表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
479/701

第475話  発動



 すぐ目の前、手を伸ばせば届くような距離。

 そう思えるのに、実際は隔絶した空間。


 限りなく遠く感じてしまう。

 ただ無力感だけを感じてしまう。


 ……。


 ……。



 ただ、現状は。


 どういうわけか、敵の異能者が姿を消してしまった。

 空間内には幸奈たち4人だけ。

 一度は地に伏した古野白さんと武上も今は立ち上がっている。

 大きな問題もないように見える。


 謎の空間内に取り残され、いつ敵の襲撃があるかもしれないという状況は、もちろん予断を許さないものではあるが……。


 今この時点だけを切り取れば幸いと考えてもいい、のか?


「……」


 もし相手の異能者が攻撃を続けていたら、4人とも無事では済まなかったはず。

 命も危なかったかもしれない。


 やはり、幸運なんだろうな。


 とはいえ……。


 敵はどうして4人を残して消えたんだ?

 余裕があるってことか?

 それとも、他の思惑がある?

 あるいは単なる軽視か油断?


 ほんと、何を考えているんだか……。


「……」


 まあ、今が好機であることに違いはない。


 とにかく!

 まずはこの謎空間に入ることだ!





 無駄な物などほとんど置かれていない壬生家の地下室。

 侵入の手段については、この部屋に存在する媒介物が鍵となる。

 壬生伊織の言葉を信用するなら、そういうことになるのだが……。


 ……。


 ……。


 あやしいのは室内に置かれたソファー、テーブル、そしてテーブル上の雑貨。

 というか、これ以外に鍵になりそうなものを見つけることができない。


 数本のペン。

 メモ帳。

 ライト。

 時計。


 ごく一般的な物にしか見えない雑貨類。

 これらを調べるしかないか。


 ……。


 ……。


 結果は想像通り。

 異空間に繋がる何かを見つけることなんてできなかった。


「……まいった」


 本当に見当がつかない。

 いったい、どうすれば侵入できるんだ?


 正直、途方に暮れてしまう。


 はぁ……。

 この雑貨類のどれかに鍵があるなら……。


 ん、待てよ!


 そうか!

 そういうことか!

 なら、こうすれば……。




「ふぅぅ」


 まずは手掛かりのようなものを見つけることができ、思わず安堵の息が漏れてしまう。

 僅かながら肩の力も抜けてしまう。


 やっと先が見えてきたな。


 それで、今の空間内はどうなって……!?


 戦っている!?

 古野白さんと武上が異能者と!


 俺が雑貨に集中している間に、再び敵の異能者が現れたのか?


「っ!」


 武上の動きが悪い。

 押されている!


 まずい、まずいぞ!


 なっ!?


 敵の一撃が武上に入ってしまった!

 古野白さんにも!




**********************


<古野白楓季視点>




 吾妻の手が振り下ろされる。

 その寸前に発せられた幸奈さんの叫び声。

 すると、不思議な圧力のようなものが押し寄せ……。


 吾妻の手が止まった!?


 いえ、攻撃が止まったどころじゃないわ。

 吾妻が完全に動きを止めている。

 私に振り下ろしかけた手もそのままに、静止している。


「がっ!??」


 うめき声を上げて震える吾妻。

 これは、何?


「古野白、何をしたんだ?」


「……何もしてないわ。吾妻が勝手に止まっただけ」


「何だと?」


 そんな顔されても、私も分からないわよ。


「ぐがが……」


 こんな状況。

 意味が分からない。


 分からないけど、助かった。

 武上君も私も吾妻の一撃を受けて、まともに動けない状態だったから。


 と!


「がぁぁ!!!」


 凄まじい咆哮!

 吾妻の周りの空気が裂ける!


「古野白さん、武上君、こっちに! 早くこっちに!」


 幸奈さん?


「こっちに来てください!」


「幸奈さん、どういうこと?」


「その異能者はすぐに動き出します。その前に早くこちらへ!」


 変転する状況に頭がついていかない。

 けど、今なら足を動かすことくらいはできる。


「古野白、行くぞ!」


「……ええ」


 できれば、吾妻に一撃与えたいところ。

 でも、既に静止状態から脱し始めた吾妻は危険だ。

 今は幸奈さんを信じて!


「……」



 武上君とともに足を引きずるようにして駆け、幸奈さんのもとに到着。


「武志、結界をお願い」


 もう結界を張れるだけの時間が経過したの?


「了解」


 この状況での結界はありがたい。

 ほんとに助かる。

 ただ。


「武志君、ちょっと待って」


 結界に入る前に一撃くらいは与えないと。

 問題は今の私にできるかどうか?


 集中して……。


「……炎弾!」


 よし!

 何とか発動できた!


 生み出した炎の弾は、いつもより威力も速度も落ちたもの。

 それでも、一直線に吾妻に向かって。


「ぐっ!」


 着弾。

 胸をとらえたわ!


 低威力の炎弾でも胸に受けたら効くはずよ。


「古野白さん、さすがです! さあ、こちらへ」


「ええ」


 今はとりあえず結界の中で回復を……。




「ぐぐ……がっ!!」


 武志君が結界を発動した直後。

 吾妻から二度目の咆哮。

 空間を揺らすほどの強烈な咆哮が上がった。


 そして……。


 吾妻が動き出す。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
[良い点]  幸奈が家政だ時間でついに……といった感じでしょうか。  コーキには今までの分、暴れて貰いたいものです(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ