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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
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第472話  再戦


<古野白楓季視点>




 ドン!

 ドゴン!


「……」


 ガン!

 ドガン!


 聞こえる?


「……」


 まだ微かなものだけど、確かに!


 それに、見える!

 手足の感触も!


「……武上君、聞こえてる!」


「ああ、目も見えてきたぜ」


 武上君も!


 異能の効力が切れてきた。

 やっと戻ってきたんだ。


「怪我はないか、古野白」


「……大丈夫よ。そっちはどう?」


「問題ねえな」


 私にも武上君にも大きな傷がない?

 本当に?

 敵は、倒れている私たちに何もしなかったの?


「嘗められたもんだぜ」


「……」


 吾妻は、私たちのことなんて眼中にない。

 自分の異能に絶対の自信があると。


 ……。


 ……。




「古野白さん、武上君! 見えるんですか!」


「……ええ。まだ少し霞んでいるけれど、これなら何とかなりそうよ」


「耳も聞こえるんですね!」


「そう、ね」


「よかったぁ!」


「……」


 これ?


「ほんとに、よかったです!」


 この感じ……。


 やっぱり、あなただったのね。

 私を救ってくれたのは。



「……心配かけて、ごめんなさい」


「そんなこと!」


「幸奈さん、ありがとう。感謝しているわ」


 あなたがいなければ、どうなっていたことか。

 本当に感謝している。


 でも……。


 あなたたちに守られるなんて、護衛失格ね。

 武上君も同じ思いでしょ。


「武志、助かったぜ。で、今の状況は?」


「見ての通り、結界で防御中ですよ」


「しばらくは保ちそうか?」


「余裕です」


「なら、ここまで何があったか教えてくれ」


「分かりました。ふたりが倒れたあと………………」


「……」


「……」






「武志君、ありがと。よく理解できたわ」


「いえ……」


「けどよ、どうして吾妻は一度消えたんだ?」


「分かりません。ただ、こうして戻ってきた以上は」


「ああ、そうだ」


「……」


「やるしかねえ!」


「……体は平気なんですか?」


「まったく問題ねえな」


「……」


 今はもう全快に近い状態まで回復している。

 特に異常もない。

 これなら、普通に戦うこともできる。


 ただし、五感を奪う吾妻の異能が問題だ。

 ここで有効な作戦を考えないと!


 それなのに……。


 ピシッ!


 結界表面から響く不快な音に、恐怖が蘇ってくる。

 身体が強張ってしまう。


 バリーーン!!


 崩壊……。


「……」



 思考が止まり足も止まっている私と違い、武上君は……。


「古野白ぉ!」


「……」


「いっくぞ!」


 既に駆け出している。


「ええ……」


 時間がない。


 考えている時間も、怯えてる暇も。

 今はもう戦うしか!


「っ!」


 動きなさい!


 恐怖ですくむ身体を叱咤し、足を前へ。

 前へ、前へ!


「発動前に叩いてやらぁ!」


 武上君は、あっという間に吾妻の目前。

 私も早く!




「ほう。動けるか」


「動けるだけじゃねえぞ! 喰らいやがれ!」


「……」


 対峙する間もなく、戦闘が始まった。


「だぁぁ!!」


「……」


 まずは武上君の先制攻撃。

 それを回避する吾妻。


「うりゃあ!」


「たぁ!」


「だぁぁ!!」


 武上君は止まることなく猛攻を続けている。

 五感喪失の異能を使わせないつもりなんだわ。


 けど、攻撃の全てが躱されている。

 吾妻の体に触れることができない。


「ちっ! 逃げてばかりいねえで、攻撃してきやがれ!」


「……」



 守りに徹している吾妻の防御を崩すのは簡単なことじゃない。


 ただ、今回は私もいる!

 武上君が何と言おうと、炎を使わせてもらうわよ!


「……」


 空間異能者の目はふたりの攻防に釘付け。

 壬生弟は……!?


 こちらを見て笑みを浮かべている。

 笑顔で私を促しているようにも見える。


 動く気配もない。


「……」


 ほんと、良く分からない少年。

 気味が悪い……。


 それでも!

 ここで動かないのなら、私が動くだけ。


「……」


 吾妻に狙いを悟られないよう、さりげなく。


「……」


 静かに歩を進め。

 ゆっくりと吾妻の後ろに回り込み。

 狙いを定めて……。


「炎弾!」


 この距離で背後からの一撃。

 いくらあなたでも避けられないでしょ。


 炎の弾を、しかと味わいなさい!


「!?」


 避けられた!

 直撃寸前、吾妻が上半身を逸らして、紙一重のところで躱しきった。


 どうして?

 こっちを見てもいなかったのに?


「っ!」


 それなら、これでどう


「炎弾!」


「炎弾!」


「炎弾!」


 三連弾からの。


「炎舞!」





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