表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30年待たされた異世界転移  作者: 明之 想
第9章  推理篇
443/701

第439話  不協和音

本日2話更新。

ますは1話目です。



 いつ誰が襲ってくるか分からない。

 毒なのか他の手段なのかも分からない。

 今ここに、確実に、危機が存在しているのに、何も分かっていないんだ。


 こんな状況でセレス様のもとを離れるなんて、できないだろ。


 ……。


 時間遡行によるメリット。

 俺だけが持っているやり直しの機会。

 それを利用して、犯人を捕まえる好機はあった。

 あったはずなのに、その全てで失敗してしまった。


 セレス様を護ることが何より大切だったとはいえ、ここまで犯人を逃してしまうとは……。


 警戒が過剰だったのか?

 俺の警戒に気付いた犯人が犯行を中止したと?


 いや、そうとも限らないな。

 エレナさん、ユーフィリア、メルビンさん、ルボルグ隊長の行為が犯行の一部だったということもあり得るのだから。

 腑に落ちない点は多いが、その可能性も否定できないのだから。




「同じ部屋で眠るのですか?」


「……ええ、そのつもりです」


 セレス様の傍を離れるわけにはいかない。

 そうすると必然、同じ部屋で眠ることになる。

 もちろん、気配感知をしながらの浅い眠りにはなるだろう。


「そ、そうなのですね」


「……」


 魔落ではいつも近くで眠っていたし、入院中の病室でもベッド横で眠ることはあった。

 それでも、この状況は気になるんだな。


 だが、そのセレス様以上に……。


「コーキ殿、やはりそれは許可できん。ここには私もシア殿もいるのだ。コーキ殿には隣室で護衛してもらいたい」


 ディアナだ。


 まっ、彼女が反対することは分かっていた。

 セレス様を何より大切に思っているディアナが簡単に許せることじゃないよな。

 異性でかつ冒険者に過ぎない俺が同室で眠るなんて。


「シア殿もそう思うであろう?」


「わたしは、先生なら……」


「高貴な神娘たるセレスティーヌ様、未婚の神娘が男性とふたりで夜を過ごすなど、看過できることではない。そうであろう!」


「それは、まあ……」


「シア殿も私と同じ意見だ、コーキ殿!」


 気持ちは良く理解できる。

 隣室の護衛で十分、そう考えるのが普通だろうから。


 ただ、今は緊急事態。

 普通じゃいけない。

 それに、ふたりっきりじゃないんだぞ。


「ディアナの考えは尤もだと思う。けれど、しばらくはこの護衛態勢で進めたい」


「ユーフィリアだけではなく、シア殿と私も信用できないと。そういうことなのか?」


「そうじゃない」


「なら、どういうことだ? 私たち3人を排除する理由は何なのだ!」


 排除?


「……排除などしていない。そんなつもりもない」


「ユーフィリアを遠ざけているではないか!」


「念のためだ」


 本音を言うと、俺もユーフィリアが犯人だと思っているわけじゃない。


 忘れもしない、あのローンドルヌ河で……。

 あの時、大橋から落下した幸奈を護ってくれたのはユーフィリアだった。

 そんな彼女がセレス様を害するなんて、考えられない。


 ただ今は……僅かな危険の芽であっても摘まなきゃいけないんだよ。



「コーキ、ちょっとやり過ぎだろ」


「おれもやり過ぎだと思うわ。コーキさんがそこまで心配する理由も分からないし」


「だな。今の今まで襲撃者の姿なんて見えやしねえんだ。そこまで過剰に警戒すんなら、それなりの説明をしてくれねえとな。それに、ユーフィリアとルボルグ隊長に対しても、どうかと思うぜ」


 ヴァーンにアルまで……。


「……」


 当然か。


 セレス様襲撃の可能性があるので警戒してほしい。

 そう頼んでから数日。

 詳しい事情も聞かず警戒を続けてくれた彼らの目の前では、何も起こっていない。

 この時間軸では、そういうことになっているのだから。


「本当に襲撃者が潜んでんのかよ」


「コーキさんには悪いけど、あやしい奴なんていないと思うぜ」


 襲撃者は存在する。

 それは間違いない。


「だからよぉ、コーキ。まだ警戒を続けるなら、説明してくんねえか。」


 存在は確実だが、説明となると……。


「……」


 ニレキリの毒による事件が起こったのは前の時間の流れ。

 それを知っているのは俺だけ。

 宴の夜の事件を知っているのも俺だけ。

 そんな状態でどう説明すればいい?


 時間遡行の話をすればいいのか?


 証明もできない。

 今は使えもしないギフトなのに……。


 無理だよな。

 信じてもらえるとは、到底思えない。


 ……。


 はは……。


 笑えてくるな。

 ただでさえ困難なこの状況で、ヴァーンたちにまで不信感を抱かれるなんて。


 ……。


 ……。



 図らずも、不穏な空気が充満する室内。


「私は信じます!」


 それを破ったのは、決然として清冽な声だった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ここをクリックして、異世界に行こう!! 小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ