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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
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第446話  治療 3

コロナ治療で長く休ませていただき、ありがとうございました。

まだ完調ではありませんが、少しずつ更新を始めたいと思います。




「ヴァーン、シアを支えてやってくれ」


 シアの胸に刺さった剣を引き抜き。

 そのまま魔法薬で止血、傷口を塞ぐ!


 こんな治療なんて、初めての経験だ。

 正直、どうなるか分からない。

 だから、何が起こっても対処できるようにしなきゃいけない。

 ヴァーンにも、シアを精神的に支えてもらう必要がある。


「分かってる! シア、俺がついてるからな!」


「うん、ヴァーン」


「絶対大丈夫だ!」


 シアの今の状態はセレス様による祝福の効果で、かなり落ち着いている。

 顔色もそれほど悪くない。


 なら、ここ!

 躊躇せず、やるしかない!


「……」


 今は俺の治癒魔法がかけっぱなしの状態。

 さらに、剣を抜く瞬間に魔法薬を傷口に注ぎかける。

 そうすれば出血をかなり抑えられるはず。


 よし!


「抜くぞ!」


「おう!」


「先生、お願いします」


 右手に力を入れ、剣に軽く魔力を通し。

 これ以上シアの胸に傷がつかないよう、慎重に素早く。


 引き抜いた!


「うっ!」


「!?」


 胸元から溢れ出す鮮血。

 祝福に治癒魔法を重ねて行使してなお、やはり、それなりの出血をしてしまう。


 分かっていたのに、怯んでしまいそうになる。

 そんな自分の身体を奮い立たせ、すぐに魔法薬を胸の傷口に!


「シア! しっかりしろ!」


 ヴァーンの励ましの言葉に薄っすらと笑顔を浮かべるシア。


「う、ん」


 余裕があるのか。

 なら、問題ない。

 大丈夫のはずだ。


 とにかく、今は魔法薬を使い続けるのみ。

 量を気にすることなく、傷口にかけ続けるだけ。


「うぅ……」


「……」


「……」


 1本目の魔法薬を使い切り、2本目に。

 その途中で……。


「シア、血が止まってきた! 傷口も塞がってきたぞ!」


 ヴァーンの言う通り、胸の傷が癒えてきた。


「ほんと?」


「目の前で見てんだ。間違いねえ!」


「……よかった」


「ああ、これで治る。シア、治るぞ!」


「うん!」


 確かに効いている!

 魔法薬の効果が現れてる。


 このまま治療が上手く進めば、剣が胸に刺さるという大怪我も治療することができる!

 そう確信できる状況になってきた!


 こうなると、次は。


「シア、飲めるか?」


「はい……魔法薬ですか?」


 この魔法薬は傷口に直接かけても飲んでも効果がある。

 この状況で遠慮なんてする必要はない。


「飲めるなら、一応な」


「分かりました」


 頷いたシアが魔法薬を半分ほど口に。


「これでいいでしょうか?」


「そう、だな」


 かなり血色が良くなってきた。

 言葉もしっかりしたもの。

 明らかに状況は好転しているはず。


 それでも、少しずつ魔法薬を注ぎ続け、治癒魔法も続ける。


 ……。


 ……。


 そんな治療を続けること数分。


「よーし、傷も塞がったし、血も止まった。魔法薬も飲んだし、これで完璧だろ」


「うん! ヴァーン、ありがとう」


 ここまでくれば、一安心。

 これ以上は魔法薬も治癒魔法も必要なさそうだ。


「先生、ありがとうございました」


「ああ、無事治療ができて安心したよ」


「はい!」


 穏やかな笑み。

 いつものシアが戻ってきた、か。


 良かった……。


「シア、もう大丈夫なのですね?」


「はい、セレス様! ご心配おかけしました」


「何を言っているの! あなたが私を助けてくれたのに!」


「それは、当然のことですから。あっ、わたしも手伝います」


 そう言って立ち上がろうとするシア。

 が、足元がおぼつかない。


「何してんだ、シア。お前はまだ動ける状態じゃないんだぞ」


「でも……」


「でもじぇねえ!」


「……」


「ヴァーンの言う通りだ。シアはゆっくり休んでくれ」


「先生……分かりました」


「ヴァーン、シアはこのまま寝かせてやれよ」


 治療が上手くいったとはいえ、身体には大きな負担がかかっているだろう。

 それに、ここまでの治療と魔法薬を口にした影響で眠くなるはずだからな。

 一度睡眠をとった方がいい。


「分かってる」


「任せたぞ」


「ああ」


 症状の落ち着いたシアをヴァーンに任せ、セレス様のもとへ。

 といっても同じ室内の、すぐ横にいるのだが……。




「ゴホッ、ゴホッ!」


 先程から祝福を受け続けているディアナの咳は止まっていない。

 ただ喀血の症状は治まっているように見える。


「ゴホッ……」


 俺の治癒魔法でも魔法薬を使っても、治癒することができなかったこの症状。

 過去数度に渡ってセレス様の命を奪ってきたニレキリの毒。

 その毒を祝福で治癒しようとしているセレス様。


「……」


 ディアナの容態には改善が見られる。

 これは、俺の治療ではできなかったこと。


 ディアナの命を助けることができるかどうかは分からないものの、明らかにセレス様の治療の効果が出ている状況だ。


「コホッ……」


 シアの治療といい、ニレキリの解毒といい、祝福にここまでの治療効果があるとは考えていなかった。


 これもセレス様の成長ゆえか。

 嬉しい誤算だな。



 と、ディアナが落ち着いてきたところに。


「ディアナ、どうしてあんなことしたんだ! 喋れるようになったんなら、きっちり話してもらおうか」


 シアの傍らからヴァーンの声。

 その刺々しさはさっきと変わっていない。


 シアは、そのヴァーンとアルに守られて眠っているようだ。


「……シア殿を傷つけるつもりはなかった」


「だから、どうしてセレス様を狙ったんだ! ユーフィリアの言うように忠義が本物なら理由があんだろうよ」


「ヴァーンには関係ない……ゴホッ!」


「この期に及んで何言ってやがる。関係あるに決まってんだろうが!」


「……」


「てめえ、誰かの指示で動いてんじゃねえよな?」


「それは……」


「違う。ディアナが誰かの指示でセレスティーヌ様を狙うなんてあり得ない」


「ユーフィリアがどうして断言できる! おめえも十分あやしいんだぞ」


「だから言っている。ディアナとずっと一緒にいた私には分かると」


「一緒にいたのに今回のことは止められなかったじゃねえか」


「それは……私の責任だ」





体調が戻るまでは、隔日更新の予定です。

来週中に通常更新に戻れればと……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 指示でないとしたら思考誘導…できる人たちがいっぱいいましたね、そういえば。 そうか…そういうことだったのか…?
[良い点]  更新ありがとうございます!   そして、闘病生活お疲れ様でした!  ディアナをそそのかした(?)奴が犯人ってことなのでしょうか?
[一言] シア良かった(´TωT`) おかえりなさいです! 無理せずで、更新頑張ってください!
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