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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
451/701

第447話  治療 4



「私の責任だ」


「そうだな。ユーフィリア、お前の責任でもある!」


「……分かっている」


「おい、まさか、おめえらが共謀したんじゃねえだろうな?」


「そんなことは、していない!」


「ユーフィリアは無関係だ! 全て私ひとりでやった……ゴホッ……それは本当……ゴホッ!」


「あんな凶行の後に、それを信じろってか? 虫のいい話だぜ。こっちは、シアの命が危なかったんだぞ」


「……」


「ちっ! とりあえず、動機を話せ。全てはそっからだ、ディアナ!」


「……」


「黙ってねえで、さっさと喋りやがれ!」


「ゴホッ、ゴホゥ!!」


 症状は緩和しているが、それでも咳は治まらない。

 やはり、完全に解毒するのは難しいのか?


「ヴァーンさん、動機については私には分かっています」


「セレスさんが?」


「ええ。ですから、今は治療に専念させてください」


 ディアナが動機を明かそうとしない以上、話も進まないと思っていたが。

 セレス様は動機に心当たりがあると?


「……」


「詳しい話は、ディアナを助けてからです!」


「……分かりましたよ。セレスさんに、任せますよ」


「ありがとう、ヴァーンさん」


「いや、まあ……」


「ディアナ、そういうことです。なので、あなたは大人しく治療されていなさい」


「ですが……私はセレスティーヌ様を手にかけようとしました」


「そんなこと、分かっています」


「……」


「それについても、後で話しましょう」


「セレスティーヌ様……」


「……」


「……」


 自分の命を狙った相手を助けるために、ひたすら祝福を続けるセレス様。

 これまでのディアナとの関係があるとはいえ、この献身ぶりは……。



「ゴホッ、ゴホッ……セレスティーヌ様……」


「……」


「……申し訳ありませんでした」


「ディアナ?」


「申し訳ございませんでした、セレスティーヌ様」


 祝福を受けながら頭を下げるディアナ。


「今謝るのですか?」


「……申し訳ありませんでした」


「……」


「……」


「……善悪はどうあれ、あなたも信念あってのことでしょ」


「全ては独りよがりの情念に過ぎません。それを抑えられなかったのは、私の心の弱さゆえです」


「……」


「ディアナ、それが分かっていて、どうして? どうして私に相談してくれなかった?」


「ユーフィリア……すまなかった」


「謝ってほしいんじゃない。……そんなに冷静に考えられるのに、どうして?」


「なぜか……時折、自分を制御できなくなるんだ。けど、それも言い訳だな」


「ディアナ……」


「……」


「……」


「ゴホッ!! ゴホッ、ゴホゥ、ゴホゥ!!」


 これまでにない激しい咳込み。

 口を抑えた手の間からはおびただしい鮮血!


 また喀血が!


「ディアナ!」

「ディアナ!」


「はあ、はあ……無理みたいです」


「大丈夫、祝福で解毒しますから。それに、コーキさん、魔法薬を!」


 セレス様に促されるようにして、ディアナに魔法薬を手渡す。


「飲んでくれ」


「……」


 セレス様を助けることができなかった魔法薬に、どこまでの効果があるかは分からない。

 ただ、祝福との相乗効果があるなら可能性も?


「ゴホッ……ニレキリの毒を大量に飲みました。だから、もう……」


「いいから飲みなさい!」


「ディアナ、飲んで!」


「……」


 セレス様とユーフィリアの剣幕に押されて魔法薬を口にする。

 効果は……少しはあるように見えるな。


「ディアナ、あなたの今回の凶行をすぐに許すことはできません。ですが、あなたは私の騎士です。ここで休ませるつもりはありませんよ。まだ働いてもらわねば困ります。だから、頑張るんです!!」


「セレスティーヌ様……」


「毒に負けては駄目! ディアナ!」


「……」


「……ゴホッ!」


 また激しい咳が。


「ゴホッ、ゴホッ、ゴホゥ!!」


 喀血も!


「私は……ゴホッ……幸せでした」


「何言ってるの、ディアナ!」


「セレスティーヌ様に……お仕えできて……私は……」


「駄目です! まだ、あなたには……」


「ゴホッ、ゴホッ!!」


「ディアナ、ディアナ!!」


「ユーフィリア……ありがとう。ユーフィリアがいてくれたから私は……」


「ディアナ、しっかりして、ディアナ!」


「そうです。祝福で治してあげますから!」


 祝福で好転しかけていたディアナの容態も、今は……。

 やはり、ニレキリの毒は解毒できないのか!


 流れ始める陰々たる空気。

 そんな重い雰囲気の中。


「コーキさん、姉さんが! 姉さんの様子がおかしい!!」


 なっ!?

 シアが?


 無事に治療を終えていたはずなのに!

 何が?





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― 新着の感想 ―
[良い点]  ここでシアの容態が!?  一体どうなるんだー!
[一言] えぇぇぇΣ(´Д`;)
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