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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第10章  位相編
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第487話  異なる事実



「異能を使ってないなんて、里村の嘘だよな!」


「残念ながら、本当よ」


「っ! あり得ねえ!」


「ボクもそう思うんだけどねぇ、実際にセンサーが反応しなかったし」


「なら、センサーの故障だ。身体強化なしであんな動き、できるわけねえ」


 センサー?

 奥の部屋に異能を検出する装置があるのか?


「故障でも操作ミスでもないよ。ボクと楓季ちゃんがモニターでずっとチェックしてたんだから」


「……」


「それに、大志君の異能はちゃんと検知できたんだよね」


 今回の模擬戦では、魔力による強化はしていない。

 仮に強化していたとしても、異能じゃないんだ。

 検知できるわけもない。


「……ホントかよ?」


「うん、間違いない」


「っ……」


 両膝を地面につき、うなだれている武上少年。

 声からも力強さが消えている。


 これは……やり過ぎたかもしれないな。


「大志君、完敗を認めなきゃ」


「一般人にも体術の達人がいるってことね」


「……」


 地面に両手までついてしまった。

 そこまでのショックを……。


 相手が人並み以上の図太さを持つ武上とはいえ、今はまだ15歳の少年。

 さすがに、申し訳ない気持ちになってしまう。


 ……。


 ……。


 いや、いや。

 今はそんな感慨より里村だ。


 なぜ、里村がここにいる?


 この時代の能力開発研究所に武上と古野白さんが既に所属しているという事実だけでも驚きなのに、里村までどうして?


「……」


 俺の暮らす世界では里村は異能者じゃなかった。

 ただの大学生、普通人だった。

 それなのに、ここでは異能を持っていると……。


 今目の前にいる里村が異能者なら、この世界の里村と俺の知る里村は別人ってことになるのか?


 つまり……。


 ここは俺のいた世界とは異なる時間の流れの中に存在する世界。

 そういうことになる。


 ……。


 ……。


 鑑定だ。

 鑑定をすれば、明らかになるはず!


 ……鑑定!




里村 晴海


レベル 2

15歳 男 人間


HP   81

SP  136

STR  91

AGI  90

INT 215


<異能>


記憶消去




 記憶消去!!


 間違いない。

 異能者だ。

 この時間世界の里村は俺の知る里村じゃないんだ!


「……」


 里村の異能、記憶消去。

 対象が持つ1時間前までの記憶を消し去ることができる異能のようだ。


 エンノアの力に似ているが、里村の異能は記憶を消すだけのもの。エンノアの劣化版みたいなものか。


 レベルは2。

 異世界以上にレベルが上がりにくい日本にいながら15歳にしてレベル2とは!


 20歳の武上や古野白さんでもレベルは1だった。

 鷹郷さんでレベル2、壬生伊織でようやくレベル3。

 里村の特異さが際立っている。


「……」


 この異能で戦闘専任だとは考えがたい。

 戦闘以外でレベルを上げたとするなら、頻繁に異能を使用することでレベルを?


 まあ……。


 異能関係の任務なら一般人の記憶を消す機会も多いはずだし、レベルが上がるのも頷ける、か。




「功己さん!」


「……」


 武上少年と手合わせしている間、離れて観戦していた幸奈。

 模擬戦終了後も3人の異能者に遠慮するように、距離を取っていたんだが……。


「凄いです!」


「……何とかな」


「何とかどころじゃないですよ! その、大きな声では言えないですけど……異能者を圧倒してましたから」


「……」


「信じろと言うわけですよね。まっ、わたしは信じてましたけど」


「ん? 幸奈は心配してただろ」


 真正面から見つめてやると。


「えっ! そんなことは……」


 上気した顔を恥じらうように俯けている。

 15歳の幸奈らしい仕草だ。


「でも……」


「うん?」


「今の15歳の功己が、5年後にはこんなに強くなるんですよね」


「それは……」


 さすがに、無理だと思うぞ。

 40歳まで鍛錬して、その後異世界でレベルを上げた俺と同等になるには5年という時間じゃ少なすぎる。


「5年後にはわたしを守ってくれそうです」


 守る、か。


「ふふ、功己に守ってもらえるんだ」


「……」


「そう考えると、なんだか心が軽くなってきましたよ」


「……」


「楽しみです」


「……」


 幸奈……。


 最初の人生で俺がしなかったこと。

 できなかったこと。


 それを、この世界の俺は……。


 ……。


 ……。


 この世界の俺は、何を考えてどう行動する?

 同じ未来に進むのか?

 違う道を歩むのか?


 今の俺には想像もできないことだ。

 けれど……。


「功己さん?」


「……ああ、きっと守ってくれるさ」


 そう思う。

 そう信じたい。


「ですよね!」


「……」


 にっこりと微笑む幸奈の顔が眩し過ぎて……。

 目を逸らさずにはいられなかった。






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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり違う世界線… ということは、どういうことだー(^◇^;) うーん、ますます分からない( ̄▽ ̄;)
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