


 これも、ほぼ同時に。


 ダンッ!

 ダンッ!


 ダンッ!

 ダンッ!

 ダンッ!


 左右から銃弾!


「……」


 問題なく壁が護ってくれた。


「ウォーターボール!」

「アイスアロー!」


 立て続けに、正面からの異能攻撃。

 左右にいた射撃者たちも俺たちの後ろに回り込もうとしている。


「ウインド!」


 そんな彼らに、防御壁の中から鷹郷さんの異能。

 操風の異能攻撃が放たれた。


「ウインド!」


 完全に乱戦状態だ!


 俺はどこまで動けばいいのか?

 やりづらいな。





*******************************


<古野白楓季視点>




 10メートル先に見える空間の歪み。

 これまでと同じものに見える。

 ということは、現れるのは有馬君ではなく吾妻たち。


「敵だろうな」


「ええ……。武上君、作戦通り一気に攻めるわよ」


「おう、任せとけ!」


「武志君も、状況によってはお願いね」


「分かってます」


 今回は武志君の結界の異能も戦闘に使わせてもらう。

 何としても吾妻を倒さないといけないのだから。


「出てくんぞ!」


「もう少し待って」


 歪みが大きくなって……裂けた!


「今よ! 炎弾!」


「うおぉぉ!!」


 空中から姿を現したのは予想通り。

 ただし、前回よりひとり少ない。

 吾妻と空間異能者のふたりだけだ。


 彼らに向かって炎弾と武上君が猛進する!!






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― 新着の感想 ―
[良い点]  どちらも大詰め! どうなるか楽しみです。  しかし、和見家の人間はやな人が多い気が(笑)
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