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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
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第476話  3回戦?


<古野白楓季節視点>




「がぁぁぁ!!」


 咆哮が自身の周りの空気を切り裂き、渦巻き、異空間すら貫いていく!

 そんな錯覚に陥るほどの咆哮……。


「あぁぁぁ!!!」


「っ!」


 総毛立つ身体を抑えることができない。

 それは、幸奈さんも武志君も同じ。

 武上君すら、顔を歪めている。


「……」


 咆哮が収まり、静寂が戻った空間。

 もちろん、武志君の張った結界に問題はない。

 けれど……。


「野郎、とんでもねえ」


「……ええ」


 この感覚、すぐには治まってくれない。


 数秒にも満たない、一瞬のこと。

 そんな僅かな時間なのに、あらためて吾妻の恐ろしさを思い知ってしまう。



「動き出してるぜ」


「……」


 多少ぎこちなさは残っているものの、しっかりと手足を使えているようだ。

 ただ、その身は傷だらけ。


 そうよ、吾妻も無事じゃない!


「もう3回戦か」


「……どうかしら? 炎を何回も受けたのよ。さすがに、今すぐは戦えないでしょ」


「そうかぁ? 敵はあいつだぞ」


「吾妻でも無理よ。多分……」


「だとしたら、また消えちまうかもな」


 その可能性は低くないと思う。


「いずれにしろ、こっちは休めるわ」


「ああ……。ところで、さっきのは何だったんだ?」


 吾妻が動きを止めたのは……。


「幸奈、さん?」


 幸奈さんの声が響き渡った直後に動きを止めた吾妻。

 その声に何かがあるの?


「その、実は……」


「姉さんも異能を使えるらしい」


 えっ!?


「ホントかよ?」


 幸奈さんが異能を?

 そんなこと?


 異能が使えないから、これまで色々と問題があった。

 そう耳にしていたのに!


「僕も今聞いたばかりで信じられなかったんだけど……。結果は見ての通り」


「……」


 本当なのね。


「動きを止める異能か? そいつは、すげえ!」


「あっ、でも、まだ不完全なんです。使えない時もあるし、あの人ももう動き出しているし……」


「それでも大したもんだぜ。だよな、古野白」


「ええ!」


「古野白の炎、武志の結界、オレの拳、そこに動きを止める力が加わったんだ。次こそは、いけるぞ!」


「……」


 可能性は高まったと思う。

 でも、武上君も私も満身創痍なのよ。

 この体で、倒せるという自信までは持てないわ。


 それに……。


 傷を負っているとはいえ、吾妻には何か底知れないものを感じる。

 壬生伊織も動くかもしれない。

 こちらに害意を見せていない彼も、場合によっては……。


 まだまだ楽観できる状況じゃない。

 それは武上君も理解しているはず。


 理解していても。


「勝ったも同然だ。はは、腕が鳴るぜ」


 あなたはそういう人よね。


「……武上君、今は身体を休める時間なの。しっかり回復させなさい」


「はっ、オレならもう動けるぜ」


「いいから、休みなさい」


 あなたにも私にも、吾妻から受けた異能と打撃の影響が残っているのだから。

 次の戦いに備えて、休める時に休まないと。


「分かった、分かった」


「……」


 武上君はすっかり忘れているんでしょうね。

 時間がとっても重要だってことを。

 時間が私たちに味方してくれるかもしれないということを。


 そう。

 彼が和見家に来るはずなのよ。


 もちろん、和見の屋敷にやって来たとしても、この異空間に入ることは簡単ではないと思う。


 ただ、常識の通用しない彼なら。

 有馬君なら……。






 ドゴン!

 ドガン!


 ガン!

 ドガン!


「あいつ、もう仕掛けてきたぞ」


「……」


 火傷は痛まないの?


「あのひと、休まなくて平気なんですか?」


「……そうみたいね」


「信じられない」


 ホント、私も信じられないわ。

 恐ろしい異能を持っている上に、このタフさなんて。


 でも、これが現実。

 既に攻撃が始まっているの。



「それじゃ、3回戦といこうぜ! 準備はいいか?」


「「はい」」


「……ええ」


 こうなったら戦うしかない。


 本音を言うと、もっと休憩が欲しいけど。

 この体で戦うのは難しいと思うけれど。


 もう、戦うしか!



 ガン!

 ドガン!

 ドゴン!


 結界からは凄い音。

 吾妻の攻撃の激しさが増している。


 今回もそう長くは保たない。

 だから。


「武志君、合図と同時に解除おねがい。それと同時に、幸奈さんは異能を」


「了解!」


「頑張ります!」


「武上君は、そのあとよ」


「分かってらぁ!」


 結界を破壊される前に動く。

 こっちから先に仕掛ける作戦。


「いくわよ。5、4……」


 今にもカウントがゼロになる。

 作戦が始まる。

 まさに、寸前!


 キィーーーン!


「!?」


 奇妙な高音に、思わず声が止まってしまう。


「何だ、これ!?」


 空間に歪みが!

 私たちのいる結界と壬生弟が立っている位置の中間。

 吾妻の背後の空間が揺れている。


 刹那。

 いびつに揺れる空間に亀裂が走って……。


 そして……。


「……」

「……」

「……」

「……」



 希望が舞い降りた!





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― 新着の感想 ―
[良い点]  ついにキター! コーキが来た!  ですよね?
[一言] ようやくコーキさん登場!?(≧▽≦)
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