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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
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第467話  攻防 6


<古野白楓季視点>




 躱された拳を左に回し、首を絞めようと迫る吾妻の腕。

 武上君も反応しているけど、間に合わない。


 やられる!


 思わず駆け出した私の目に入ってきたのは……頭を突き出す武上君?


「だっ!」


 バシッ!


 えっ?

 前頭が吾妻の右腕に激突……。


 これは、頭突き?

 防御じゃなく、攻撃?


 頭突きで吾妻の右腕を叩き落としたの?


「……」


 想定外の攻撃に私の足が止まってしまう。

 それは吾妻も同じだったよう。


 その僅かな隙を逃さず、重心を整える武上君。

 高速で右の下段蹴りを相手の左脚へ。


 吾妻は右ストレートから変化させた右フックの体勢を戻せていない。

 重心は右に残った状態。

 回避は困難。


 必然。


 バシィィィ!!


 下段蹴りが吾妻の左脚をとらえた!


「っ!」


 吾妻の表情に変化が現れている!

 浮かぶのは痛苦、それとも驚愕?


 そんなこと、武上君は気にもかけていない。

 ただ先へ。

 次の攻撃へ。


「おりゃあ!!」


 左のストレート!

 避けられてしまった。


 右のフック!

 躱された。


 左の中段蹴り。

 これも駄目。


 流れるような三連撃を華麗にさばく吾妻。

 脚に蹴りを受け、腹部も傷んでいるはずなのに、防御に陰りは見えない。

 むしろ動きが良くなっている。


 いくら身体強化しているとはいえ、武上君の筋肉質の体に比べたら数段見劣りする細い体。その体で武上君にまったく力負けしないなんて……。


 強化の質が高い。

 そういうことなの?


 ……。


 ……。


 っと!

 ふたりの攻防はまだ続いている。



「だぁ!!」


「っ!」


 おそらくは、ふたりとも最大の出力。

 私の目じゃ、把握しきれないレベルの攻防。


「……」


 あらかじめ決められた殺陣のように、美しい舞踊のように、拳と脚が重なっていく。


「……」


 皆の意識がふたりの戦いに吸い寄せられていく。

 時間も空間も集約される。

 そんな攻防。

 終わりが見えない攻防。


 ……。


 ……。


 ……。


 でも、永遠に続く戦いなど存在はしない。



「どりゃあ!!」


「っ!」


 蹴りを躱しながら武上君の懐に入り、身を屈め軸足に手刀を繰り出す吾妻!

 武上君は避けられない。

 踏ん張り切れない。


「ちっ!!」


 手刀を受けバランスを崩した武上君の胸に、さらなる一撃!

 吾妻の掌底が襲い掛かって!


「危なっ……!」


 バァーン!


 入ってしまった。

 掌底が武上君の胸に……。


「ぐぉぉぉ!!」


 けど、倒れない。


 すごい!!


 凄まじい気合いを全身から発し、掌底を放った吾妻の腕を両手で掴み取っている!


「おおぉぉぉ!!」


 力任せに吾妻の腕を持ち上げ、反転。

 その体を背負うようにして担ぎ上げ!

 投げ飛ばした!?


 異空間を切り裂く勢いで飛んでいく吾妻。

 放物線を描き、数メートル先に落下……。


 じゃない。

 着地だ!


 地面寸前で体勢を入れ替えた吾妻が、両足で見事に着地している!


「武上君!」


 もう駆け出して?

 脚と胸は平気なの?


 武上君を追いかけ、私も吾妻の近くへ。



「吾妻さん、そろそろ時間です」


「……ここまでか」


 棒立ちに戻っている吾妻。

 あのぞっとするような無表情を張り付けて、無造作に立っている。


 そこに武上君が急接近。


「終わりだぁぁ!!」


 放つのは助走の勢いを乗せた右拳。


 決まる!

 今度こそ決定打になる!


 そう思いたいのに、この不安は?


「……loss of five Senses」


「!?」


「!?」


 なに??


「っ!」


「あっ!」


 突然のことに、駆けていた足が絡まり倒れ込んでしまう。


「……」


「……」


 目が見えない。

 手と足の感覚がない。

 音が聞こえない……。


 異能?

 吾妻の異能?

 2つも異能を持っている?


 そんな……。


 吾妻はダブルなの!?


「……」


 確かなことは分からない。

 でも、これが異能によるものならアンチUPで!


 そうよ。

 すぐにアンチUPの効果が出るはず。


「……」


「……」






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[良い点]  まさかの展開!?  アンチUPは、コーキは間に合うのか!?
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