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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
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第464話  攻防 3


<古野白楓季視点>




「降参するなら、今後のこと考えなくもないわ」


「ちっ! 調子に乗るな!」


 分かってないわねぇ。

 乗れる調子には乗るものよ。


「誰が降参など!」


「そう」


 よかった。

 ここで降参なんてね。


 そんなあなたには、調子に乗ったこれをプレゼントしてあげる。


「炎弾!」


「なっ!?」


「炎弾!」


「ま、まて!」


「炎弾!」


「ひっ!」


 恥ずかしげもなく逃げ惑う壬生兄。

 相変わらず、攻撃に弱い人。

 とはいえ、こっちも過重のせいで動きが悪い。


「解除だ、解除! お前が相手をしろ!」


 そう思っていたら、重力の異能が解除された。


「立て!」


「うぅ……」


「お前が、こいつの相手をするんだ!」


 逃げながら、念動力者を怒鳴りつけている。


「……」


「さっさと起きるんだ!」


「……」


 自分の異能で地面に貼り付けておきながら、どの口が言うのかしら。

 酷い上司を持つと大変ね、念動力者さん。

 少しだけ同情するわ。


「早くしろ!」


 不憫なあなたを、優しく眠らせてあげる。

 軽くなったこの右足でね。


「うぐぅ!!」


 おやすみなさい。


「っ、卑怯な! 倒れているもの相手に!」


「ホント、よくそんなことが言えるわね。あなた、恥って言葉知らないの?」


「な、んだと!!」


 はぁ。

 こんなやつの相手、いつまでもしてられないわ。


「炎弾!」


「や、やめ!」


「炎弾!」


「ひぃぃ!」


 やっぱり、避けるのだけは上手い。

 でもね、こっちもさっきと違って体が軽いの。


「炎弾!」


「熱ぅ!」


 はい、的中。


「た、助けっ!」


 足が止まったところで、仕上げを。


「助けてくれ、吾妻さん!」


 残念。

 助けが来る前に。


「炎舞!」


「ぎゃあぁぁ!!」


 揺れる炎に包まれながらの絶叫。


「ああぁぁぁ……たす、け……」


 大丈夫。

 命までは奪わないわ。


「たすけて……」


「……」


 もう動けないでしょうけど、あの異能は厄介。

 だから、あなたも眠ってなさい。


 優しくない一撃をあげる。


 ドン!


「うっ……」


 あっけなく地面に崩れ落ちた。


「……」


 重力の異能を解除したのが失敗だったのよ。

 それに、全く連携が取れていなかったのも。


 壬生兄と念動力者だけじゃない。

 奥の2人なんか、戦闘に加わることもなかったのだから。



 さてと。

 ここまでは想像以上に上手く事を運べたけれど……。

 問題はこれから。


「古野白、そっちは大丈夫か」


「ええ」


 ちょうど今、武上君も1人倒したところ。


 残る異能者は2人。

 空間を操る異能者と容姿端麗な男性異能者。


「……」

「……」


 この状況でも、動こうとしない。


 終始無言で無表情。

 それでいて、ただならぬ空気を発している異能者。


 やはり、気味が悪い。

 ぞっとしないわ。


 ほんと……。


 ……。



「吾妻さん、そろそろ?」


「……そうだな」


 吾妻と呼ばれたその異能者がついに言葉を発した。


「お願いします」


「ああ」


 えっ!

 これは?


 空気が変わった?

 一瞬にして空間内の温度が上がったと思われるくらいの劇的な変化。

 信じられない。


「武上君!」


「気をつけろよ」


「ええ……」


 あの武上君が躊躇している。

 猪突猛進の武上君が!


 珍しい眺めを前にして僅かに気を取られた、その瞬間。


「古野白ぉ!」


「!?」


 敵が目の前!

 距離があったのに?


「避けろ!」


 音もなく迫って来る右拳。


「ぐっ!」


 無理やり身体を捻じるようにして。

 すんでのところで回避。

 なんとか避けることができた。


「まだだぁ!」


 私の脇を通過した相手の右腕。

 それが水平に薙ぎ払われてくる!


 反射的に左に跳躍。

 避けたはずの私の身に腕が伸びてくる。


「痛ぅ!」


 直撃はなんとか逃れたけれど、右脇腹を擦られてしまった!


 ほんの表面だけ。

 それでも、服は裂け皮膚にも痛みが走っている。


「!?」


 と、さらなる追撃。

 今度は左の拳。


 強烈な正拳が!





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― 新着の感想 ―
[良い点] 古野白さんを襲う異能は一体……! [一言] 更新ありがとうございます!
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