第472話 再戦
<古野白楓季視点>
ドン!
ドゴン!
「……」
ガン!
ドガン!
聞こえる?
「……」
まだ微かなものだけど、確かに!
それに、見える!
手足の感触も!
「……武上君、聞こえてる!」
「ああ、目も見えてきたぜ」
武上君も!
異能の効力が切れてきた。
やっと戻ってきたんだ。
「怪我はないか、古野白」
「……大丈夫よ。そっちはどう?」
「問題ねえな」
私にも武上君にも大きな傷がない?
本当に?
敵は、倒れている私たちに何もしなかったの?
「嘗められたもんだぜ」
「……」
吾妻は、私たちのことなんて眼中にない。
自分の異能に絶対の自信があると。
……。
……。
「古野白さん、武上君! 見えるんですか!」
「……ええ。まだ少し霞んでいるけれど、これなら何とかなりそうよ」
「耳も聞こえるんですね!」
「そう、ね」
「よかったぁ!」
「……」
これ?
「ほんとに、よかったです!」
この感じ……。
やっぱり、あなただったのね。
私を救ってくれたのは。
「……心配かけて、ごめんなさい」
「そんなこと!」
「幸奈さん、ありがとう。感謝しているわ」
あなたがいなければ、どうなっていたことか。
本当に感謝している。
でも……。
あなたたちに守られるなんて、護衛失格ね。
武上君も同じ思いでしょ。
「武志、助かったぜ。で、今の状況は?」
「見ての通り、結界で防御中ですよ」
「しばらくは保ちそうか?」
「余裕です」
「なら、ここまで何があったか教えてくれ」
「分かりました。ふたりが倒れたあと………………」
「……」
「……」
「武志君、ありがと。よく理解できたわ」
「いえ……」
「けどよ、どうして吾妻は一度消えたんだ?」
「分かりません。ただ、こうして戻ってきた以上は」
「ああ、そうだ」
「……」
「やるしかねえ!」
「……体は平気なんですか?」
「まったく問題ねえな」
「……」
今はもう全快に近い状態まで回復している。
特に異常もない。
これなら、普通に戦うこともできる。
ただし、五感を奪う吾妻の異能が問題だ。
ここで有効な作戦を考えないと!
それなのに……。
ピシッ!
結界表面から響く不快な音に、恐怖が蘇ってくる。
身体が強張ってしまう。
バリーーン!!
崩壊……。
「……」
思考が止まり足も止まっている私と違い、武上君は……。
「古野白ぉ!」
「……」
「いっくぞ!」
既に駆け出している。
「ええ……」
時間がない。
考えている時間も、怯えてる暇も。
今はもう戦うしか!
「っ!」
動きなさい!
恐怖ですくむ身体を叱咤し、足を前へ。
前へ、前へ!
「発動前に叩いてやらぁ!」
武上君は、あっという間に吾妻の目前。
私も早く!
「ほう。動けるか」
「動けるだけじゃねえぞ! 喰らいやがれ!」
「……」
対峙する間もなく、戦闘が始まった。
「だぁぁ!!」
「……」
まずは武上君の先制攻撃。
それを回避する吾妻。
「うりゃあ!」
「たぁ!」
「だぁぁ!!」
武上君は止まることなく猛攻を続けている。
五感喪失の異能を使わせないつもりなんだわ。
けど、攻撃の全てが躱されている。
吾妻の体に触れることができない。
「ちっ! 逃げてばかりいねえで、攻撃してきやがれ!」
「……」
守りに徹している吾妻の防御を崩すのは簡単なことじゃない。
ただ、今回は私もいる!
武上君が何と言おうと、炎を使わせてもらうわよ!
「……」
空間異能者の目はふたりの攻防に釘付け。
壬生弟は……!?
こちらを見て笑みを浮かべている。
笑顔で私を促しているようにも見える。
動く気配もない。
「……」
ほんと、良く分からない少年。
気味が悪い……。
それでも!
ここで動かないのなら、私が動くだけ。
「……」
吾妻に狙いを悟られないよう、さりげなく。
「……」
静かに歩を進め。
ゆっくりと吾妻の後ろに回り込み。
狙いを定めて……。
「炎弾!」
この距離で背後からの一撃。
いくらあなたでも避けられないでしょ。
炎の弾を、しかと味わいなさい!
「!?」
避けられた!
直撃寸前、吾妻が上半身を逸らして、紙一重のところで躱しきった。
どうして?
こっちを見てもいなかったのに?
「っ!」
それなら、これでどう
「炎弾!」
「炎弾!」
「炎弾!」
三連弾からの。
「炎舞!」





