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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
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第441話  予知



 水浴びをするというセレス様をシアとディアナに任せ部屋の外へ。

 音を聞かれたくないとのことだったので、玄関先で待機する。


 玄関先にいても、強化した聴覚は室内の音を拾ってしまう。

 耳が良いというのも困ったものだな。


 さて、聴覚を抑えめにしてと……。


 ……。


 ……。


 ふぅぅぅ。


 ゆっくり呼吸すると、疲労がどっと押し寄せてくる。

 それともに、体内の澱が出て行く感覚。


 まあ、今日は長い一日だったからなぁ……。


 模擬試合での惨劇、時間遡行、2度目の模擬試合、そして……。


 セレス様を護ることはできた。

 ただ、事件は解決していない。

 犯人を捕まえるまで、終わりじゃない。


 気の抜けない日が続くことになるだろうな。

 しばらくは……。


 ……。


 そんな俺とは違い……。


 ワディン騎士たちは、領都ワディナート奪還を計画している。

 メルビンさんたち冒険者は、テポレン山の調査。

 エンノアはよく分からない、か。


 幸奈は……。


 元気にしているだろうか?

 あの家で無事に過ごしているだろうか?

 和見家のことを考えると、不安になってくる。


 ……。


 イリサヴィアさんは白都に戻ったのかな?

 オズとリーナは?

 ふたりとも元気なのか?


 今はここを動けないけれど……。

 この件が片付いたら一度日本に戻って、それからキュベルリアを訪れよう。

 きっとだ!


 そういえば、キュベルリアからカーンゴルムに移動したウィルさんは?

 無事に用事を済ませたのだろうか?

 もうオルドウに戻っているのだろうか?


 ほんと、色々と……。

 色々とあるな。


 これも俺がこの世界に馴染んだから、か。

 そう考えると……。


 悪くない。

 大変さがやりがいに昇華していくような感さえある……。


 渇望していた異世界。

 そこで過ごす冒険の毎日。

 悪いわけがない。


 ……。


 久しぶりだな、こういう時間は。

 ひとりで考える時間もいいものだ。


 さて……そろそろ戻るか。

 そう思って足を踏み出したところで。


「きゃあぁぁ!!!」


 悲鳴!?

 セレス様の声じゃない?


 なら、この声は?


 抑えていた聴覚を急いで強化!

 走りながら、周囲の音を拾い集めると。

 セレス様の寝室からは……。


「セレス様、セレス様!!」


 っ!?


 シアがセレス様を呼んでいる!

 焦りが滲んだ声だ!!


 その声に一気に胸が騒ぎ出す。

 体が震え始める。


 震える足を引きずるようにして寝室へ。


「セレス様! シア!」


 駆け込んだ室内には……。


 ディアナに抱えられたセレス様。

 力なく腕が地面に垂れている!

 意識を失っている!!


「先生、セレス様が!」


 毒!?

 ニレキリの毒なのか?


 けど、咳はない。

 喀血の痕跡もない。


 これは??


「うっ、うう……」


「セレス様、セレス様!」


「セレスティーヌ様?」


「……シア、ディ、アナ」


 目を開いた!

 意識が戻った!!


「……問題、ない、わ。これは……予知だ、から」


「セレス様、大丈夫なのですね?」


「ええ……」


「よかった、セレス様。よかったです!!」


 予知、だったのか!

 本当に?


「平気、だから。少し休ま、せて」


「分かりました。今寝台に。ディアナさん」


「承知した」


 シアとディアナの手で寝台に横になるセレス様。

 顔色は悪くない。


「あり、がと」


「いえ……」


「セレス様、ゆっくりお休みください」


「……」


 呼吸も安定している。

 他にもおかしな点は見えない。


 見えないよな?


 ……。


 ……。


 よかった!

 これなら、大丈夫。

 大丈夫だろう。





「先生、ごめんなさい。わたし、慌ててしまって」


 穏やかな表情で横たわるセレス様に安心したのか、シアが寝台を離れ頭を下げてくる。


「いや、急に意識を失われたら驚くのも当然だ。しかし、セレス様が予知をする時は、いつもこうなのか?」


「いえ。私の知るセレス様の予知は、立ち眩み程度なんですが……。ディアナさんは?」


「……私もこのような姿は見たことがない」


「やっぱり」


 ということは。


「今回は通常の予知ではないと?」


「おそらく……」


 そうか。

 普通じゃないのか。


 身体に異状はないようだから、ひとまず安心といったところだが。

 今このタイミングで異なる形の予知となると……。


「セレス様が目を覚まされたら、詳しいことも分かると思います」


「そうだな」


 全てはセレス様の意識が戻ってから。

 そういうことだ。


 と、そこへ。


「シア、コーキ!」


「姉さん!」


 ヴァーンとアルが駆け込んできた。

 その後ろには、ワディン騎士たちも。


 ユーフィリアにルボルグ隊長もいる。


「何かあったのか?」


「姉さん、どうしたんだ?」


「ふたりとも落ち着いて。大丈夫だから」


「けど、姉さんの悲鳴が」


「そ、それは……。もう平気よ」


「姉さんは何ともないんだな」


「わたし? わたしは何も問題ないわ」


「そう、か……。えっ、セレス様は?」


「セレスティーヌ様は休まれている。皆、心配なのは分かるが静かにするように」


「ディアナ、セレスさんは無事なんだな?」


「……無事だ」


「そうか。なら、さっきの悲鳴は?」


 ということで、寝室に集まってきた皆に簡単な説明を……。





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― 新着の感想 ―
[良い点]  ここで新たな情報……まだまだ気は抜けませんね。
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