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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
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第471話  六感?


<古野白楓季視点>




 確かに感じるこの気配。


「幸奈さんなの?」


『っ! 良かった! 喋れるんですね』


 腕を伸ばして、幸奈さんに触れて……いるか分かるわけもないか。


『体も動くんですね!』


 でも、そこに幸奈さんがいる。

 きっといる。

 そう思えるだけで、失いかけていた自分を取り戻すことが……っ!?


「幸奈さん、離れて! 敵がいるのよ!」


 そうよ!

 近くに吾妻がいる。

 幸奈さんに危険が!


『……』


「早く離れて!」


 っ!


 幸奈さんの気配が消えない。

 私の声が聞こえないの!


 それとも、私の錯覚?

 そこにいない?


『……大丈夫です』


 違う。

 幸奈さんは、まだ傍にいる!

 どうして?


「……吾妻は?」


『もういません』


「吾妻と他の異能者は?」


『ですから、もういません』


「幸奈さん、大丈夫? 大丈夫なの?」


『……』


「怪我してない? 武志君は?」


『まさか……聞こえないんですか!?』


 もちろん、声なんて聞こえない。

 ただ、この感じは……。


 幸奈さんは、危険を感じていない?


『見えないんですか!』


「安全なのね?」


『……』


 何が起こっているのか分からない。

 吾妻が考えていることも理解できない。

 でも、危険がないのなら……現状を伝えないと。


「感覚を、五感を失っているから……」


『えっ!?』


「……」


 幸奈さんが私の声を聞いているのか?

 会話が成り立っているのかどうか?

 全てが不明な中。

 今は一方的に話すしか……。


「……喋ることはできるのだけれど、幸奈さんの声は聞こえない。姿も見えない。触れても感じることができないの」


『そんな!』


「幸奈さんは平気なのよね? もし危険があるなら、自分のことだけ考えて!」


『古野白さん……』


「私は大丈夫。異能の効力が切れれば元に戻るはずだから」


 きっと、すぐに五感は回復する。

 吾妻が異能を使わないのなら、大丈夫。


 でも、異能を使わないなんて?

 この状況で安全だなんて?


 やっぱり、信じられない。

 いったい、どういうことなの?


「……」


 まったく……。

 見当もつかないわよ。





**********************


<和見幸奈視点>




「古野白さんと武上君、敵の異能で五感を失っているみたい」


「うん。五感を全て奪う異能か……」


 そんな異能、考えたこともなかった。


「どうすればいいと思う?」


「待つしかないよ。異能の効力なんて、そう長くは続かないはずだし」


「敵が戻ってきたら?」


「僕が結界で守る」


「……」


「姉さん、ごめん。他にできることがないんだ」


「武志は何も悪くないわ!」


 謝らなきゃいけないのは、わたしの方。


「でも、僕に攻撃手段があれば……」


「凄い結界を使えるじゃない! こうして無事でいられるのは、武志のおかげなのよ。本当に感謝してるの」


 心からそう思う。

 だから、そんな顔しないで。


「姉さん……」


「安心して! わたしも頑張るから」


「えっ? 頑張るって、何を?」


「敵と戦うわ!」


「やめてくれよ。危ないだけだって」


「大丈夫。姉を信じなさい」


「それは無理な相談だね」


 良かった。

 いつもの武志に戻ってくれた。


「姉さんは、結界の中で大人しくしてればいいんだからさ」


「ありがと」


「じゃあ、僕は結界の準備をするから」


「うん、お願い」


 発動までに数分はかかるらしい結界。

 それを張るため、集中を始めた武志。


「……」


 結界さえあれば、古野白さんと武上君を守ることができる。

 敵が現れても、しばらくは何とかなる。


 でも、その後は?

 この空間を脱出するためには敵を倒さないといけないのよ。


 あの異能者を倒すには、どうすれば?

 やっぱり、わたしの異能で敵を止めるしか……。


 ……。


 ……。


「よし!」


 武志の結界が完成したみたい。

 これで、ひとまずは安心だ。


「姉さん!!」


 ひとつ安堵の息を吐いたわたしの目の前。

 空間が僅かに歪んでいる。


「来たわね」


「ああ、あいつらだ」


 敵が再びここに……。

 現れた!


「今回は3人だけか」


 さっきより2人減っている。

 壬生がいない!


 今回現れた異能者はさっきの2人と、あと1人は……ベースボールキャップを被った少年。


 この少年……セレスさんの記憶の中に存在している。

 壬生の弟だ。


 壬生家の者でありながら、こちらに害意を向けていない奇妙な少年……。




「やつら、また結界を張ってますよ」


「破壊すればいい」


「まあ、吾妻さんならすぐですよね」


「……」


「では、お願いします」


「ああ」


 古野白さんと武上君を倒した異能者が近づいてくる。

 相変わらずの無表情でゆっくりと。


 そして……。


 攻撃が始まった。




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