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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
454/701

第450話  治療 7



「……少し、休みます」


「セレスティーヌ様!」


 今の今まで元気だったセレス様が、いきなり意識を失ってしまった。


「……」


 本人が言っていたように祝福の使い過ぎが原因ということなら、命に別条はないはず。


 それでも、心配な気持ちを消し去ることはできない。

 本来ならすぐにでも看病、治療したいところなのに……。

 状況がそれを許してくれないんだ。


「セレスティーヌ様は?」


「セレスさんは大丈夫なのか?」


 突然のことに、皆が戸惑っている。

 もちろん俺も平静ではいられない。

 が、ここは緊急の場面。


「落ち着いてくれ。セレス様は祝福の使い過ぎで意識を失っただけだ」


「セレス様は大丈夫なんだよな?」


「コーキ殿?」


「ああ、少し休めば回復する」


 確信はなくとも、ここは断言させてもらう。


「今はディアナとシアが問題だろ」


「「「……」」」


 現時点で、シアは落ち着いた状態。

 とはいえ、出血性ショックの影響があるのなら、いつ容態が急変してもおかしくはない。

 傍について様子を見続ける必要がある。


 ディアナも3つの同時治療で少し改善してきたものの、ニレキリの毒が体内から全て消え去ったとは思えない。

 祝福と高級魔法薬が使えない現状では治癒魔法と低級魔法薬の治療になるが、それでも続けるのみ。


「ふたりの治療に集中してほしい」


「分かった」


「分かったよ」


「それで、何をすれば?」


「これまで通り、アルとヴァーンはシアの様子を見ていてくれ。可能なら、セレス様も頼む。ユーフィリアは低級魔法薬をディアナに!」


「「「了解」」」


 ということで、俺もディアナの治療再開だ。


「ゴホッ……。私のことはいいから、セレス様を」


「ディアナ、黙って治療を受けなさい」


「私より、セレス様とシア殿を!」


「セレスティーヌ様の望みはあなたの治療です」


「……」


 ディアナの罪は簡単に許されるものじゃない。

 とはいえ、ここで見捨てるわけにもいかない!


 それはセレス様の強い思いであり、俺たちもまあ、納得していること。

 だから、大人しく治療を受けてくれよ。


「コーキ殿、あなたの魔力は大丈夫なのか?」


 そう。

 問題はそこ。


 レベルアップにより魔力総量が増え魔力制御も上達した今なら長時間に渡って治癒魔法を行使できるが、それでも無限に使えるわけじゃない。


 今の魔力残量は半分程度。

 この魔力でふたりを治療するためには、より高度な運用が必要になる。


 容易なことじゃないな。

 それでもやるだけ、か。


「限りある魔力だ。私なんかに力を使わず……ゴホッ!」


 死にたがりだな、ディアナ。


「魔力を心配する必要はない。任せてくれればいい」


「……」


「ここまで改善してるのだから、しっかりしなさい、ディアナ!」


「……すまない」


 そう言って目を閉じ横になるディアナ。


「コーキ殿、魔法薬の量は?」


「ディアナの様子を見ながら、少しずつ飲ませてくれ」


 ここからは俺とユーフィリアによる治療。

 セレス様が目を覚ますまでは、ふたりだけの治療だ。


 ディアナもシアもこのまま安定した容態が続いてくれよ。


 ……。


 ……。


 ……。


 セレス様が意識を失って最初の数分は安定していたディアナの状態。

 八半刻(15分)を過ぎたあたりから様子がおかしくなってきた。


「ゴホッ、ゴホゥ……」


 咳が増え、喀血も少し。

 治まっていた症状が再び現れている。


「はあ、はあ……」


 やはり、ニレキリを完全に解毒したわけじゃなかった?

 祝福、治癒魔法、高級魔法薬で症状を抑え込んでいただけなのか?


 だとしたら……。


「コーキ殿!」


「……治療を続けよう」


「……」


 おそらく、俺もユーフィリアも同じ考えだろう。

 それでも、ここで治療を投げ出すわけにはいかない。

 セレス様の意識が戻るまで、ディアナを何とかしないと。




「はあ、はあ……ゴホゥ!!」


 四半刻が経過。

 明らかに悪化している。

 咳は酷いし喀血もかなりの量だ。


 このまま症状が改善しないと、この後に待つのは……。


 何度もニレキリの毒に倒れたセレス様の姿が脳裏に浮かんでくる。


「……」


「コーキ殿、このままでは?」


「……分かってる」


 分かっていても、どうしようもない。

 今は他に手立てがないんだ。


 残るは……。


 セレス様の祝福のみ。

 ただ、目を覚ましたセレス様がすぐに祝福を使えるとも限らない。

 それに、無理に祝福を使うことでセレス様の身に何かあったら……。


「ふたり、とも……もういい……ゴホッ!」


「「……」」


「十分、だ。こんな、私のために……ゴホッ、ゴホッ……」


 くっ!

 これまでの経験から、先のことが分かってしまう。

 あの悪夢が……。


「私は、ここまで……ゴボゥ!」


 大量の喀血!?


「ディアナ!」


 これは、本当にまずい。


「コーキ、セレスさんを起こそう。で、祝福を」


 セレス様の身体が心配だが、それしか手段がないなら。


「……ヴァーン、頼む」


「ああ」


「はあ、はあ……駄目、だ……セレス様に、無理は……ゴホッ、ゴホゥ!!」


「ディアナ、大人しくして!」


 この状態でも動こうとするディアナを止めるユーフィリア。


「セレスさん!」


「……」


「セレスさん!!」


「……」


 ヴァーンの呼びかけに反応は見られない。

 セレス様の意識が戻らない!





まだ完調手前ではありますが、今日から平常通りの更新に戻したいと思います。

ただし、しばらくの間は体調次第で週に一、二度休みを入れるかもしれません。

申し訳ありませんが、了解していただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  お疲れ様です。  セレス様はお優しいです。  ああこのようなお嫁様ほしいですね。近くにいるコーキさんがうらやま~です。そばにいるだけで癒されそう。 [気になる点]  今まで読んでいてふと…
[良い点]  更新ありがとうございます!  でも、無理はしないで下さいませ!
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