第446話 治療 3
コロナ治療で長く休ませていただき、ありがとうございました。
まだ完調ではありませんが、少しずつ更新を始めたいと思います。
「ヴァーン、シアを支えてやってくれ」
シアの胸に刺さった剣を引き抜き。
そのまま魔法薬で止血、傷口を塞ぐ!
こんな治療なんて、初めての経験だ。
正直、どうなるか分からない。
だから、何が起こっても対処できるようにしなきゃいけない。
ヴァーンにも、シアを精神的に支えてもらう必要がある。
「分かってる! シア、俺がついてるからな!」
「うん、ヴァーン」
「絶対大丈夫だ!」
シアの今の状態はセレス様による祝福の効果で、かなり落ち着いている。
顔色もそれほど悪くない。
なら、ここ!
躊躇せず、やるしかない!
「……」
今は俺の治癒魔法がかけっぱなしの状態。
さらに、剣を抜く瞬間に魔法薬を傷口に注ぎかける。
そうすれば出血をかなり抑えられるはず。
よし!
「抜くぞ!」
「おう!」
「先生、お願いします」
右手に力を入れ、剣に軽く魔力を通し。
これ以上シアの胸に傷がつかないよう、慎重に素早く。
引き抜いた!
「うっ!」
「!?」
胸元から溢れ出す鮮血。
祝福に治癒魔法を重ねて行使してなお、やはり、それなりの出血をしてしまう。
分かっていたのに、怯んでしまいそうになる。
そんな自分の身体を奮い立たせ、すぐに魔法薬を胸の傷口に!
「シア! しっかりしろ!」
ヴァーンの励ましの言葉に薄っすらと笑顔を浮かべるシア。
「う、ん」
余裕があるのか。
なら、問題ない。
大丈夫のはずだ。
とにかく、今は魔法薬を使い続けるのみ。
量を気にすることなく、傷口にかけ続けるだけ。
「うぅ……」
「……」
「……」
1本目の魔法薬を使い切り、2本目に。
その途中で……。
「シア、血が止まってきた! 傷口も塞がってきたぞ!」
ヴァーンの言う通り、胸の傷が癒えてきた。
「ほんと?」
「目の前で見てんだ。間違いねえ!」
「……よかった」
「ああ、これで治る。シア、治るぞ!」
「うん!」
確かに効いている!
魔法薬の効果が現れてる。
このまま治療が上手く進めば、剣が胸に刺さるという大怪我も治療することができる!
そう確信できる状況になってきた!
こうなると、次は。
「シア、飲めるか?」
「はい……魔法薬ですか?」
この魔法薬は傷口に直接かけても飲んでも効果がある。
この状況で遠慮なんてする必要はない。
「飲めるなら、一応な」
「分かりました」
頷いたシアが魔法薬を半分ほど口に。
「これでいいでしょうか?」
「そう、だな」
かなり血色が良くなってきた。
言葉もしっかりしたもの。
明らかに状況は好転しているはず。
それでも、少しずつ魔法薬を注ぎ続け、治癒魔法も続ける。
……。
……。
そんな治療を続けること数分。
「よーし、傷も塞がったし、血も止まった。魔法薬も飲んだし、これで完璧だろ」
「うん! ヴァーン、ありがとう」
ここまでくれば、一安心。
これ以上は魔法薬も治癒魔法も必要なさそうだ。
「先生、ありがとうございました」
「ああ、無事治療ができて安心したよ」
「はい!」
穏やかな笑み。
いつものシアが戻ってきた、か。
良かった……。
「シア、もう大丈夫なのですね?」
「はい、セレス様! ご心配おかけしました」
「何を言っているの! あなたが私を助けてくれたのに!」
「それは、当然のことですから。あっ、わたしも手伝います」
そう言って立ち上がろうとするシア。
が、足元がおぼつかない。
「何してんだ、シア。お前はまだ動ける状態じゃないんだぞ」
「でも……」
「でもじぇねえ!」
「……」
「ヴァーンの言う通りだ。シアはゆっくり休んでくれ」
「先生……分かりました」
「ヴァーン、シアはこのまま寝かせてやれよ」
治療が上手くいったとはいえ、身体には大きな負担がかかっているだろう。
それに、ここまでの治療と魔法薬を口にした影響で眠くなるはずだからな。
一度睡眠をとった方がいい。
「分かってる」
「任せたぞ」
「ああ」
症状の落ち着いたシアをヴァーンに任せ、セレス様のもとへ。
といっても同じ室内の、すぐ横にいるのだが……。
「ゴホッ、ゴホッ!」
先程から祝福を受け続けているディアナの咳は止まっていない。
ただ喀血の症状は治まっているように見える。
「ゴホッ……」
俺の治癒魔法でも魔法薬を使っても、治癒することができなかったこの症状。
過去数度に渡ってセレス様の命を奪ってきたニレキリの毒。
その毒を祝福で治癒しようとしているセレス様。
「……」
ディアナの容態には改善が見られる。
これは、俺の治療ではできなかったこと。
ディアナの命を助けることができるかどうかは分からないものの、明らかにセレス様の治療の効果が出ている状況だ。
「コホッ……」
シアの治療といい、ニレキリの解毒といい、祝福にここまでの治療効果があるとは考えていなかった。
これもセレス様の成長ゆえか。
嬉しい誤算だな。
と、ディアナが落ち着いてきたところに。
「ディアナ、どうしてあんなことしたんだ! 喋れるようになったんなら、きっちり話してもらおうか」
シアの傍らからヴァーンの声。
その刺々しさはさっきと変わっていない。
シアは、そのヴァーンとアルに守られて眠っているようだ。
「……シア殿を傷つけるつもりはなかった」
「だから、どうしてセレス様を狙ったんだ! ユーフィリアの言うように忠義が本物なら理由があんだろうよ」
「ヴァーンには関係ない……ゴホッ!」
「この期に及んで何言ってやがる。関係あるに決まってんだろうが!」
「……」
「てめえ、誰かの指示で動いてんじゃねえよな?」
「それは……」
「違う。ディアナが誰かの指示でセレスティーヌ様を狙うなんてあり得ない」
「ユーフィリアがどうして断言できる! おめえも十分あやしいんだぞ」
「だから言っている。ディアナとずっと一緒にいた私には分かると」
「一緒にいたのに今回のことは止められなかったじゃねえか」
「それは……私の責任だ」
体調が戻るまでは、隔日更新の予定です。
来週中に通常更新に戻れればと……。





