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30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
444/701

第440話  信頼 2

本日2話目になります。



「私は信じます!」


 室内に響く清廉な響き。


「私はコーキさんを信頼しています! 何も問題はありません!」


 室内に漂っていた重い空気を斬り裂いていく。


「同室で眠ることも……許可します」


「セレスティーヌ様……」


「セレス様……」


 セレス様に、さっきまでの迷いは見えない。

 そこにあるのは毅然とした態度のみ。


「セレスさん……いいのかよ」


「もちろんです!」


 その勢いに皆が口をつぐんでしまう。


「ヴァーンさん、アル、ディアナ、もう忘れたのですか? 私たちがこうして無事でいられるのが誰のおかげなのか!」


「それは……」


「コーキさんです! コーキさんのおかげなのですよ!」


 セレス様……。


「あなたたちも見ていたでしょ。コーキさんが、これまでどれ程のことをしてくれたかを!」


「「……」」

「「……」」


「エビルズピーク、ローンドルヌ河、トゥレイズ城塞、そしてテポレンでの王軍戦。思い出してみなさい」


「「……」」

「「……」」


「エビルズピークでは、私たちを助けるために駆けつけてくれました。そこであの恐ろしい魔物を退治して。ローンドルヌ河でも、トゥレイズ城塞でも……」


 そう、だったな。


「王軍戦の直前など、コーキさんは毎日寝ずに魔法矢と魔法爆弾を作ってくれました。その上、疲労した身体で戦闘まで。ワディンとは縁も所縁もないコーキさんがです」


「「……」」

「「……」」


「ここにいる誰かひとりでも生き残れたと思いますか! コーキさんの力なしで!」


「いえ……」


「そう、無理です。もう何度も亡くなっているはずです。それなのに、私たちはみな無事に生きている。こうして不平まで口にできるんです」


「「……」」

「「……」」


「人は慣れるもの。良くも悪くも慣れるものです。ワディナート陥落以来、私はそれを痛感しながら生きてきました。ただ、それでも、慣れてはいけないものもある。……あなたたち、コーキさんの力に慣れてませんか? それが普通だと思ってませんか? コーキさんの努力、苦労、そして苦悩を考えたことありますか!」


「「……」」

「「……」」


「ないでしょうね。あなたたちはコーキさんを超人だと思っているようですから」


「っ!」

「それは……」

「……」


「その考えは良く分かりますよ。私も最初はそうでしたから。コーキさんは特別な人だと思っていましたから」


「「……」」

「「……」」


「でもね、そんな人なんていないんです。努力せず、苦労せず、苦悩せず、それで事を成し遂げる? あり得ません」


「「……」」

「「……」」


「話が逸れてしまいましたが……。そのコーキさんがここまで警戒しているのです。何を置いても私の傍で護ろうと! 確かに、説明は不足しているでしょう。けれど、それをもって、コーキさんを信じないなんて私にはできません!」


「「……」」

「「……」」


「だから、私はコーキさんを信じます! 皆が信じなくとも、私は信じます!!」


「……」


 セレス様、そんなに俺のことを考えて!

 信じて!!


 もう……。


 ……。


 言葉もない。

 ここまで信じてもらっているのに、言葉なんて必要ない。

 何も必要ない。


 ただ、今は……。

 込み上げる思いを顔に出さないようにするだけで……。




「……どうやら慣れちまってたようだ。コーキ、俺もお前のこと信用するぜ。まあ、できれば説明は欲しいけどよ」


「わたしはセレス様と同じように、ずっと先生のこと信じてましたよ」


「……ああ」


 ……セレス様のおかげだ。


「セレスティーヌ様、そこまでコーキ殿のことを信頼しているのですね」


「ええ、信じています。もちろん、ディアナも、シア、アル、ヴァーンさんのことも信頼しています。ああ、ユーフィリアもですね」


「そう、ですか……」






 というわけで、夜間もセレス様の部屋で護衛ができるようになったのだが……。

 やはり、若干の気まずさが残ってしまう。


 いや、気まずさというか、何と言うか……。

 まあ、そんな感情にとらわれている場合じゃないんだけどな。


 ……。


 ……。


 ところで、セレス様の傍で護衛を続けると言っても、24時間1秒も離れず一緒にいられるわけではない。

 生理現象と水浴びの時は、さすがに離れないとまずいだろ。


 今夜もその時間がやって来た。


「では、少し外します。シア、ディアナ、頼んだぞ」


 ヴァーンとアルは自分たちの部屋に戻っているので、今室内にいるのは俺と女性3人だけ。水浴びは、室内に運んできた水桶を使って行うことになる。


「はい」

「うむ」


 寝室を離れ、音が聞こえない場所まで距離をとって待機。

 とはいえ、そう離れてはいない。

 走れば数秒もかからない距離だ。


 ……。


 ……。


 ……。



 ひとり考え事をする時間も悪くないな。

 特に今日みたいな日は……。


 さて、そろそろ水浴びも終わる頃合いか?

 そう思って足を踏み出したところで。


「きゃ……ぁぁ!!!」


 悲鳴!?

 いや、これは?

 セレス様の声じゃない??


 っ!


 何だ?

 どこから聞こえたんだ?

 

 抑えていた聴覚を急いで強化!

 とともに、室内へ!!




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― 新着の感想 ―
[良い点]  一体何が!  サービス回の予感……は間違いか(笑)
[一言] やはりセレス様は凄い(*´ω`*) いよいよ、セレス様事件大詰めですか!?
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