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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
482/701

第478話  侵入 2



 どうだ!

 これで、上手くいくか?


 ……。


 ……。


 体にまとわりつく奇妙な感覚が消え。

 目に入ってきたのは。


 地面以外に何もない。

 果ての見えない無限の空間……。


「……」


 よし!

 入ることができたぞ。


 しかし……。


 臭い!

 臭気と瘴気!


 異空間に移動したことによる若干の目眩と相まって、くらくらしてしまう。


「……」


 って、そんなこと気にしてる場合じゃない。


 現状は……。


 結界は無事。

 4人も結界の中に隔離したまま。

 地下室で見た状況に変わりはない。


 よかった!

 これで、一安心だ。


 となると、あとは異能者を倒せばいいだけ。


「気をつけて、有馬君!」


 古野白さん……。

 地下室からはあまりよく見えなかったが、こうして同じ空間にいるとはっきり分かる。

 かなり酷い状態じゃないか。


「古野白さん……遅くなってすみません」


 隣にいる武上も満身創痍。

 俺がもう少し早く侵入できていれば……。


 けど、もう大丈夫だ。

 ふたりとも、結界の中で休んでいてくれ。


 ここからは、俺の出番だから。


「有馬ぁ、油断すんなよ! 吾妻は身体強化と五感を奪う異能を持ってんぞ」


 複数持ち!

 しかも、五感を奪う異能だって!

 そんなものをこの異能者が使える……。


 そうか。

 古野白さんと武上が倒された原因はそれだったのか。


「……」


 これは、想像以上に厄介な異能者だぞ。


「五感を奪われる前に何とかしろよ!」


 複数持ちの異能者を相手にした戦いで、異能発動前に倒しきる。


「……」


 容易なことじゃないな……。


「大丈夫だ。五感の方は発動前に長い詠唱をすっから、そこで一撃喰らわせてやれ!」


「異能に長い詠唱?」


「ああ、かなり長い詠唱だぜ。とんだキザ野郎なんだよ、そいつぁ」


 異能者が長い詠唱を口にする姿なんて見たこともない。

 ただ、それが本当なら……。


「有馬なら、詠唱が始まってからでも十分倒せる!」


「……何とかなりそうだな」


「おうよ、問題ねえ!」


「吾妻の身体強化は高いレベルだし、五感を奪う異能は強力無比よ。本当に恐ろしいダブルだけど、有馬君が慎重に戦えば大丈夫。私もそう思うわ」


「……そうですか」


 吾妻という異能者が厄介な相手であることに変わりはない。

 ただ、こうして話を聞けたのは大きいぞ。

 知らずに戦うのとは、まったく違ってくる。


 古野白さん、武上。

 おかげで、かなり楽になったよ。


「……」


 しかし、詠唱発動の異能か。

 まるで異世界の魔法だな。

 アナログなやつもいたもんだ。


 まっ、とりあえず鑑定を。


 ……。


 ……。


 なるほど。

 アナログとはいえ、これはとんでもない。

 恐ろしい異能だよ。

 古野白さんと武上が手こずるわけだ。


 詠唱無しで使われると、危なかった……。



 っと、きたか!


 うん?

 そっちから仕掛ける気はないと?

 そういえば、武上との戦いでも守りから入っていたな。


「……」


「……」


 では、遠慮なく先制させてもらおう。

 まずは、こいつだ?


 武上より少し速度を上げた正拳。

 それを真正面から放ってやる。


「っ!」


 おお、これを避けるか。

 なら、次はこれ。


「ぐっ!」


 こいつも躱すと。

 素晴らしい反応速度だよ。


 じゃあ、もう一段上げて。

 蹴りも加えて。


「うぐっ!」


 拳は躱せたものの、蹴りは避けられなかったようだな。


「っ!」


 この蹴り、結構効くだろ?


「……」


 蹴りを受けた衝撃からか、逃げるように後ろに跳躍。

 そのまま数歩後退する吾妻。


 まっ、ここらが適正レベルってことか。




「身体強化の異能者が2人もいるとは聞いてないぞ」


「そんなの、私も知りませんでしたよ」


「伊織、お前はどうなんだ!」


「知るわけないでしょ」


 壬生少年は……動く気はない、か?


「……」


 一応、揺魂の異能対策はトトメリウス様のもとで済ませている。

 レベルアップした俺の力も以前とは比べ物にならない。

 そういうわけだから、ここで揺魂を使われても問題はないはず。


 とはいえ、壬生少年が以前と同じとは限らない。

 やはり、手を出されると面倒だな。


 なっ!?

 あいつ、ウインクしてきたぞ。


「……」


 ああ、分かったよ。

 静観するってことなんだろ。

 ひとまずは、信じてやるよ。


「ちっ! 仕方ない」


 壬生少年については、こいつを倒してからのことだな。


「全力を見せてやる」


「……」


「いくぞ!」


 おっ!

 今度はそっちから攻めると?






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― 新着の感想 ―
[良い点]  流石主人公! いい感じに無双展開を見せてくれそうですね(๑•̀ㅂ•́)و✧
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