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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第10章  位相編
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第489話  異形



「楓季ちゃん?」


「何があったんだ?」


「だから、鷹郷さんが呼んでいるの!」


「また野良の異能者か?」


「今回は違うわ」


「ってことは、異形かよ!」


「……そうね」


「異形かぁ。でもさ、なぜボクたちなの? ベテランの皆さんは?」


「今は手が足りない状況みたい。さあ、ふたりとも早く用意して!」


「分かった。すぐ用意するからよ。1階集合でいいか?」


「ええ、玄関で待ってるわ」


 その返事を聞いて、駆け出すふたり。

 古野白さんも地下の訓練室を出ようとしている。


 当然、俺たちも後ろからついて行く。

 すると、扉に手をかけた古野白さんが振り返り。


「あなたたちは、ここで待ってて」


「いや、一緒に行くよ」


「駄目。ここから先は私たちの仕事なの。危険なの!」


「異形と戦うから危ないのかな?」


「あなた、どこまで知って……」


「特に何も。君が異形と口にしたから聞いただけだよ」


 これは本当。

 異形について詳しいことは何も知らない。

 一度遭遇したことはあるものの、生態については研究所で話を聞いたくらいだ。


「とにかく、危険だから。ふたりはここにいて」


「君も武上君も戦うんだろ?」


「それは……」


「君たち中高生が戦うというのに、黙って見てられないな」


「違う! 私たちは異能を持っているし特別な訓練も受けてるから、普通の学生とは違うの」


「普通じゃないから、戦う力があると?」


「ええ」


「そういうことなら、普通じゃない武上君に模擬戦で勝った一般人にも戦う力量があるってことになる」


「……」


「身分証明用のカードも持ってるんだし、君たち異能者と行動を共にしても問題はないと思うんだが?」


「はぁ……。有馬さん、確かにあなたの力は認めるわ。けれど、異形は人とは違うの。異能なしで戦えるなんて、とても思えない」


「大丈夫。そこは気にしなくていい」


 こっちには魔力もある。

 異形相手でも何とかなるだろう。


「そこまでして戦いたいの?」


「何が何でも戦いたい、というわけではないかな」


「どういうこと?」


 君たちのことが気になるのと、鷹郷さんに一刻も早く会いたいってことだ。


「そんなことより、急いでいるんだろ?」


「……」


「さあ、1階に行こうか」


「えっ、えっ? ちょっと!」


 躊躇している古野白さんを連れ出すように訓練室を出て階上へ向かう。

 多少強引なのは許してほしい。





 武上、里村の両少年と合流後、渋る古野白さんを説き伏せ向かった先は鷹郷さん指定の住宅街。


「おい、おい、こいつぁ、ヤバいんじゃねえか!」


「ええ、危険な状況ね」


 その住宅街に着いた途端、周囲の雰囲気が一変。

 明らかに異常な空気が流れている。


「……」


 和見家で感じた瘴気や魔落のそれとも違う。

 ぞわぞわと軽く肌が撫でられるような嫌な空気だ。


「けど、鷹郷さんたち、もう始めているわ」


「みてえだな」


 前方50メートル程度先に人影が3つ。

 鷹郷さんと異能者だろう。


 ただし、異形らしきモノの姿は見えてこない。


「武上君、急ぎましょ!」


「ああ」


「大志君、楓季ちゃん、ボクも!」


「里村は下がってな」


「でも、ここはボクの家の近くなんだ。ボクが行った方がいいよ」


「何言ってんだ。おめえの仕事は戦闘後だろ」


「武上君の言う通りよ。待機してなさい」


「……」


 記憶消去という異能は戦闘には向いてないのだから、待機は当然。

 大人しく待っていた方がいい。

 それと。


「幸奈もここで待機だ。里村君、彼女をお願いできるかな?」


「それは、まあ……」


 非戦闘員とはいえ、里村も訓練を受けた異能者。

 幸奈を守ることもできるはず。

 もちろん、何かあるようなら俺がすぐに戻って来るつもりだ。


「里村君、いいわね」


「……分かったよ。ボクはここで待機してる」


 よし。

 あとは、異形を倒すだけだな。


「功己さん?」


 ん?

 幸奈が俺の袖を掴んでいる。

 やっぱり、不安になるか。


「功己さんも、化け物と?」


「戦うかもしれないな。けど、問題はない。これまで同様、任せてくれればいい」


 さっきからずっと感じている嫌な空気は、脅威を覚える類のものじゃない。

 おそらく、異形の力は常夜の森に生息する平均的な魔物の力と同程度。

 ならば、問題はないだろう。


「……無理はしないでくださいね」


「了解」



「この先にいるのは、かなりの大物よ。やっぱり、有馬さんはやめた方がいいわ」


「大物なら、なおのこと。君たちだけに任せるわけにはいかないな」


「この兄さんの腕は間違いねえんだ。一緒に戦えばいいだろ」


「……」


「さあ、行こうぜ!」


 まだ納得していない表情の古野白さんを置いて、武上少年が歩き出した。

 もちろん、俺も後に続く。

 こうなると、古野白さんも付いて来るしかない。




「やっぱり大物だぜ」


「……そうね」


「……」


 鷹郷さんまでの距離は10メートル。

 古野白さんと武上はしっかりと異形を視認しているようだ。


 対して俺は、異形の姿をはっきりとは確認できない。

 ぼんやりと何かが存在しているような曖昧な感覚のみ。


「……」


 まあ、こういう場合の対処法は理解している。

 魔力を眼に集めればと……見えてきたぞ。


 これはまた……。

 文字通り大物。

 巨大な化け物じゃないか。



「古野白、武上、まだこっちに来るな!」


「「了解!」」


 鷹郷さんの指示で立ち止まるふたり。

 当然、俺だけが進むわけにもいかないので足を止める。


 ここで、鷹郷さんの腕を見せてもらうってことだな。





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― 新着の感想 ―
[良い点]  魔力を使っても露見カウントは大丈夫ですよね……(ガタガタ)  露見カウントは厳しいので何があっても安心できない(笑)
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